チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

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第64話 ゴールデンウィーク

2007年04月29日 | チエちゃん
 私は、今日、とってもうれしいです。
国民の祝日4月29日が、今年から「昭和の日」に変わったからです。
 昭和時代にはもちろん「天皇誕生日」でした。
昭和天皇崩御後は「みどりの日」として、そのまま祝日となっていたのですが、どうして「みどりの日」なのか納得のいかないまま、とにかく休みなんだから、まあいいっかと思っていたのです。

 今回の「昭和の日」は〝激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす〟という意味で制定されたようですが、これを決めた政府のお偉いさんも議員さんも、昭和を生きてきた世代の人達なわけで、私と同様、昭和が懐かしかったんだなあと想像しています。
 こんなことを考えているのはチエちゃん世代ぐらいで、納得いかないという方もいらっしゃるかもしれませんね。

 ところで、昭和40年代のあの頃すでに、4月末から5月始めにかけて祝日が続く週を「ゴールデンウィーク」と呼んでいましたが、現在ほどゴールデンではなかったのです。

 祝日が日曜日と重なった時、翌月曜日を振替休日とする法律はまだ無かったし、祝日と祝日の間の1日(つまり5月4日のこと)を休日とする法律も無かったから、今年のカレンダーでいうと4月30日と5月4日はお休みではなかったのです。
 それに、週休2日制でもなかったから、土曜日も午前中は学校があったのです。

          昭和40年代   平成19年
 4月28日(土)   学校       休み
 4月29日(日)   休み       休み
 4月30日(月)   学校       休み
 5月 1日(火)   学校       学校
 5月 2日(水)   学校       学校
 5月 3日(木)   休み       休み
 5月 4日(金)   学校       休み
 5月 5日(土)   休み       休み
 5月 6日(日)   休み       休み
    
何と3日もお休みが少なかったのです。
 今年は、5月1日、5月2日も仕事がお休みとなって9連休という方もおありでしょう。あの頃からみると、夢のような話です。

 でも、農家であったチエちゃん家では日曜も祝日も関係が無く、行楽など一度も行ったことはありませんでした。
農家はこの時期、畑に種を蒔き、田起こしをして水を入れ、田植えの準備に取り掛かっていたからです。
 それでも、学校のお休みはとにかくうれしく、芽吹き始めた山々へ山菜採りに出かけてゴールデンウィークを過ごしたものでした。

第63話 あ~した 天気にな~あれ

2007年04月26日 | チエちゃん
 明日はいよいよ待ちに待った遠足です。
隣町との境にある金剛山への登山です。
チエちゃん家から遥か遠くに見え、毎日夕陽が沈む山が金剛山です。
そこにはテレビ塔があるということで、前から一度行ってみたいと思っていたのでした。

 この日、チエちゃんはお母さんから300円を貰い、学校の帰りに村でたった1軒のスーパーマーケットにより、遠足に持っていくガムやチョコレート、ジュースを買ってきました。

 リュックも水筒も、もう準備ができています。
明日は、お母さんがお弁当にのり巻を作ってくれることになっています。

 あとは、明日晴れることを祈るのみです。

そうだ、あれをやってみよう!

 あ~した 天気に な~あれ!

 チエちゃんは、履いていた靴を高く放り投げました。
見事、靴は上向きに着地しました。明日は、晴れだあ。

 ねえちゃん、なにやってんの?

 うん、明日晴れっか、"明日天気になーれ"やってたんだ

 おれも やってみっぺ

明日、同じく八幡神社へ遠足に行くたかひろ君も、靴を蹴り投げました。
ところが、たかひろ君の靴は裏返しに落ちてしまったのです。

 ああ~、雨だあ!!!

 んじゃ、もういっぺん!

 あ~した 天気に な~あれ!

