これは、前大会直後に書いた総括文、拙稿の一つだ。そして、今回の解任が、こういう総括に見る世界傾向を無視したものだとしか思えないと、今回は言いたいのである。そしてもう一つ。選手と監督のあるべき、正しい関係をももう一度考えてみたいというものだ。今回の解任にも、選手の「造反」が関わっていたことがはっきりしているのだから。ハリルが「選手が個々人で、チーム批判を外に出すことがあったが、これは良くないことである」と述べていたことを思い出している。そして、協会がその批判に乗ってしまったということも。
【 随筆 世界サッカーに異変 文科系 2014年06月23日
また、世界サッカーが激しく流動し始めた。全盛期にあったパスサッカーが勝てなくなって、堅守速攻チームがまたしても台頭して来たようなのである。
ヨーロッパ各国チャンピオン・クラブらが戦う決勝戦にパスサッカーの強豪が勝ち残れず、アトレティコ・マドリッドという珍しいチームが準優勝して世界を騒がせた。この略称アレッティは、典型的な堅守速攻のカウンターチーム。と観ていたら今度は、このワールドカップで目を見張る出来事が続く。南ア大会優勝チームにしてパスサッカーの雄スペインが一次予選敗退と決まったのだ。また、金持ち強豪クラブが多い割には近年勝てなくなったサッカー発祥の国イングランドも予選敗退が決まった。この国も、その過去への拘りをやっと捨てて、パスサッカーを取り入れている真っ最中だった。かと思えば、このイングランドに引導を渡した予選D組をいち早く勝ちぬいたのが、断トツビリを予想されたコスタリカという名もない国。コスタリカはイタリアと南米の強豪ウルグァイを負かしたのだが、そのイタリア戦報・新聞の数行を引用してみよう。
『パスを回すイタリアに、敵陣からプレスをかけて速攻を主体に対抗した。44分にディアスの速いクロスをルイスが頭で合わせて先制に成功。後半は攻勢に出て来た相手を、5人が並ぶDF陣が粘り強くはね返した』
「敵陣からプレスをかけて速攻を主体に対抗した」。この文章からは、世界サッカー動向にちょっと通じた人なら連想できることがある。史上ほんの一時の栄光以外は名も金もないチームなのに世界の強豪クラブに割って入ってきたドイツ・ドルトムントと、このチームの金看板新戦術、ゲーゲンプレスである。「敵陣からプレスをかけて」敵ボールを奪い、「(ショートカウンターによる)速攻を主体に」得点するというやり方だ。人よりもダッシュを繰り返しつつボールが回せる無名の選手を集めて、独特の敵ボール奪取布陣とショートパス戦術を徹底して、短期に世界的強豪に駆け上がった賢い戦術と言って良い。ただここの複雑な練習方法は非公開の門外不出。他チームが必死に真似ようとしてきたことも既に有名な話だ。日本では、香川真司がここのエースとして世界に知られるようになった。今の世界で、このチームから学び、ボール奪取に長けた前プレスのコンパクト組織、それに向いた好選手を創り上げる監督があちらこちらに現れたのではないだろうか。僕はそんなボール奪取・ショートカウンター組織という新世界の出現を夢想してみた。
さて、「日本代表史上最強チーム」も予想を覆して、一本の蜘蛛の糸を残した予選敗退の危機にある。この風前の灯火・日本代表について、世界動向も無縁ではなかったと思う。従来の強豪型・パスサッカーでいくのか、ドルトムント流プレスをも取り入れるのか。ザッケローニ監督や選手たちにも、そんな迷いがあったのではないか。初戦コートジボアール戦は、パスサッカーによる中央突破を封印しただけではなく、攻撃の柱でもある二選手、岡崎と香川に敵サイドバックの上がりに付いていく守備の戻りを命じていた。ギリシャ戦でも、好調時のパスサッカーは封印したままで、サイドクロス攻撃と中距離シュートなどを徒に繰り返しただけだ。かと言ってコートジボアール戦などは前陣で敵ボールを奪うというポイントは弱いままだった。高い位置で敵ボールが奪えなければ前列選手が浮いてしまい、得意のショートパス攻撃が不発に終わるのも明らかだった。どうしてこんな中途半端な戦い方になったのだろうか。僕には、監督にも選手らにも迷いがあったとしか思えないのである。そして、テストマッチでは時に華麗なショートパス攻撃を繰り広げた選手たちが、本番では迷ったままの監督に忠実でありすぎた、とも。】
なお、このブラジル大会でブラジルを大敗させるなどで優勝したドイツと唯一接戦を繰り広げたのがアルジェリアで、その監督がハリルであった。日本の協会や選手たちよりもはるかにW杯大会に通じている監督と見て良い。その戦術に従わずして、反論を外に出す選手などは、ペナルティとしても使うべきではない。そんな習慣が代表に残ったら、今後の代表強化などは絶望に近いからである。その意見を容れたやの協会はさらに悪い前例を残したと思う。
