気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

滴る木 吉野亜矢歌集

2006-12-21 22:53:59 | つれづれ
美しきかたちと思う忠敬(ただたか)の結びあげたる海岸線を

硝子片塀に刺しつつこんなにも人を信じぬもの美しき

地中ふかく根を張るものへ憧れを抱き樹形図の先に滴る

ら・ふらんす熟れゆく部屋に人はなく里の雛(ひいな)に会わぬ春暮れ

南中の辻を行き交う夏日傘あまた小さき影を曳きおり

(吉野亜矢 滴る木 ながらみ書房)

************************

未来とレ・パピエ・シアンに歌を発表しておられる吉野亜矢さんの第一歌集。
独特な感性で詠まれている歌で、なかなか解釈がむつかしい。
一首目は、伊能忠敬の地図から発想して作られたのだろう。
言葉の操作の中で、美を表現することを目指している方だと思った。