たかひろ君の靴は、今度は上向きに落ちました。
大丈夫、明日は晴れるよ。
そう言い合って、金剛山に沈む真っ赤な夕陽を眺めたのでした。

 


 

第62話 がくしゅう

2007年04月23日 | チエちゃん
 チエちゃんは小学校の6年間、学研の「がくしゅう」を定期購読していました。
あの頃、学研のおばちゃんではなく、学研のおじちゃんが毎月1回、学校に販売にやって来たのです。

 前日に担任の先生が、専用の集金袋を配付してくれます。
翌日、お金を入れて持ってくると、昼休み時間に体育館で、引き換えに「かがく」や「がくしゅう」を渡してくれるのです。
もし、お金を忘れてしまっても、先生が預ってくれるので、翌日お金を持っていけば買えるシステムになっていました。

 購読は希望者だけでしたから、「本はお家に帰ってから、読みましょう!」と言われていたのですが、付録が気になって、こっそりと開けてみるチエちゃんでした。
付録欲しさに買い続けていたのです。

 しかし、その付録をちゃんと作って学習に役立てていたのかと言えば、いつも途中まで作りかけてはほったらかし、完成させることは滅多にありませんでした。

 ある時、「富士山の立体模型地図を作ろう」という付録がありました。
プラスチックの型と石膏が付いてきたのです。
さっそく、石膏を水で溶いて、型に流し込みました。何日か経って型を抜こうとしたとき、うまく剥がれずに立体模型地図は無残な姿に。
おまけに、肝心の富士山のてっぺんに空気が入って、噴火後の富士山のようになってしまったのでした。
うまく型が取れていれば、絵の具で色を塗って、立体模型地図の完成となるはずでした。

 まあ、すべてがこんな感じだった訳です。

せめて「がくしゅう」の中身をしっかり読んでいればねえ、元が取れたかもしれないのに・・・・
 


第61話 みちくさ

2007年04月20日 | チエちゃん
 小学校の近くで初瀬川に合流する支流のサラシ川と平行に走る村道を東に向かって、1.5㎞のぼって行けば、チエちゃん家にたどり着きます。

 春先、土手ではオオイヌノフグリが青のじゅうたんをつくり、スミレやホトケノザが咲き、つくしが顔を出しています。
その後には、サラシ川と村道の間に広がる田んぼにレンゲの花が咲き乱れ、あぜ道をハコベ、たんぽぽ、しろつめくさがおおうようになります。

 学校の帰り道、ポカポカとしたこんな陽気のいい日に、どうして村道などを帰ることができるでしょうか。

 家並みが絶えるお寺のあたりで、チエちゃんは村道を逸れて農道に入ることになります。
田んぼのあぜ道をあっちへ止まり、こっちで屈んで、つくしやタンポポ、シロツメクサを摘みながら、帰ります。

 途中、サラシ川の中ほどにベッドのように平で大きな岩があります。
そこへと渡るちょうどよい飛び石があって、ポン、ポンと飛んで渡ると、チエちゃんはランドセルを下ろして、寝転びます。
川沿いには猫柳が銀色の穂をつけています。
きらめくサラシ川を覗き込めば、メダカか小ブナの影が流れに逆らってスイスイと泳いでいきます。
流れる雲を眺めて、羊の顔、獅子頭、犬・・・想像をめぐらせます。
しばらく、そうしたあとで、摘んできたシロツメクサを編んで花冠を作りました。

 花冠を頭にのせたチエちゃんは、ようやく家へと向かってあぜ道を歩き出すのでした。

第60話 おじいちゃん(その3)

2007年04月17日 | チエちゃん
 4月生まれのおじいちゃんは誕生日になると、

 今日はじいちゃんの誕生日だがら、おごってやっぺ!

そう言って、チエちゃんとたかひろ君にお菓子や三ツ矢サイダーをたくさん買ってくれたものです。
 普通、誕生日と言えばプレゼントをもらえるものですが、おじいちゃんの場合は逆でした。
お刺身(あの頃、まぐろのお刺身はめったに食べられないごちそうでした)を買ってきたり、得意のお料理を作ったりして、家族にご馳走してくれたのです。

  面倒見がよく、気の良いおじいちゃんでしたが、家族にも中の人達にも1つだけ嫌われていることがありました。

 それは・・・、おじいちゃんは酒癖が悪かったのです。

 普段は小心者でお人好しの分、お酒が入ると気が大きくなり、怖いもの知らずになってしまうのでした。
2~3合の晩酌ぐらいなら、昔話をして陽気に振舞っているのですが、その量を超えてしまうと、急に怒り出したり絡んだりするのです。それで、チエちゃんも口答えしたとか、行儀が悪いとか、何度怒られたものかわかりません。