【 随筆 世界サッカーに異変 文科系 2014年06月23日
また、世界サッカーが激しく流動し始めた。全盛期にあったパスサッカーが勝てなくなって、堅守速攻チームがまたしても台頭して来たようなのである。
ヨーロッパ各国チャンピオン・クラブらが戦う決勝戦にパスサッカーの強豪が勝ち残れず、アトレティコ・マドリッドという珍しいチームが準優勝して世界を騒がせた。この略称アレッティは、典型的な堅守速攻のカウンターチーム。と観ていたら今度は、このワールドカップで目を見張る出来事が続く。南ア大会優勝チームにしてパスサッカーの雄スペインが一次予選敗退と決まったのだ。また、金持ち強豪クラブが多い割には近年勝てなくなったサッカー発祥の国イングランドも予選敗退が決まった。この国も、その過去への拘りをやっと捨てて、パスサッカーを取り入れている真っ最中だった。かと思えば、このイングランドに引導を渡した予選D組をいち早く勝ちぬいたのが、断トツビリを予想されたコスタリカという名もない国。コスタリカはイタリアと南米の強豪ウルグァイを負かしたのだが、そのイタリア戦報・新聞の数行を引用してみよう。
『パスを回すイタリアに、敵陣からプレスをかけて速攻を主体に対抗した。44分にディアスの速いクロスをルイスが頭で合わせて先制に成功。後半は攻勢に出て来た相手を、5人が並ぶDF陣が粘り強くはね返した』
「敵陣からプレスをかけて速攻を主体に対抗した」。この文章からは、世界サッカー動向にちょっと通じた人なら連想できることがある。史上ほんの一時の栄光以外は名も金もないチームなのに世界の強豪クラブに割って入ってきたドイツ・ドルトムントと、このチームの金看板新戦術、ゲーゲンプレスである。「敵陣からプレスをかけて」敵ボールを奪い、「(ショートカウンターによる)速攻を主体に」得点するというやり方だ。人よりもダッシュを繰り返しつつボールが回せる無名の選手を集めて、独特の敵ボール奪取布陣とショートパス戦術を徹底して、短期に世界的強豪に駆け上がった賢い戦術と言って良い。ただここの複雑な練習方法は非公開の門外不出。他チームが必死に真似ようとしてきたことも既に有名な話だ。日本では、香川真司がここのエースとして世界に知られるようになった。今の世界で、このチームから学び、ボール奪取に長けた前プレスのコンパクト組織、それに向いた好選手を創り上げる監督があちらこちらに現れたのではないだろうか。僕はそんなボール奪取・ショートカウンター組織という新世界の出現を夢想してみた。
さて、「日本代表史上最強チーム」も予想を覆して、一本の蜘蛛の糸を残した予選敗退の危機にある。この風前の灯火・日本代表について、世界動向も無縁ではなかったと思う。従来の強豪型・パスサッカーでいくのか、ドルトムント流プレスをも取り入れるのか。ザッケローニ監督や選手たちにも、そんな迷いがあったのではないか。初戦コートジボアール戦は、パスサッカーによる中央突破を封印しただけではなく、攻撃の柱でもある二選手、岡崎と香川に敵サイドバックの上がりに付いていく守備の戻りを命じていた。ギリシャ戦でも、好調時のパスサッカーは封印したままで、サイドクロス攻撃と中距離シュートなどを徒に繰り返しただけだ。かと言ってコートジボアール戦などは前陣で敵ボールを奪うというポイントは弱いままだった。高い位置で敵ボールが奪えなければ前列選手が浮いてしまい、得意のショートパス攻撃が不発に終わるのも明らかだった。どうしてこんな中途半端な戦い方になったのだろうか。僕には、監督にも選手らにも迷いがあったとしか思えないのである。そして、テストマッチでは時に華麗なショートパス攻撃を繰り広げた選手たちが、本番では迷ったままの監督に忠実でありすぎた、とも。】
なお、このブラジル大会でブラジルを大敗させるなどで優勝したドイツと唯一接戦を繰り広げたのがアルジェリアで、その監督がハリルであった。日本の協会や選手たちよりもはるかにW杯大会に通じている監督と見て良い。その戦術に従わずして、反論を外に出す選手などは、ペナルティとしても使うべきではない。そんな習慣が代表に残ったら、今後の代表強化などは絶望に近いからである。その意見を容れたやの協会はさらに悪い前例を残したと思う。
とても印象的でした。
日本人からはあまり聞かれない言葉。
これぞ個人主義の国の人では?
