チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

ようこそ! チエちゃんの昭和めもりーずへ

はじめての方は「チエちゃん」のカテゴリからお読みいただくことを推奨しています。 もちろん、どこからお読みいただいてもかまいません。

ハンモック

2009年07月28日 | チエの玉手箱
 あれは、弟がまだ2~3歳の頃でしょうか。

 チエちゃん家では、夏になると、「カラヤ」と呼ばれていた納屋にハンモックを吊っていました。
カラヤは2室に分かれていて、北側には味噌桶や普段使わない厨房用品が収納してあり、南側は北側より少し広く、唐箕などの農機具、養蚕用の道具、米の貯蔵缶などが置いてありました。
その中央にハンモックを吊っていたのでした。
カラヤは、母屋の北側に位置していたので、真夏でも時折、涼やかな風が通り、お昼寝にはぴったりだったのです。

 弟の専属子守係だった祖父は、孫をハンモックに乗せ、取り付けた紐を引っ張って揺らしながら寝かしつけていたのですが、いつも弟が眠るより早く、祖父の方が居眠りを始めるのでした。

 弟がむずかる度に、「あ~、はい、はい・・・」と言っては紐を引っ張り、
こっくり、こっくり、・・・・「あ~、はい、はい」

 その頃、チエちゃんはおばあちゃんとお部屋で、お昼寝をしてたのは言うまでもありません。

 もちろん、私もハンモックに乗ってみたことがあります。
揺らすと、気持ちがよいものの、ギシギシと軋む音がするたびに、ロープが切れてしまったら、恐いなとも思っていました。
 ですが、時折父も揺られていたので、それは取越し苦労というものだったでしょう。


画像は、フォトライブラリーからお借りしました。

糠漬け

2009年07月22日 | チエの玉手箱
糠漬けを漬けてみました。

 先日出かけた農協の直売所で、糠床を購入したからです。
糠床は完成品で、すぐに野菜が漬けられる状態になっています。
う~ん、おいしくできました。
やっぱり漬物は、糠漬けだなあ。


 実家の母も、ず~っと糠みそを漬けていました。
もう、何十年も使っている糠床です。
傷まないように、どっさり塩と唐辛子が入っています。
きゅうりなら、2~3時間で漬かってしまうのですから、その塩辛さが知れるというものです。

 夏の遅い夕暮れ時、母屋の裏にある納屋に糠漬けを取り出しに行く母に付いて行ったのもでした。
納屋の中には、普段使用しない厨房道具や臼、のし板、大きな味噌桶などが置いてありました。暑さの中にも、そこの空間だけ、ひんやりとした空気が漂っていたような気がします。入り口扉のすぐ近くに直径30cmくらいの糠みそ桶がありました。

 母は、糠みその中から、3本・4本、5本・6本と次々にきゅうりを取り出して、私が持っているボールの中に入れてゆきます。
納屋の隣にある井戸の洗い場で、糠を洗い流したあと、その場でほお張るきゅうり漬のおいしかったこと。

 今でも、実家に行くときゅうりの糠漬けが出てくるので、糠みそ桶はあの頃のまま、あの場所にあるに違いないのです。

鬼平犯科帳

2009年07月18日 | チエの玉手箱
 昨夜は、久々に「鬼平犯科帳」の新作を堪能しました。
私は、吉右衛門鬼平の大ファンです。
私の中では、原作のイメージを損なわない数少ない作品のひとつ。
それもそのはず、原作者の池波正太郎さんは、中村吉衛門さんの実父、先代松本幸四郎(故 松本白鸚)をイメージしてこの作品を書いたといいます。

 私の父は時代劇好きで、NHKの大河ドラマをはじめ、萬屋錦之介の「子連れ狼」や中村敦夫の「木枯し紋次郎」、「必殺シリーズ」などをよく観ていました。
あの頃、もちろん先代松本幸四郎主演の「鬼平犯科帳」も観ていました。

 当時、私は鬼平のおもしろさが解かりませんでした。
「大岡越前」や「銭形平次」などの勧善懲悪ものとは、一味違うおもしろさを理解するには、まだ人生経験が足りなかったのでしょう。

 池波さんは作品の中で、鬼平にこう言わせています。
「人間というやつ、遊びながらはたらく生きものさ。善事をおこないつつ、しらぬうちに悪事をやってのける。悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事を楽しむ。これが人間だわさ。」
悪人である盗人たち、与力、密偵、そして彼らにかかわる女たちの人間ドラマを描いているところに、この作品のおもしろさがあるようです。

 私の好きな作品は、「大川の隠居」「本所桜屋敷」「むかしの男」などです。
もちろん、原作は全部読んでいますよぉ。

 ところで、長谷川平蔵は実在の人物で、天明7年(1787年)火付盗賊改役に任ぜられました。寛政の改革、老中松平定信の下で、私財を投じて石川島に人足寄場(犯罪者の更生施設)を作ったことが有名。
ですから、TVドラマ「大岡越前」で、寄場送りとするという判決を下すのはおかしいのです。
鬼平と呼ばれていたかどうかは分かりませんが、実際に盗賊葵小僧を捕らえるなど非常に有能であったということです。