 の新年会や寄合いの後のお酒の席では、幾度となく絡んで中の人に迷惑を掛けたことか。そのくせ、酔いが醒めた時にはその時のことを一切覚えていないというのですから、あきれたものです。
 こんなおじいちゃんを見ていたせいか、お父さんはあまりお酒を飲みませんでした。

 おじいちゃんが亡くなってから、お母さんがチエちゃんに言ったことがあります。
 
 お酒を飲むと、じいちゃんはよぐおまえらをおごってだなあ
 かわいそうだったげど、助け舟をだそうもんなら、
    よげいにおごっから、なあんにもでぎねがったんだ 

 お酒を飲まなければ、最高のおじいちゃんだったのに・・・・・

第59話 三種の神器

2007年04月14日 | チエちゃん
 三種の神器とは天皇即位の際に受け継がれる「八咫鏡(やたのかがみ)」「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」のことで、天孫ニニギノミコトが降臨の時、天照大御神(アマテラスオオミカミ)から授けられたと伝えられています。

 これになぞらえて、昭和30年代庶民のあこがれの家電製品「白黒テレビ」「洗濯機」「冷蔵庫」の3つを「三種の神器」と呼びました。

 このうち、「テレビ」については、いつチエちゃん家にやって来たのかはっきりしていますが、残りの2つについてはいつ買ったものやら判然としません。
気が付いた時には使っていたということです。
しかし、買った順序というのはきっちり覚えているチエちゃんです。

「テレビ」「洗濯機」「冷蔵庫」の順です。

 この順番というのは大概どこの家庭でも同じであろうと思われ、生活が便利になるはずである「洗濯機」「冷蔵庫」よりも娯楽目的の「テレビ」を一番先に買うところに人間が知恵を持った秘密がありそうな気がしています。

 ところで、チエちゃん家で「洗濯機」を購入したのは、テレビと大してかわらない時期だったように記憶しています。
 それまでは洗濯板とタライでゴシゴシと洗っていたのですから、お母さんは随分と洗濯が楽になったと思います。でも、チエちゃん家には水道が引かれていませんでしたから、相変わらず水汲みの手間がかかりました。

 この最初の洗濯機には、脱水機がまだ付いておらず、洗濯しぼり機なるローラーが付いておりました。要するに、モップ絞り機と同じ原理です。手廻し式の2つのローラーの間を通し、洗濯物の水を絞る仕組みとなっていました。
それでも手で絞るよりは水気が切れていて、洗濯機はすごいなあと感心したものです。

 洗濯機を購入した後もチエちゃんの家では、野良着などの汚れがひどいものや雑巾などは、道路に降りる途中にあった堀っこ(用水路)か、道路よりさらに2~3m下に降りた畑の先のサラシ川へ桃太郎のおばあさんのよろしく洗濯に行ったものでした。
あの頃の川は、それぐらいきれいだったのです。

 さて、もう1つの三種の神器「冷蔵庫」のお話は、またいつの日か。

第58話 おていちゃん

2007年04月11日 | チエちゃん
 おていちゃんはバスが大好きな女の子でした。
村の中心にある村の名前の付いたバス停と、そこから初瀬川に架かる橋を渡った小学校前のバス停、自宅近くの村役場前バス停、この3つのいずれかのバス停で、バスがやって来るのを日がな一日、待っていたのです。

 バスがやって来ると、大喜びではしゃぎまわり、バスの前に立ち塞がったり、発車しようとするバスを追いかけたりするのでちょっと困りものでした。
いつも、抱き人形をおんぶして、子守りをしているつもりだったのでしょう。

 チエちゃんは徒歩通学でしたが、雨が降った時などたまにバスを利用することがありました。学校が終わって、お友達とバスを待っていると、おていちゃんがやって来てニヤニヤしながら顔を覗き込むので、チエちゃんはおていちゃんがちょっと怖かったのです。

 ある時、チエちゃんはお母さんに聞いてみました。

 おていちゃんは大人なのに、なんでいっつもバス停にいんの?

