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随筆 夢に描いた演奏会  文科系

2012年06月13日 18時55分09秒 | 文芸作品

 こんな演奏会を創り出してみたかった。そんな夢をとうとう叶えたというお話をしよう。

 舞台は名古屋市南東郊外、民家風ログハウスの小演奏会場。時は春も真っ盛りの3月31日。西と南に庭があって、北西には咲きかけた紫木蓮、本日の庭のヒロインだろう。その根本にはユキヤナギが、そのちょっと南に離れた所からは満開レンギョウの黄色が、それぞれ目に飛び込んでくる。珍しい演奏会とあってか、30人ばかりの小会場は1部に続いて2部も満員だ。
 演奏は僕たちの先生。「朗読コンサート」と銘打った会のメーンの出し物は「プラテーロとわたし」。スペインのノーベル文学賞詩人ファン・ラモン・ヒメネスの詩に、マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコが曲を付けた作品だ。朗読者はある「おはなし会」の会員の方である。
 「プラテーロとわたし」の朗読コンサートを聴いたのはこれで3度目だが、先生の初めて聴くこの演奏はどういうか、とにかく生き生きとしている。強弱、緩急ともに落差が大きく、要するに動きがあるのだ。また、クラッシックギターの持つあらゆる表現技術・奏法を作曲者の指定以上に、それを乗り越えてちりばめていたのかもしれない。この演奏がまた、朗読者の低めで落ちついて温かい声をよく浮かび上がらせ、小さな椅子にぎっしりと並んだ30人が食い入るように見つめ、聴いていた。

 数曲の独奏に入って、その中にはフェルディナンド・ソル作曲「エチュード 作品6の11番」が入っていた。これがまた、先生の僕に対する何かお返しのような気がして、ちょっと嬉しかった。というのは、去年に続いて2回目のこの会は、弟子たちが実行委員会を作って実現してきたものであって、僕はたまたま実行委員長だったからだ。委員長といってもなんの権限、権威もなく、当日に限って言えば駐車場の整理兼雨中の案内係のようなことをしていただけだ。1部2部の司会はそれぞれ、A氏とUさんに頼んだし、受付はKちゃんがやってくれた。A氏はわざわざヒメネスの人生と作品までを調べてきて司会談話のなかに織り込んでくださったし、Uさんはといえばこの日の為に作ったという黒のスーツでその細めの美しさが際立って見えた。余談だが、この会場の持ち主がやはり聴衆として参加しており、あとでこんな感想を漏らされていたと聞いた。「なんか、感じの良いお弟子さんばかりで、羨ましかったです」。そう、A氏もUさんも、とても感じが良かった。そして、この家の持ち主も負けずに感じが良くって、これがまたリコーダーなどのサークル、演奏会などをやられてきた方であって、この会場もそういう体験からイメージを膨らませてきた彼女の「夢の産物」らしい。
 さて、こういうイメージの演奏会を長く温めてきて提案したのは、間違いなく僕である。会場ログハウスのパイン材の壁に4~5枚の絵が掛けてあるが、これも僕のいろいろ語った願いの一つを先生が生かしてくれたものだった。やはり弟子の1人S氏が絵をやると聞いて、先生が当日の為に頼んで下さったのである。全てがスペインの光景、情景だった。中でも最も目につく場所には、グラナダ辺りの「フラメンコ小屋」(タブラオ)で中年女性が長いモスソを翻して踊っている。僕も観光で訪れたことがあるのだが、古ぼけた薄暗い庶民の場所という感じがとてもよくでていて感心していたものだ。

 さて、この演奏会では、演奏が終わってからが僕の最大の出番と言って良い。実行委員会のメンバーで会場を作り直して、「ワイン・チーズパーティー」に模様替えしていく。ワインは赤白5本をそろえ、チーズはロックフォールなどの青カビと、白カビをそろえた。去年の会で、こんな体験があったから安心して。このパ-ティーを当てにしてくる2部への参加者は、ブルーチーズが好きな人が多いのだ。つまり食通が揃っている。
 
 ワインは全部なくなった。チーズは少し残った。これらを飲み平らげる合間に、先生にいろんな曲をみんなが注文していたし、2回目にして皆がもうこの会に病みつきは明白である。音楽といろんな特技を持った弟子たちの作品と、ワインとチーズ。生きている限り、弟子たちの力で続けていきたい。我が親愛なるギター仲間たちはみんな、間違いなくそう思っているはずだ。春夏秋冬と各1回、7~8人で4年も続けあってきた変わり種宴会「ギター遊びの会」の結晶の一つなのである。
 こういう機会、場所から先生に新しいお弟子さんが見つかること、それも僕らの最大の望みである。大好きなギター音楽、それを職業とする人が普通に食っていける日本であって欲しい。
コメント (2)
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