備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

『カツカレーうどん』の逡巡

2012-04-17 16:21:37 | 料理・食材


自宅にあって「カレーライスの翌日にカレーうどんが定番」というのは関西圏の事らしい。(最近知った)
当たり前と思っていたので、「そうでない」と知った時は些か驚愕の思いであった。
「うどんにせな、鍋洗うのんヤヤコシイやん」とも思うのだが。

で、カレーうどんであるけれど、出汁の状態で大別して2種類ある。

ひとつは『全体タイプ』である。
カレーのルー自体を水なり出汁で伸ばして、全体をカレー味の出汁にする。家庭でよく見られるけれど、鍋を洗う準備段階としては理にかなっている。
また、専門店で見られる場合、若干トロミのある専用の出汁がある場合も少なくない。蕎麦屋のカレーとかは独特ですな。

もうひとつは『後掛けタイプ』である。
普通のうどんにカレーを掛けてあり、食べるにつれて出汁に溶きながら頂く。学食や立ち喰い屋でよく見られるタイプ。専用の出汁を作らずともメニューが増やせるというお店の都合か。カレーライスの鍋からチョイっと掬われる事が多いかな。

で、実際どちらが好みかというと……『後掛けタイプ』である。出汁の香りが断然良く、かつスパイシーさも残っているので。
ただ『全体タイプ』も家庭の味として捨てがたいので、作るときは気分次第でどちらか。
このあたりは細君も関西人なので理解がある。(というか、作る前に協議する必要もあるが)

まぁ、ここまではカレーうどんの出汁の状態の事なので何も問題はない。


さて、問題は昨日『カツカレーライス』であったところから始まる。
カレーもあるし、トンカツもある。カレーライスの翌日はうどんであるからして……定石からすれば『カツカレーうどん』となるであろう。

が、『カツカレーうどん』はメニューとして有りか無しか……。

サクサク衣が出汁を吸って、カツが溺れるだろう……。しかし、天麩羅が入るのと同じ事か。
うどんに豚というのは……。肉うどんの肉違いなだけ。

カレーうどんに、トンカツを入れるべきか入れないべきか一瞬の逡巡があった。


素早く脳内で各情報を整理(というか、単なる腹減りの本能)の結果。
「カツ丼というものがある。(岡山のデミカツ丼でなく)出汁でカツを半身浴で煮て卵でとじる。なのでカツが出汁に浸るのは許されるだろう。一方、カツにカレーが掛かるのも、うどんにカレーが掛かるのも既にメニューとしてある。さすれば、『出汁に浸かったカツが乗ったカレーうどん』はOKである」

という事で、本日の昼ご飯は『カツカレーうどん』である。


最後に青物として「出汁+カツに敬意を表してミツバであるべきか、カレーうどんとしてネギとすべきか」は迷ったけれどワケギとなりました。理由は目の前に生えてたから。


いやはや誠に、いじましい話である。


が、高校生の時に遭遇した『コロッケそば(@三ノ宮高架下)』の衝撃から比べれば何と言うこともない。

記憶によれば……、
トッピングされたコロッケが出汁を吸い自然崩壊しながら溶けて、蕎麦の隙間から丼の底へと陥落していく。次第に芋のトロミを増していく出汁と蕎麦との味が乖離するのを一箸毎に強くなるのを感じる。そして、蕎麦がなくなった後、もはや掬えない状態の沈殿物を啜るにしては粉っぽく、和風ポタージュと思ってみたところで味のピントが無さ過ぎて、持て余したそれを意味も無く端先でかき混ぜてみるけれど、時間だけが過ぎていく。その哀愁……。「最初から別々にあれば良かったものを……」と思いつつ暖簾をくぐり、街の外気を胸に満たしても後悔だけが残る。

……ってぇ、ぐらい衝撃だったんだよなぁ~。なので、溶ける系は要注意。

あぁ、ますます、いじましき哉。


え~~と、ですね。
『カツカレーうどん(全体タイプ)』ですが普通に美味しゅう御座いました。

「メシは頭でなくて腹で喰え!」なのだ。 否!『考えるな、感じろ』か。 ガハハ。