 ああ、おていちゃんはちょっとおつむが弱いんだよ。体はおとなだげど、気持ぢは3歳の子とおんなじなんだ。

そんな彼女は、村中で知らない人がいないほどの有名人でした。

 チエちゃんが小学生の頃のバスはボンネットバスでした。
乗務員は運転手さんと女性の車掌さん。車掌さんがバックから切符を出して、パチンパチンと切ってくれる姿にあこがれたものでした。
チエちゃんはよく車掌さんごっこをして遊んだものです。
「発車、オーライ!次は小学校前!」
おていちゃんも車掌さんが好きだったのかもしれません。

 バスのボンネット部分がなくなり、運転手さんだけのワンマンバスとなった昭和40年代末には、おていちゃんの姿も見られなくなってしまいました。
どこかの施設に預けられたのだということを風の便りに聞きました。
ニヤッと笑うと味噌っ歯がのぞいていたおかっぱ頭のおていちゃんを怖がらずに、もっと優しくしてあげればよかったと思うチエちゃんなのでした。

第57話 にわとり

2007年04月08日 | チエちゃん
 チエちゃん家では卵を採るために、ニワトリを飼っていました。
一畳ほどの広さの小屋に6~7羽のニワトリがいたように覚えています。

 ニワトリの世話はおじいちゃんの仕事でした。餌をあげる時、たまにチエちゃんもお手伝いをしました。
 畑から青菜を取ってくると、30㎝四方の木箱に入れ、長い柄の付いたS字型の包丁(?)で、細かく刻んでいきます。細かくなったら、大きな袋からお茶碗1杯分の飼料を出して、混ぜ合わせてニワトリに与えるのです。
 餌はニワトリ小屋の中に入らなくても、木のふたを開ければ、あげられる仕組みになっていました。餌場は、全部のニワトリが一斉に食べられるように細長い木でできていました。
餌を持っておじちゃんが近づくと、ニワトリたちが我先にと寄って来ます。
うっかりしていると、餌をあげている途中で手を突付かれてしまうこともありました。

 餌には時々、貝殻を砕いたものもあげていました。どうして、ニワトリはこんなもの食べるの?とおじいちゃんに聞くと、

 ニワトリはこういうの食わねど、卵の殻が薄ぐなったり、産まなぐなったりすんだぞ

と教えてくれました。

 そして時々、ニワトリを小屋の外に出して放し飼いにもしていましたが、不思議に遠くへ逃げたりはしないのでした。
そうして、その隙に小屋の中に入って、卵を取るのです。
藁の巣の中にある産みたての卵は、まだ生暖かく、生きている感じがしました。
4~5個の卵の中に、一つだけ変な卵があります。

 その卵は、取っちゃダメだべ!

 なんで?
それは、石でできた卵の摸造品だったのです。全ての卵を取ってしまうとニワトリが怒ってしまうので模造品を置いておくということでした。
だまされて、可哀想なニワトリさん。

 それから、年を取って卵を産まなくなったニワトリも、お肉になるという残酷な運命でしたが、あの頃のチエちゃんは可哀想とも思わずに食べていたのでした。

可哀想だと思ったら、何も食べられなくなってしまう訳で、それが自然のサイクル。
ですが、現在の私たちは飽食のために必要以上の殺生をしているのではないでしょうか。

第56話 チエちゃん仙台に行く

2007年04月05日 | チエちゃん
 おばあちゃんは暮に電話したとおり、仙台の姉妹を訪ねることになり、5歳になったチエちゃんも一緒に行くことになりました。
 仙台に行くには、F駅から列車に乗ります。チエちゃんが列車に乗るのは、去年の春、東京のヨシヒサおじさん家に行って以来2度目ということになります。

 向かい合った席に座ったおばあちゃんは、「べんとう~、べんとう~」の売り声で窓に寄ってきた駅弁売りのおじさんから、駅弁と四角い土瓶に入ったお茶を2つずつ買いました。これを食べながら、各駅停車でのんびりと行くのです。
 
