備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

アンチ・アノニマス

2010-06-23 08:45:19 | 陶芸
世の中には、「誰がデザインしたか知らないけれど、昔からあるよね」という定番の形というものがある。

いわゆる『無名性』のプロダクトデザイン。つまり『アノニマス・デザイン』である。

はさみ・ピッケル・剣道具・フラスコ・野球のグローブとボール・碍子・化学実験用蒸発皿・ビーカー・そろばん・スクリュー・足袋・手かぎ・ジーパン・たわし・旧ジープ……(例は柳宗理氏)

機能美に直結したシンプルさが特徴。商業的意識のデザインは削ぎ落とされていると言っても良いだろう。


もっとも現代のプロダクト製品の場合は、誰がデザインしたかは判っているので、概念的にはチョット古い過去のもの。
現代製品で『無名』とか『無銘』を有り難たがる向きについては、趣味の問題。
その最たる結果が『無印の良い品』のブランドのそれだし、そもそもブランディングされた時点で……(略)。


我々ヤキモノ屋にもアノニマスなモノはある。窯詰め道具や制作道具。
レンガ・ツク・ヘラ・カンナ・シッピキ・コテ・羽子板……。
それらは一様に機能をメインにして考えられたもので、それ以上の意識は何処にもない。

窯詰め道具の『匣鉢(さや)』もアノニマスなモノ。おおむね形が、角・丸・楕円ぐらいの単なる耐火性の筒や箱。
さてさて、その匣鉢であるけれど、これまでの経験から『青備前』で使う場合、モノと匣鉢との間の空間が少ない方が良い事が判っている。で、次回用に「匣鉢の内側が徳利状の匣鉢が欲しいな」と思っているところ。


勿論そういう匣鉢は売っていないので自作する。
チャッチャと紙にスケッチして、土をロクロに乗せて「さぁ作ろう!」という時に、ふと思った。

「ドウセナラ、今回カギリノ匣鉢ダカラ、遊ンジャオウ……」

ちょっとした閃めきを逃す前に、ロクロ座から降りてアレコレとラフ。
そして「フフフ…」 →意味不明 ┐(-。ー;)┌

匣鉢のアノニマス性から、大きく逸脱。


備前焼は絵も描かないし、釉薬も掛けない。窯詰めと窯焚きの工夫のみ。
「炎で景色を描く為にはイロイロと道具が必要なんだよな~~」というのが本質。
でも「そこに『遊び』があっても良いじゃないか~」というのは、仕事時間を削った事に対する言い訳。


重要なのは、匣鉢の中に入るモノ。
遊んでばかりいないで、そっちを作らんと~~。

でも楽しい。

さて、どんな匣鉢が出来たかは……そのうちに。


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