気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

天の腕 棚木恒寿

2006-12-29 00:32:05 | つれづれ
水際には死ぬために来し蜂の居てあわれわずかにみだりがわしき

馴(な)寄りつつ揺らぐ生徒の小波あり上澄みをゆく午後の数学

頷けば感情の抜けるしずけさの彼がいる たぶん秋の内弟子

モンキチョウあるいは葩(はな)の影過ぎてローマ字協会ビル壁しろし

ままよとて腕投げ入るる闇のなか母音ありけり明治のひびき

(棚木恒寿 天の腕 ながらみ書房)

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音所属の棚木恒寿さんの第一歌集を読む。
三十代前半で、高校生のときから短歌を作っておられたらしい。
滋賀県で数学の先生のなさっていて、独特の不思議な感覚が詠われている。
三首目の「秋の内弟子」なんて、彼独自の発想から出た言葉だろう。真似が出来ない。
ローマ字協会ビルというのは、あるのかどうかわからないが、この歌のカタカナ、漢字、ひらがなのバランスが絶妙だ。
いままでになかった手触りを感じる歌集。

短歌人1月号、届いているところもあるようだがうちはまだ届かない。
あしたこそ来るだろう。