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私の愛聴盤(第157回)

2021-08-29 | 私の愛聴盤
第157回は西条孝之介カルテットの「RESURRECTION」です。
このアルバムは、先に掲載した「INCARNATION」より前に録音されていますが、発売は後になっており、“RESURRECTION=復活”というタイトルが示すがごとく、正に西条孝之介の力のこもった再起アルバムです。

「RESURRECTION」 RVL-5504
  
1. HERE’S THAT RAINY DAY
2. SCABOROUGH FAIR
3. IT MIGHT AS WELL BE SPRING
4. WILLOW WEEP FOR ME
5. THE THINGS WE DID LAST SUMMER
6. THE WINDMILLS OF MY MIND
7. BALLAD FOR STUDIO
西条孝之介 (ts, fl) 前田憲男 (p) 荒川康男 (b) 猪俣 猛 (ds)
録音 1974年

これは、ウエスト・ライナーズ時代の気心知れたメンバーの集まりでありながら、お互いに緊張感を持っていることが伝わってくる優れた演奏集です。
選曲は全て西条が行っているとのことですが、前衛的なプレイや、珍しくフルートも使っており、彼の全アルバムの中では最もシリアスな今までにない1面も聴くことができます。
その中で、前田憲男のピアノ・プレイも素晴らしく、それぞれの曲が際立っていることも特質すべき内容です。

1曲目の「HERE’S THAT RAINY DAY」は、西条がベースとの対話によるゆったりしたテンポでスタートし、時折フリーキーでアグレッシブな展開となりながら、後半は前田の情緒的なピアノ・ソロを挟んで、再びメロディを重視した演奏に戻り、最後はカデンツァで締めくくっています。
続く「SCABOROUGH FAIR」は、西条が最初と最後で吹くと言うより鳴らすという感じでフルートを効果的に使っており、荒川のベースのリズム・パターンはこの演奏の前半を支配しており、徐々に前田のダイナミックなピアノ演奏へと移っていきます。後半になると、これに西条のテナーが加わり、ノン・リズムの中でテーマをモチーフにした激しいプレイへと進みますが、その後は再びピアノのダイナミックなテーマ演奏を経てエンディングとなります。
また、「 IT MIGHT AS WELL BE SPRING」、「WILLOW WEEP FOR ME」、そして西条のオリジナルである「 BALLAD FOR STUDIO」は、いずれも西条が渾身を込めて演奏する絶品のバラードで、これに絡む前田のピアノが非常にリリカルで美しいです。
「THE THINGS WE DID LAST SUMMER」は、前田が抜けたトリオで、西条は丁寧にメロディを吹きながら進んで行き、途中ベース・ソロを挟むものの最後までメロディを崩さずに、歌心豊かなバラードに仕上げています。
ミシェル・ルグランの「THE WINDMILLS OF MY MIND」(風のささやき)は、ピアノのフリー・テンポによるメロディーの上を残りの3人が自由な発想で音出しをしており、最後は前田の断片的なメロディを紡ぎながらエンディングへと進んで行きます。

これは、ジャズ・アルバムとしても、バラード・アルバムとしても一級品の内容で、西条孝之介にとっても会心の出来栄えですが、惜しむらくはジャケット・デザインで、演奏内容を反映したものであれば名盤として一層輝いたのではと思います。

コメント
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