 また、「雨引の文五郎」読み直してみたくなりました。

第168話 柱時計

2009年07月12日 | チエちゃん
 チエ~、時計止まったがら、巻いどいで~

屋外から、お母さんの声がしました。

 うん、わがった~

 チエちゃんは、道理で何だか静かだと思ったのでした。
チエちゃん家の柱時計は1時間ごとに、その時刻の数だけ、ボーン、ボーン、ボーンと打ち、30分にはボーンと1回だけ打つのでした。
静かにしていれば、チクタク、チクタクという音が聞こえます。

 チエちゃんは廊下の隅っこから、踏み台を持ってきて、茶の間の時計の下に据えました。
チエちゃんの家では、時計のねじを巻くのは、ずっとおじいちゃんの仕事でした。
でも、最近では、おじいちゃんからねじの巻き方を教わったチエちゃんもできるようになっていたのです。

 踏み台に上ったチエちゃんは、時計の蓋を開けました。
中には、ねじを巻くための道具、鍵状のねじ巻きが収納されています。
それを取って、文字盤の中にあるねじ穴に差し込み、ぜんまいねじを巻くのです。
ねじ穴は左右に2つあって、どっちからでもよいのですが、右利きのチエちゃんは右側からやります。
最初は軽く回るのに、ねじが締まってくると、だんだんきつくなってゆきます。
10回ねじ巻きを回しました。続いて、左側。
それから、止まっていた振り子を指でツンと強く押しました。

時計は、また、チクタク、チクタクと動き始めました。
このとき、チエちゃんはいつも思ったものです。
私が振り子を押す力は弱すぎて、すぐにまた止まってしまうのではないかと。


しばらくして振り子が止まらないことを確認したチエちゃんは、静かに時計の蓋を閉めました。



真夏のオリオン

2009年07月07日 | チエの玉手箱
 オリオンよ、愛する人を導け!
 帰り道を見失わないように。

 真夏にオリオン座が見えるのは、夜明け前のほんのわずかな時間だけ。
 真夏に輝けば、この上ない吉兆。船乗りの間では、昔からそう信じられていた。


 1年に一度行くか行かないかの映画でしたが、ここのところ、1月に一度くらいの割合で映画館に足を運んでいます。
あの『亡国のイージス』『終戦のローレライ』の福井晴敏氏監修・脚色ということで、『真夏のオリオン』を観てきました。
このブログにも少し前から、ブログパーツを貼り付けています。

 仕上がりは、いまひとつというところでした。
映画化原作文庫本では、十分に楽しませてくれたのですが、映画はきれいにでき過ぎていて、戦争の悲惨さとか、命を懸けた凄絶さとかの緊迫感に欠けていたように思いました。吉田栄作がよかったかな。

 むか~し、私が若い頃、職場の大先輩に、神風特攻隊の生き残りという方がいました。
若い少年兵だったその方は、3日後が自分の番という時に終戦を迎え、命拾いをしたのだと。しかし、すぐには終戦ということが信じられなかったとも言っていました。


ああ、映画っていいですよねえ。
次回は、ズバリ『ハリー・ポッター 謎のプリンス』でしょう!



第167話 おじいちゃんのいびき

2009年07月02日 | チエちゃん
 旅先で同部屋になった人の鼾がひどくて、「いや~、うるさくて昨夜は眠れなかったよ。」という話をよく聞きますが、私は、枕が変わり眠れないことはあっても、鼾のせいで眠れないことはないと自信を持っています。

 チエちゃんが物心ついた頃には、もうおばあちゃんと一緒の布団で寝ていましたから、その隣にはおじいちゃんも枕を並べていました。
チエちゃんは、毎夜おばあちゃんから、絵本を読んでもらったり、昔話を聞かせてもらったりしてから眠りにつくのですが、その時すでにおじいちゃんは高鼾をかいてぐっすり眠り込んでいるのです。

 大鼾をかく人ほど、寝付きが良く、誰よりも早く寝てしまうものですよね。

 ガーッ、ゴーッ、ガーッ、ゴーッ、・・・・
  ガッ、ガッ、ガ、ゴーッ、ぷぅ~
 ・・・・・・・・(しばらく、しーんとなる)
  んっ、ぱぁ~っ、
 ガーッ、ゴーッ、ガーッ、ゴーッ、・・・・

 ク、ク、ク、クッ、クーッ・・・・

 チエちゃんは、その鼾の不思議なリズムを聞きながら、いつの間にか子守唄のようになって眠りにつくのでした。
逆に、おじいちゃんの鼾がないと、なかなか寝付けなかったものです。

きっと、おばあちゃんもそうだったに違いありません。