AcousticTao

趣味であるオーディオ・ロードバイク・車・ゴルフなどに関して経験したことや感じたことを思いつくままに書いたものです。

3174:7

2014年11月25日 | ノンジャンル
 RCAショートピンは、使っていないRCA入力端子にはめ込んで使う。我が家のオーディオ・ソースは一つしかない。使っているのはPHONO入力のみで、TUNER、EXTRA、TAPEの三つの入力端子が空いている状態であった。

 2セットのショートピンをTUNERとEXTRAにはめ込んだ。TAPEにも試したが感度が高く設定されているようで、ショートピンを差し込むとハム音が生じたため、TAPE入力端子には何も設置しなかった。

 この状態で、先ほどかけたヘンデルのヴァイオリンソナタ第4番のレコードを再度かけてみた。「変わるな・・・」「これは効きますね・・・」ものは小さなものであるが、その影響度合いは「山椒は小粒でピリリと辛い・・・」という感じである。

 ヴァイオリンのエネルギー感がアップして強く出る。音の背景がすっきりとして晴れやかな雰囲気に・・・しかし、ヴィンテージらしい奥ゆかしさはぐっと後退・・・自己主張をしっかりとする強い女性という雰囲気である。

 気になったのはTAPE入力。かなり感度が高く設定されているようで、ここから外来ノイズを吸い込んでいる可能性はかなり高い。

 そこで、ショートピンの真ん中の突起部分を外すと、ショートピンではなく単なるRCAカバーとなる多機能性を利用して、RCAカバーをTAPE入力端子に装着した。

 TUNERとEXTRAのショートピンは外した。この状態で再度レコードをかけた。SNが良くなるのは前回同様であるが、その自己主張度合いは少しゆったりとした。まだ奥ゆかしさをも感じさせる。

 「これなら、良いのでは・・・」という気がした。やりすぎると、音の硬度がアップしすぎてしまう傾向はあるが、うまく調整しながら使うと良い方向へ持っていけそうである。「これは使える・・・そして変化する度合が相当強い・・・」そう感じさせるアクセサリーである。

 そして、次なる検証へ移ることに。銘機MERANTZ 7の登場である。shanshanさんのMarantz 7は最初期型。「300番台」のシリアルナンバーを持つ貴重な7である。



 ウッドケースには入っていない。今のプリアンプの基準からみるとコンパクトな形状と言えるかもしれない。しかし、LEAK Point One Stereoを見慣れている眼からすると、かなりごつい感じがする。

 その作り込みはしっかりとしていて、でんと構えている感じがする。「かっかってきなはれ・・・」といった声が聞こえてきそうな佇まいである。

 LEAK Point One StereoにMC昇圧トランスから繋がれているRCAケーブルとパワーアンプへ繋がる専用ケーブルを外し、Point One Stereoを床に置いた。

 Marantz 7を替わりにGTラックの天板に据えて配線を整える。これでプリアンプ:Marantz 7、パワーアンプ:LEAK TL-10という、かなり珍しいと思われる組み合わせによる音の確認作業の準備が整った。

 先ほど純正LEAK組み合わせで聴いたヘンデルのヴァイオリンソナタ第4番のレコードを再び取り出し、LINN LP12のターンテーブルに乗せた。そして、針をゆっくりと盤面に降ろした。
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3173:70倍

2014年11月24日 | ノンジャンル
 風邪をすっかりとこじらせてしまった。そのため2週続けてチームでのロングライドにも参加することができなかった。

 「今年の風邪は強い!」

 「そいつは厄介だな・・・福富!」

 「いや、かまわない・・・俺も強い!」

 ふと頭にはそんな「弱虫ペダル」風の会話が流れ去った。しかし、残念ながら私の体に蓄積されていた風邪への抵抗力はそれほど強いものではなく、猛威を振るう風邪の威力の前に早々に白旗を掲げる破目に陥ってしまった。

 昨日一日ベッドで過ごし、風邪をやり過ごした。その甲斐あって、少しは風邪の症状も峠を越したようである。

 ロードバイクで峠を越える場合には必死にクランクに力を込めないといけないが、風邪の症状の峠を越えるには、薬を飲んでベッドに横たわり、ひたすら体を休めるしかないのである。

 今日の午後には、オーディオの友人が二人、我が家に来てくれることになっていた。風邪の症状は、喉の痛みと、体の倦怠感がまだ残ってはいるが、ベッドに横たわり続けるほどに厳しいものではなく、どうにか大丈夫そうであった。午前中はゆっくりと体を休めることにした。

