道草、より道、まち歩き。

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四人はなぜ死んだのか

2008年10月31日 23時46分57秒 | 本と雑誌
41hjr8yy9zl_ss500_久しぶりに図書館で本を借りた。
「四人はなぜ死んだのか」-インターネットで追跡する「毒入りカレー事件」-

もう十年も前になる98年夏に起きた和歌山「毒入りカレー事件」。
これを著者は夏休みの宿題に取り上げ、インターネットを使い調査しレポートを書き上げた。まずカレーで食中毒が起きるのか?との疑問を出発点に食品会社のホームページ、中毒関連データベース、毒物関連サイトを調べ上げ、その初期症状などからひとつの結論に辿り着く。それは毒物中毒を見逃し、救急処置をとれなかった保健所、医療関係、青酸中毒に固執した捜査当局、異論を唱える事のできなかったマスコミなどの責任による社会的医療事故、業務上過失致傷ではないかということだった。

なぜ今頃この本を?というと、これを書いたのが三好万季さんという当時中学3年生だったからだ。今は25歳になっているはずで、もう何冊か著書があるのかもと調べてみたが、出版しているのはこの本のみのようだ。この調査力、文章力はとても中学生とは思えないけれど、7つ上のお兄さんは最年少で司法試験の一次試験を通ったそうで、世の中には凄い家族がいるものだと思う。

この本を読んでいる時、たまたまNHKのクローズアップ現代で「善意の井戸で悲劇が起きた」というタイトルで、カンボジアで日本を含む外国のNPOの支援で掘られた井戸の水を飲んだ人に、ヒ素中毒の症状が現れ問題となっていると放送していた。
近頃は旅行会社がツアー旅行にオプションとして「井戸掘り」が組み込まれるほどで、手軽・気軽に多くのボランティア活動が行われている。もともと現地では川の水や雨水を利用していたが、きれいな水が使えると住民も感謝していたが、出た水の検査は人手も資金も不足しているということで、ヒ素中毒が表面化されてから問題化されているので、水が出て満足して帰国するボランティアも多いようだ。

NPO法人アジア砒素ネットワーク(AAN)は、カンボジアでの井戸建設は最近5~10年の間であり、汚染の広がりもまだ小規模であるとしているが、そもそもアジアの大河流域では、マグマに含まれるヒ素が堆積している地層があり、ここから汲み上げた井戸水にもヒ素が多く含まれ、インドからバングラディシュ、中国、ミャンマーまでヒ素中毒で苦しむ人が既に80年代から報告されていたという。それなのに、未だに検査体制も整わない環境で、なぜ次々に井戸が掘られている活動が行われているのか理解に苦しむ。

三好さんは本の中で、香菜がヒ素中毒に効果があると調べ、生物化学研究所にお願いし被害者に香菜を粉末化した製剤を提供してもらい、これがどの程度効果があったのかは定かではないが、実際に被害者60人は体内のヒ素濃度が正常に戻ったという。AANも現地の活動として香菜の栽培・摂取に取組みたいとしていたが、10年経った現在のAANのホームページには香菜の事は掲載されていなかったので、別な健康管理、栄養摂取指導などに重点を置いているのかもしれない。

海外ボランティアはしっかりした知識を持った団体の指導の元、本当に現地の人のためになる事を考えてから行わないと、せっかく善意でやった事に罪悪感も覚えてしまうかもしれず、お互いが不幸になってしまう気がする。
始まったばかりの「相棒シーズン7」もなぜか海外支援に絡んだ汚職がテーマだった。ペットボトルのキャップを集めて一喜一憂していないで、まずは海外の現状を理解する事が先決なのだろう。もちろん自分も含めて。

コメント (4)
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