備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

美味しそうな原土

2007-01-11 21:21:45 | 陶芸

備前焼の粘土はヒヨセ、田土とも呼ばれるキメの細かい粘土です。この粘土は、流紋岩(火山岩)が風化分解し、それらが流出堆積したものです。現況では、田んぼの下の数メートルの場所に層となっています。その為、ヤキモノ屋さんは、田んぼをしていない冬季が粘土堀りのシーズンとなります。今では専門の業者が原土を掘り、その掘ったままの原土を入手するのが一般的となっています。

ひとくちに「ヒヨセ粘土」と言っても、採掘される場所によって耐火度、粒度、鉄分量など様々です。しかも、ほんの数メートル違うだけで性質が異なる事はよくあることです。その為に原土を掘っている現場で土を買うという事は、未知のものを買うわけで、結構なギャンブルです。

備前焼は釉薬を掛けない『無釉焼締め』という焼物なので、原土は重要です。それをどの様に精製するか、しないかも重要です。偶然の産物と言われる備前焼ですが、最終的なイメージに向けて組み立てていくプロセスの必然性が求められます。

写真は、小生が弟子時代にコツコツと買った原土。チョコレートみたいに美味しそうな色をしている。実際に粘土を食べて、その質をみるという方々もいらっしゃる。小生は食べても判らないので試し焼きをしますが……。鳩羽色のこの粘土は焼くと濃厚な緋色が発色する。ゴマ、サンギリの反応もすこぶる良いが、ヒダスキには不向き。使いみちを間違えると大変な事になってしまうので注意、注意。