気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

金魚の刺繍

2006-12-13 23:40:26 | つれづれ
電車にて「まいど」と声を掛けきしは関取ほどに太れる息子

没年より生年を引きはろばろと思ほゆ画家の見たる青空

膝の上にひろげむとして泳ぎ出す金魚の刺繍のストールを買ふ

はつ夏の湖面のごとき灰皿に煙草の尖(さき)はしづかに触るる

採点をされつつ育ちし十代を春空高く捨てむ幾度も

たなうらにけむり水晶ころがせりわが五十代まだ初心にて

(栗木京子 けむり水晶)

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栗木京子は小柄な美人で澄ましていそうに見えるが、息子の「まいど」の歌など、思わず笑える。母親が歌人だというのは、どんな気分だろう。栗木京子ほどになればいいのだが、中途半端な歌人もどきの母親は迷惑だろうな。
金魚のストールの歌は、動きがあっていいと思った。採点をされつつ・・の歌。俵万智にも「優等生と呼ばれて長き年月をかっとばしたき一球がくる」を思い出した。「幾度も」というところに共感した。
また、いのち還らずという長歌も、現実の幼い兄弟が殺された事件を題材として圧巻。