 仙台には、おばあちゃんのお姉さん テツおばさんと、妹のセツ子おばさんが住んでいます。若い頃、宮城県の温泉旅館で同じように働いていた姉妹でしたが、おじいちゃんと結婚したおばあちゃんだけが故郷に戻り、他の2人はそのまま仙台に残っていたのです。

 仙台に着いたおばあちゃんとチエちゃんは、まず、テツおばさんを訪ねました。おばさんの家はお蕎麦屋さんで、とても忙しそうです。セツ子おばさん夫婦もこの店を手伝っていました。
 おばあちゃんは長女のテツおばさんが煙たかったのか、一晩だけ泊まると、さっさとセツ子おばさんの家を訪ねました。どうも、おばあちゃんはセツ子おばさんと気があっていたようです。
チエちゃんもその方がうれしかったのです。というのは、テツおばさん家には子どもがいなかったけれど、セツ子おばさんには小学生のケイ子おねえちゃんがいたからです。ケイ子おねえちゃんと遊ぶことができたし、それよりも何より、ケイ子おねえちゃんの家は東北本線長町駅線路のすぐ脇にあったので、列車を見ることができたからでした。

 列車をあまり見たことがないチエちゃんは、一日中飽きもせずに、通り過ぎる貨物列車を窓から眺めていたのでした。貨物列車のコンテナには様々なマークや文字が描かれていましたが、その中に、黒い猫が子ねこをくわえているマークがありました。
チエちゃんはなぜかその可愛いマークが気になって、今度はいつ通るのかとずーっと見ていたのでした。その運輸会社は現在、宅急便で有名な会社になりました。

 明日は帰るという前の日に、チエちゃんはケイ子お姉ちゃんたちと一緒に松島観光に出かけました。瑞巌寺、赤い橋を渡って五大堂をお参りしたあと、遊覧船に乗って楽しんだのでした。

第55話 かくれんぼ

2007年04月02日 | チエちゃん
 春のポカポカ陽気に誘われて、従姉妹の由美ちゃんと洋子ちゃんがやって来ました。2人はトシ子おばさんの娘です。トシ子おばさんは同じのすぐ近所に嫁いでいたのです。由美ちゃんはチエちゃんと同い年、洋子ちゃんはたかひろ君と同い年です。ですから、学校では同級生だし、何かというと、いとこ同士顔を合わせ、一緒に遊んだものでした。

 何して遊ぶ?

 かくれんぼ!

 うん、やっぺ。 かくれんぼ、やっぺ。

 じゃんけんぽん!あいこでしょ!
チエちゃんが負けて、最初の鬼になりました。
チエちゃんは腕で目を覆って、庭の中央にあるビャクダンの木に寄りかかると、大きな声で10数え始めました。他の子たちがササッと動く気配がします。

 ・・・8、9、10。 もう、いいか~い?

 まあ~だ~だよ

 もう、いいかい?   もう、いいよ~!

 あとは、シーンとなりました。
チエちゃん鬼がみんなを探し始めました。「たかひろ、みぃ~っけ!」たかひろ君は、カラヤ(納屋)の筵の下に隠れていました。筵が動いていたのですぐに分かりました。続いて、「由美ちゃん、みぃ~っけ!」カラヤの隣の薪小屋の後ろに隠れていました。あとは洋子ちゃんだけです。何処にもいません。そう思ったとき、上の畑で、何かが動きました。「洋子ちゃん、みぃ~っけ!」

 今度は一番初めに見つかった、たかひろ君が鬼です。目をつぶって10数え始めました。さあ、何処に隠れよう!
チエちゃん家は高台にありました。庭の先の土手に降りて、見えないように腰を下ろしました。
「もう、いい~かい!」「もう、いい~よ~」

 しばらくして、洋子ちゃん、由美ちゃんが見つかったようです。
チエちゃんはじっとしていましたが、その時です。チエちゃんの足元で、何かがごにょごにょと動きました。

 きゃあ~!

それは、それは、赤ちゃんのヤマカガシでした。
ポカポカ陽気に日向ぼっこをしていた所をチエちゃんに踏ん付けられていたのです。

お陰で、チエちゃんは見つかってしまったのでした。