 午後の3時半・・・shanshanさんとチューバホーンさんが車でいらした。そしてshnashanさんは両手でとあるものを大事そうにその愛車から降ろして、運びこんでくれた。それは、Marantz 7である。

 LEAKのプリとパワーの間は専用ケーブルで接続される。その専用ケーブルは音楽信号をプリからパワーへ伝達するとともに、パワーからプリに電源を供給する役目も担っている。

 この時代のイギリス製品の多くはプリ・パワーを別々に機能させる意図はなかったようで、セットで使用することを前提として開発されていたようである。

 しかし、パワーアンプに特殊なアダプターを使用するとRCAケーブルによる音楽信号を入力することができ、LEAK以外のプリアンプとの組み合わせによる使用も可能となる。そのアダプターを既に入手していた。

 そこで、shnashnaさんがお持ちの銘機Marantz 7と我が愛機LEAK Point Oneとの聴き比べが可能となったのである。

 7 VS 0.1 ・・・数字の比較で言えば、70倍の開きがある。一般的なオーディオ愛好家100人がいれば、70人はMarantz 7のことを知っているであろう。一方100人のうちLEAK Point Oneのことを知っているのは1人ぐらいかもしれない。一般的な認知度から言えば確かに70倍ほどの開きがあるのかもしれない。

 まずは現状のシステムでレコードを2枚ほど聴いて頂いた。ローラ・ボベスコのヴァイオリンによるヘンデルのヴァイオリンソナタ第4番。ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロによるエルガーチェロ協奏曲。

 お二人はGRFが我が家に到着したばかりの時に一度聴きに来られた。その時はユニットもキャビネットも凝り固まっていた時期で、GRFらしい豊かな響きとは程遠い状況であった。

 それから半年と少し経過した。数年間もの間沈黙を守り続け凝り固まってしまったモニターシルバーも少しづつほぐれてきた。そして、製作から60年もの年月を経過したキャビネットもその響きの作法を少し思いだし始めたようであった。

 「ユニットもキャビネットも響くようになりましたね・・・」

 「前回は、これは難しそうだ・・・と思いましたが、良かったですね、鳴り始めて・・・」

 GRFらしさが発現され始めた様子にお二人とも安心された様子であった。

 ほっと一息入れたところで、使いこなしに関する二つの検証が行われることになった。一つはチューバホーンさんがお持ちになった「ショートピン」の検証。そして、もう一つは「プリのみMarantz化」の検証である。
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3172:18

2014年11月23日 | ノンジャンル
 Mark Levinson ML-6はウッドケースに綺麗に収まっていた。完全なるモノラル構成であるので躯体が2個ある。それが2階建てになったウッドケースに大人しく上下に分かれて収まっている様はどこかしら可愛げがあった。

 この時代のMark Levinsonは黒いパネルフェイスを持つものがほとんどであるが、ML-6はシルバーのパネルフェイスを持っている。その色合いが特別な存在感を醸しているようにも感じられた。

 パネルフェイスに装着されているつまみは2個、極めてシンプルである。「清廉」という形容詞が思わず頭の中に浮かぶ姿形である。

 電源部もLRにそれぞれ1個づつあり、細長い長方体には赤い小さなランプが2個光っていて、静かに「準備完了」という意思を表示していた。

 送り出しであるROKSAN XERXES 10にはSME 3009Rが装着されていた。独特のメッシュ形状を持つSMEのシェルの中には、ORTOFON MC20がひっそりと休むように取り付けられている。

 オーディオショップ・グレンの長方形をした部屋の短辺の両コーナーには、コーナー型のキャビネットを持つTANNOY LANCASTERが臨戦態勢で備えていた。その流麗な形状のオリジナルキャビネットの中には15インチのモニターゴールドが備わっていた。

 リスニングポイントの置かれた黒い革製の3人掛けソファから見て、右サイドに据えられている木製のラックにはそれら以外にも幾つかの機器が並んでいた。LEAK Point One StereoとLEAK TL-12PLUSにもオレンジ色の灯りがともされていた。

 LANCASTER以外のスピーカーの在庫は2セットあった。Spendor BCⅡとTANNOY Chatsworthは互いに前面を向い合せにされてリスニングポイントの背面の壁に寄せられていた。

 「どうこのプリ、存在感あるよね・・・LEAKやQUADとは全く違う質感だけど・・・まずは、Pont Oneで鳴らしてみて、ML-6に切り替えると、分かりやすいよね・・・」

