備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

『 取手 』職人

2009-03-02 15:48:05 | 陶芸
『取手(とって)』というパーツ作り。マグカップやポットのハンドルとなる部分。

備前焼の場合、パーツの接着にはちょっと気を使う。
釉薬モノならば接合部分にヒビや剥離があった場合でも、焼成中に溶けた釉薬が埋めてくれる事もあるけれど、備前焼の場合は丸見えなので。

ここでも修行経験で、取手の作り方、接着方法は様々。

民芸風に粘土を引っ張ってつける人。板から切り出す人。皮を使う人。型でおこす人。あえてパーツを意識するデザインにする人。
接着も、ドベ(泥漿)を使う人、水だけの人、珪酸ソーダーを使う人、ロクロを挽いた直後に付ける人。ドベの作り方もこれまた色々と…。

いずれにしても、デザイン的な要素が方法によって規定される。
「こうしたければ、こうしないとね」という素材の性質から導かれる場合もある。

こういう引き出し(方法)は、沢山身についている人が、より幅広い製作が出来る。柔軟に…。


…とは言いつつも、お好みの方法があるので、結果それが個性にもなる。


小生の場合は、パーツを作ってから乾燥具合を見計らって一体化させる方法。
大体は、ボディーの高台仕上げの直前に作って、全部を削り終わった頃に接着するという時間配分。このタイミングが狂うと、ビニールで囲ったり、箱に入れたり、霧吹きしたり…となる。


方法が決まってしまえば、後は仕事量の問題。

だんだん馴れて、手早く出来るようになってくると、ちょっとした職人気分になる。塊からヒョイッと摘まみ出し、棒状にして、平らに…。
寿司職人がネタを摘まんで、ワサビを付けて、シャリを掴んでキュキュッ!と仕上げる感じ。
手数が決まってくると、仕事をしながら「ヘイッ!お待ちっ!」というリズムが出来る。

仕事を見ていた子供たちは、「和菓子職人みたい~」と言っていたが…。
取手の形が早蕨?


どの職人をイメージするかは、お好みの問題か?

( 食の職人しかイメージしないは、家庭環境の問題? )