ILZE GRAUBINA(1941年11月8日 ~ 2001年1月24日)は、ラトビアのピアニストである。彼女は1964年のヨハン・セバスチャン・バッハ・コンクールで優勝している。
彼女はメロディアで数枚のLPを残している。そのうちの1枚が、スカルラッティとヘンデルのピアノ曲を収録したものである。そのレコードは、我が家のレコードプレーヤーであるORACLE Delphi 6にたびたび乗せられる。
そのレコードのA面には、スカルラッティのソナタが6曲入っている。ソビエト時代のビニールは素材の質があまり良くないのか、サーフェスノイズはやや多めである。
さらに、エンジニアの意図とは思えないのであるが、バランスが結構右に寄っている。そういった欠点があるにはあるが、その演奏は素晴らしく、ついつい手が伸びる。
1曲目は、スカルラッティのソナタ K.162 L.21 ホ長調である。数多くあるスカルラッティのピアノソナタの中でも人気が高いものである。
私も個人的にとても好きな曲である。可憐で清楚、きらきらと輝く若々しい生命感が感じられる。彼女の演奏からは、その可憐な曲の背後に忍んでいる神秘的とも言える響きの美しさが如実に感じられる。
2曲目は、ソナタ K.25 L.481 嬰ヘ短調が続く。こちらは陰影感がぐっと深まる。悲劇的な展開を予測させる雰囲気に空気を一変させる。
その後も緩急や、明暗のバランスが取れた選曲で幾つかのソナタが続いていく。「珠玉の名曲にして名演・・・」そんなことを思いながら、A面を聴き終えた。
録音された年代から考えると、イコライザーカーブはRIAAのはずであるが、以前試しにCOLUMBIAに変更してみた。すると響きが豊かになって、その神秘性がぐっと上がったように感じられた。
「リアルではないかもししれないが、こちらの方が魅惑的に感じられる・・・」と思い、それからこのレコードを聴く際には、イコライザーカーブをCOLUMBIAにしている。
Zandenのフォノイコライザーは5つのイコライザーカーブを選択できる。イコライザーカーブに関しては「どれが正解か・・・」といった視点で論議されることが多いが、「どれが自分として一番魅力的か・・・」といった視点で選んだ方がいいのであろう。
オーディオはリアルさを追求するばかりではない。「リアルだ・・・」ということに感動・感銘の源泉を求める人も多いではあろうが、そうでない要素の中にも魅惑的なものが含まれている。