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九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

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随筆   「音楽」の友達   文科系    

2014年03月17日 04時46分51秒 | 文芸作品
 今朝、ギター仲間Nさんからこんなメールがあった。冒頭の文言からして、その嬉しさのほども分かろうというもの。『おはよう? こんな時間に目を覚ましてしまった。でも善は急げ、朗報です』。午前二時四四分発送とある。
 【昨日レッスンが終わってからAさん宅に行ってきました。彼から「一度私の『月光』を聴いて欲しい」ということで。大変驚いた。半年くらい前に聴いたのとは違い格段に上達されていたので。ゆっくりたんたんと、そしてしっかりとしたテンポとタッチ。私も要望されて『月光』を弾いたが、確実に私の負け。でも嬉しくって涙が出てきた。絶対に人前で曲を弾かなかった彼が「自分の演奏を聴いて欲しい」という気持ちになったというのが、嬉しかったなぁー。(以下略)】
 この二人、あるギター教室の七十に近い同門生で、Nさんとは同じ歳、Aさんは一つ上。去年の早春、発表会の打ち上げ会で知り合ってから二年足らずのお付きあいだ。そして、打ち上げ会の一二日あとに我が家に三人が集った「ギター遊び・飲み会」以降しばらくして、ある事件が起こった。Aさんが教室を辞めてしまったのだ。この事件の微妙さを部外の方々に分かってもらうのはとても難しいのだが、こんなことだと推しはかってきた。
 まず、Aさんが教室の先生に大きな不満を持ち始めた。どうも、僕たち二人の批評から『先生が、この年寄りとしてはこんなもんだろうとだけ扱ってきた』と思い至ったらしい。僕らの関係もナーバスなものになってきた。特に、僕の古いアルペジオ楽譜二枚にショックを受けたとしきりに語られる。定年後先生につく以前、一人習いの昔から、ちっとも上手くならないのでいつも基礎に帰って弾き込んできてぼろぼろになった二枚であった。これのことも含めて、彼はおおむねこんな思いを抱いていたのではないか。
〈習って二十年。ちっとも前進しなかったのはタッチがいい加減だったからだ。練習時間と熱意とでは誰にも負けぬと自負してきたが、それもどうもあやしい。俺のこのギター、これから一体どうしたら良い!〉
 以降の彼は、僕とは話したくないようだった。今分かるのだが、僕が何気なく口に出した言葉が彼をずいぶん傷つけてもいたようだ。
 そして、彼との接触を委ねたNさんからこう聞いたのが、去年の晩夏。「別の先生について、音だしの基礎練習だけをやってきたらしい」。秋には、Nさんの努力で三人の下呂温泉一泊旅行が実現した。Aさんは、僕らが思いもしなかったことだが、Nさん持参のギターでその音だしだけを披露してくれた。見違えるようにしっかりしたタッチだった。Nさんが事実通りに褒めていたし、僕も言葉に注意しつつ何かを言ったと思う。この時の彼の心境! 帰宅翌日のメールにこうあった。
 「正直言ってお二人の前でギターを弾いた時は、清水の舞台から……の心境。緊張感を凌駕した恐怖感。結果、弾き終わって『汗びっしょり』でした。お二人に対する敬意のつもりで弾きました」
 ギター、「音楽」へのなにかとてつもない愛着を僕に感じさせた。
 その後しばらくして「曲の練習に、『月光』に取りかかられた」と聞いていた。

 この三人で出発した「ギター遊びの会」の方は二回目以降もずっと続き、来新春で春夏秋冬ともう二回り、八回目になる。常連出席も男女八名と賑やかなパーティーに育っている。Aさんがここに戻って来ること、これがNさんと僕の暗黙の誓いのようなものだ。その理由は自分でもよく分からないが、こういう「音楽」の場所に彼がいないのは、おかしい。

(2009年の頃の作品。再掲です)

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