彼はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)会場・横浜みなとみらい地区からヘリコプターでやって来た。アメリカ軍の軍人用住宅がある逗子の池子へ。そこから車で20分、鎌倉に。
昨年11月訪日の演説で、オバマ大統領が日本について、真っ先に言及したのは、母親に連れられての鎌倉の思い出だった。平和と静けさの象徴としての大仏について語り、子供だったので抹茶アイスの印象の方が強かったと笑いを取る
それにあやかり地元商店では、それ以降「オバ抹茶ソフト」や「オバ抹茶アイス」と商品名も変え、売り上げは倍増したという。
今回の訪問も、あの大統領選の頃から奇妙な縁で結ばれた福井県小浜市でも、被爆地・長崎でもなく、自身も受賞したノーベル平和賞サミット開催中の被爆地・広島でもなく、六歳の時に母親と訪れた鎌倉だ。
警備も物々しかった。
最近、自分の行きつけのカフェのマスターが言うには、“私のお客さんで大仏の裏に住んでいる人がいるが、今月に入って三回も警察が来たそうですよ。そこに居る人達が住民登録通りかどうか確かめているのですって”って話も聞いた。
早い時期から各施設でも、また各地で交通規制も行われていた。駅でも「APECに協力して下さい」のチラシが9月頃から配布されていた。
当日は大仏(高徳院)周辺が特に規制が凄まじかった。
また、いつもは渋滞する若宮大路も、その時間はガランとして、まるで飛行機の滑走路のように車一台も通っていなかった。
今後、外国からの観光客はどこに行きたいかと問われれば、京都でも奈良でもなく、まず真っ先に鎌倉、そして大仏と答えるかも知れない。
2人の娘のために数珠を買った後、ベンチに座り、抹茶アイスクリームに舌鼓を打った。
APECの首脳会談がアイスクリームのように溶けて流れたのか、表面だけでもまとまったのか、報道では分からない。
またアメリカ民主党は下院で先の中間選挙で60以上もの議席を減らし過半数を失い、歴史的大敗を喫したが、「オバマッ茶アイス」は、傷ついたオバマ大統領の心までも慰めてくれたのだろうか。