 グレンのオーナーはそう言って、まずはLEAK Point One StereoとTL-12 PLUSの純正組み合わせでレコードをかけた。かかったレコードはスザーネ・ラウテンバッハのヴァイオリンでヘンデルのバイオリンソナタ第4番。

 第1楽章から第4楽章まで通して聴いた。「手入れの行き届いたLEAKはやはり良いな・・・」そう思わせてくれる。

 そして、配線を変更して、Mark Levinson ML-6とTL-12 PLUSの異種格闘技的な組み合わせに変えた。まあ、この店でなければこんな組み合わせでの試聴体験はまずあり得ないであろう。

 「高域が伸びた・・・低域はややスリムに・・・空気が澄んでくる・・・派手な華やかさはないが奥ゆかしい構成美が感じられる。音の表情はきりっとして緩まない。凛々しくもある。にこやかさはないが、気品が感じられる。温度感はやや低くなったというべきであろう。よく最近の若者は草食系と譬えられるが、草食系という形容詞も思い浮かぶ。あるいはそのパネルデザインを見た時に思い浮かんだ清廉という形容詞が・・・繊細で気品がある。音の線はやや細身になるが、きつさを感じさせるようなことはない。」私の頭のなかでは様々な言葉が炭酸水の泡のように浮かんでは消えていった。

 同じ曲を聴き終えた。「どう・・・?悪くはないでしょう・・・」グレンのオーナーはそうつぶやいた。

 「絶対に合わないと思っていましたけど、聴いてみると意外と合うという印象でしょうか・・・良くテレビで変わった組み合わせの料理とかをタレントが食べて・・・意外・・・といった表情で『これ、ありかも・・・』ってコメントするじゃないですか・・・そんな感じでしょうか・・・」

 ショップには1時間ほどいた。その間「異種格闘技」で何枚かのレコードを楽しんだ。きっと二度と聴くことのない組み合わせである「6」と「12」・・・6の倍数である両者、その合計数は確かに「18」になっていたように感じられた。
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3171:好奇心

2014年11月22日 | ノンジャンル
 ドビッシーの海を聴き終えた。時間にして20分と少しである。コーヒーカップの中のコーヒーは既に無くなっていた。

 私は女主人に礼を言って、コーヒー代を払った。ブレンドコーヒーの値段は400円であった。「しかし、よく壊れることなく動いていますね・・・このラジカセ・・・随分と古いものでしょう・・・」

 私がそう言うと、女主人は「2,3度壊れたみたいですよ・・・主人がね、誰かに頼んでその都度直してもらったみたい・・・こんな古いものでも直せる人がいるみたいで・・・主人の形見のようなものなのでね・・・まだ大事に使っているんですよ・・・」と答えた。

 「そうでしたか・・・そうですよね・・・もう40年ほど経つ製品ですから、全く壊れないということはないですよね・・・今でも直せるんですね・・・でも、とても良い音でした・・・優しい音ですね・・・」私はそう言って、店の扉の方へ向かった。

 「また、いらしてください・・・テープはいっぱいあるんですよ・・・ああいったテープが300本ぐらいね・・・」

 女主人の声を背中で聞くようにして、店の外に出た。そしてこのビルの階段の方へ足を向かわせた。2階は「光通商」という名前の会社が入っている。その前を通り過ぎて3階へ・・・3階は空いている。

 ようやく4階に着いた。この5階建てのビルは古く、エレベーターがない。4階の扉の前には「オーディオショップ・グレン」と書かれた小さめの看板がかかっていた。

 「面白いものを今預かっているんだ・・・売り物ではなくて、客からオークションで売却するよう代行依頼を受けたものでね・・・結構良い値段で売れそうなんだけど・・・マークレビンソンのML6っていうプリアンプなんだけど、預かっている間、おもしろそうだと思って、LEAKのパワーアンプに繋いでね聴いてみたんだ・・・まあ、これがね・・・意外と合うかもしれない・・・という感じでね・・・1週間ほど預かることになるけど、時間がある時に聴きにこない?」

 オーディオショップ・グレンのオーナーから私の携帯に連絡が入ったのは3日前であった。「ML6か・・・その当時究極とも言われたプリアンプである。LEAKのパワーアンプと合わせるって、かなり異例というか、あり得ない組み合わせだな・・・とても合うとは思えないんだけど・・・」そうは思ったが、私の好奇心は自然と膨らんでいった。
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3170:カセットテープ

