その日の朝、私たちは彼女がいないことに気付いていなかった。
ヒロシは、ワールドカップ観戦に夢中だった。
日本が負けてしまったのに、まだサッカーを観るのかとヒロシをからかった。
私は、弁当を作り、時間通り出勤することに精一杯だった。
毎朝、私が起き出すと必ず彼女も起きてきて、ご飯をねだるのに、この日は来なかった。
前日の朝、起きて来ないので、二階の窓際の彼女のお気に入りの場所をのぞいてみると眠っていたので、そっとしておいた。
この日も、てっきりその場所で寝ているものだと私は決め込んでいた。
息子たちは、猫の動向など気にも留めず外出した。
私も、信号待ちの回数を気にしながら出勤した。
サッカー観戦を終えたヒロシも、この日に限って市役所に出かけた。
帰宅すると彼女の姿が見えなかったが、ヒロシも二階のお気に入りの場所で寝ているのだろうと思っていた。
昼近くになっても姿を現さないので、二階に上がってみると、果たして・・・そこには影も形もなかった。
これは! 私か息子たちがキャシーを押し入れか何処かに閉じ込めてしまったのだろうと家中を探し回った。
以前にもあったのだ。
私たちが押し入れを開けている時、こっそり入り込んだ猫を閉じ込めてしまったことが。
しかし、家中探しても、どこにもいなかった。
6月25日深夜から26日未明にかけて、キャシーは忽然と消えてしまった・・・