そしてこれは個人主義という日本語では
表現できないものを感じました。
解任は、文化の違いから生まれ悲劇で、事前に
十分な話し合いが行われなかったことが
事態を悪くしたのかも・・・
お雇い外国人の時代から余り変化していない感じ。
加えてこの事もある。国代表で戦う短期決戦には、後者が向いていると。国代表ではパス得点のための連携を鍛える時間も少ないし、W杯ではそもそもそんなに危うい繋ぎなど出来ない。そんな大会では、守備から入ってそれが得点にもなる戦いが一番と、その事も言いたかった。
しかも、日本の順位は著しく下がっている上に、西野にはこの「ゲーゲンプレス以降」の闘いの経験もない。こうして、ロシアで勝てる材料が全て消えてしまったと見て良いのだ。もし勝てるようなら、西野は監督時代の最後をあんなに汚してはいなかったろう。
ただし、唯一希望がある。コーチに手倉森氏が居ることだ。彼の仙台時代は明らかにエントリーの世界潮流を取り入れていたと僕は観た来た。これはこのブログにも書いてあるが、12年3月28,29日エントリーなどを参照されたい。
西野は、手倉森とよく相談するのがよいだろう。
弱いチームが急に強くなる方法がある。それがゲーゲンプレス的な戦い方をするということだ。広島のゲームは1度しか見ていないが、こういう戦い方であると断言しても良い。 成績に大きな波がある城福監督は、もの凄い情熱家。それがまたちょっと変人に見えるほどで、凄い勉強家だけれど人間関係がちょっとというタイプなのだろう。
横浜の監督は元豪代表監督ポステコグルー。ロシア大会出場権を勝ち取った後、横浜へやって来た有名なパスサッカー監督。それが、この間やっと落ち着いてきたゲーム運びで、殊勲の星を挙げた。ゲームの特徴はこんな所である。
①ボール奪取のための組織と、敵ボール保持者への当たりとが、極めて厳しかった。そのために最後までよく走るチームだった。
②ショートパスもよく繋がる。第2、第3のボール受け走り込みもよいのだろうし、そのパスも上手い。混戦の時でも、選手らの視野も広いのである。
③得点は、天野純のゴール前中距離フリーキックで1得点。後2点は敵ゴール右サイド崩しから。山中という左サイド選手がとても目立っていた。スピードもあるし、何本も走れる上に、プレーが非常に柔らかい。
④この3得点の前の前当たりを覚えていないのだが、「敵ボールカットからのショートカウンター」を多く使い、それが非常に強いチームと観た。
これは、広島と同じ闘い方だろう。今の世界の弱者が短期間で最も強くなるゲーゲンプレス的な闘い方と観た。ハリルに負けたポステコグルーが、ハリル戦法を取り入れたことは明らかである。また、横浜にはそういう人材も居たということだろう。
リバプールをよく見てください。
大事な批判ですから、きちんと答えたいと思います。特に「ゲーゲンプレス」の僕の定義を。
クロップ自身の言葉でゲーゲンプレス最重要の発見、定義はこういうもの。
『敵が我がボールを奪って前掛かりになった瞬間こそ、その時に敵ボールが奪えればゲーム中最大の得点チャンス』
この発想は、従来の得点法とは違ったもの。この発見を生かした以降の得点法を僕は全て「ゲーゲンプレス的」あるいは「その影響」と述べてきました。そのことは既にお分かりのはず。
クロップ的なその際のフォーメーションというものはありましょうが、そのいろんな変形があるのも当然のこと。相手と自分らとのいろんな相関関係に於いて。
以上が僕の理解です。つまり、どこかの時間帯で「ボール奪取即得点」にチーム一丸となって全力を挙げる。そういう得点法を採用しているチームは、「ゲーゲンプレス的」と述べてきました。
書いてあることはあなたが個人的に解釈を広げたゲーゲンプレスの話ですね。
基本的に書かれていた内容をゲーゲンプレスに当てはめるのはかなり無理があります。仮にそうしたことをゲーゲンプレス的と総称するならば、そのベースになったバルサのプレスの方を看板にした方がいい位でしょう。又、現在サッカー界でのゲーゲンプレスの定義も書いてあることとは別になります。
極めて個人的な解釈ということでしょう。
これは僕ではなく、クロップ自身の発見、発想を、クロップ自身が言葉にしたもの。敵が守備から攻撃へとフォーメーションを変えて前掛かりになった瞬間が、最も敵守備としては乱れている時で、ボールを奪えれば、ゲーム中最大の得点チャンスになるのだと、これもクロップの解説。
この発見、発想から、クロップは以下のようなアリゴ・サッキ流コンパクトプレスを取り入れたとも、語っています。以下の戦術は、この発想そのものがなければ無意味になるという意味で、この発想に対して従属的なことと考えます。
敵ボールに近い人間がボールに突っかけて、他の身方は一斉にパスコースを塞ぐ。四六時中こういうシフトを敷かなくとも、前の数人がこのシフトを使ったら奪えると観た時なども、ゲームでは無数にある。
さらに言えば原口のように「この対面の相手は、どう攻めて行けばボールを奪える時があるか」をよく観察しておいて、単独でもボール奪取に成功する機会を増やし、絶好の得点機を作ることに注力する選手もどんどん生み出していく。
なお、コンパクトプレス自身は何もバルサの発明ではなく、90年代前のACミラン、アリゴ・サッキの発明です。むしろ、2010年にバルサがモウリーニョに負けて、クロップはますます己の発見に自信を持ったはずです。