気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

今日の朝日歌壇

2006-12-18 23:45:25 | 朝日歌壇
時計屋に立ち退き交渉する真昼あふれる時計は住人のごとし
(京都市 後藤正樹)

冬空よりこぼるるごとく喪中はがきひとつまたひとつ死者乗せてくる
(枚方市 鍵山奈美江)

包丁にもの刻む音聞こえしがしばし遅れて柚子の香とどく
(ひたちなか市 篠原克彦)

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一首目。針のある時計は何となく人の顔のように見えるし、時計はつねに働いているから人間のようにも思えてくる。そこで立ち退き交渉していると、ふとやりにくさを作者は感じたのだろう。あふれる時計という言葉から、まだ繁盛していてやる気のある店のようにも思えた。
二首目。喪中はがきが、ぽつりぽつりとポストに入る季節。ひとつまたひとつ・・にその感じが出ている。死者が高齢であれば、ちょっとほっとするが、どなたが亡くなったのかわからないようなハガキだと、心配になってしまう。
三首目。聴覚から、嗅覚にうまく移動している歌。鍋ものだろうか。だれかが用意してくれる食事というのは、本当にうらやましいと思う。