2014年11月21日 | ノンジャンル
 使い古されたコーヒーポットはとても細長い管状の注ぎ口を持っている。そこからお湯が細長い曲線を途切れることなく描き、ペーパーフィルターにまるく堆積したコーヒーの粉の中に落ち続けた。その優雅で華奢とも見える曲線は大きな円を描くことはせず、ほぼ固定された一点に投入され続けた。それはしっかりとした意思を持っているように見え、流浪することをきっぱりと拒否しているかのようであった。

 ゆっくりと抽出された黒い液体はあらかじめ余ったお湯で温められていたコーヒーカップに移された。白地に紺色の細い線で幾何学模様が描かれたカップは、同じ柄のソーサーに乗せられて、私の手元にもたらされた。

 「おまちどうさま・・・」

 女主人はゆっくりと喋り、そしてゆっくりとコーヒーカップをカウンターテーブルに置いた。陶器のこすれあう繊細な響きとともに、コーヒーのどこかしら精神を清浄する効果があるように思われる香りが届いた。

 それほど期待していたわけではなかったが、コーヒーの味は満足すべきものであった。あまり雑味のない、そう少しばかり清涼感すら感じられるそのコーヒーの味わいは、私の舌の無数の小さな突起を優しく梱包した。

 私が座った席から見て斜め左45度あたりのところに、くだんのSONY CF2580は置かれていた。カウンター席は外に面した窓や出入り口から遠く、店内の照明は押し並べて暗く密やかなものであったので、CF2580もぼんやりとした空気の中に佇んでいた。

 コーヒーを一口、二口、そして、三口ほど飲んだであろうか・・・女主人は小さな横長の箱を取り出して、私のコーヒーカップの横に置いた。

 「カセットテープ、聴いてみますか・・・それは亡くなった主人が集めていたものの一部なんですよ・・・」

 その横長の箱の中には昔市販されていたミュージックテープが10本ほど入っていた。映画音楽があったり、歌謡曲のテープもあった。変わったところではYMOのミュージックテープも入っていた。そしてクラシックも数本あった。

 私が目を止めたのは「ドビュッシー:交響詩 海」と背表紙に日本語で印刷されていたテープである。それを手に取り裏返して裏面を見ると、「(SIDE-A)交響詩「海」:1.海の夜明けから真昼まで/2.波のたわむれ/3.風と海との対話 (SIDE-B)夜想曲:1.雲/2.祭り/3.シレーヌ(海の精)(女声合唱) エルネストアンセルメ(指揮)/スイスロマンド管弦楽団」と表記されていた。

 「これを聴いてみてもいいですか?」私はとりだしたミュージックテープをちらっと女主人に見せて、訊いた。

 「ええ、どうぞ・・・音量は小さめで・・・」くぐもった声を持つ女主人はこちらに軽く一瞥をくれてから、答えた。

 そういえば、店内にはBGMは全くかかっていなかった。有線放送の機器もなく、音を出せる機器というのは、この左前方に置かれたCF2580しかないようであった。

 私はカセットケースをゆっくりと開けてカセットテープを取り出した。何かしら心許ないくらいに軽い。そしてかわいらしい顔立ちをしているように感じられた。

 カセットテープを手にとるのは随分と久し振りのことである。懐かしかった。CF2580のイジェクトボタンを押してカセットテープを収納する蓋を開けそこにカセットテープを入れ込んだ。そしてその蓋を手で閉めた。

 プレイボタンを押した。テープはスムースに回転を始めた。音の入っていないリーダーテープ部分が「サ~」という静かな走行音を響かせながら過ぎ去っていき、やがて音楽が収録されている部分に達した。

 海の夜明けを描いた導入部は静かに始まる、やがて印象的な旋律を持つ幾つかの主題が流れ始め、徐々にその繊細にして雄大な標題音楽は全貌を見せ始める。

 一番左側にあるボリュームノブを調整して、あまり音量が大きくならないようにした。CF2580からは清涼な音楽が流れた。「色とリズムのある時間」としての音楽は優しげな横顔を見せてくれる。CF2580で聴くミュージックテープは予想以上に私の聴覚を優しく愛撫してくれる。

 「今度は、私の番・・・・」といたずらっぽく言って、「寧々ちゃん」がその舌先を私の首筋にゆっくりと這わせる時に感じるような、すとんと陥穽に軽く落ちるような感覚にとらわれた。
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