海側生活

「今さら」ではなく「今から」

銀木犀の花言葉

2009年11月07日 | 思い出した

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懐かしい香りがフッと鼻を掠めた。
混雑する駅の改札口近くで擦れ違った人からなのか、衣装ケースから取り出したばかりのような匂いがした。
そう言えば今朝は急に冷え込んだ。

この匂いで別の香りを思い出した。
先々週、久し振りの伊万里での高校同窓会の後、自分のルーツを求めて自分が生まれた土地・佐世保へ行き、転校するまで過ごした、今は無い生家の跡や通学した小学校等へ行った。車中で様々な思い出に浸りながら、その後、唐津の今は亡き母の実家を訪ねたときの事だ。

ここに来るといつも何故だかホッとする。
門扉を開け、従兄弟夫婦が丹精込めた広い庭を通っている時、何処からともなく上品な香りが漂ってくる。思わず足を止めた。周りを眺めたが花らしいものが見当たらない。少し後戻りをして感じる臭覚を全開にしていたら、やがて香りの源が見つかった。
銀木犀だ。思わず鼻をその白い可愛い小さな花に近づけた。葉の鋸歯が鼻先に当たりチクリと痛い。
金木犀に比べ花の数も少なく、弱くて地味な甘い香りがする。

少年時代の様々な思い出が鼻をくすぐる。
佐世保から伊万里へ引越しの時、走る列車を途中で待ちうけ、聞き取れない何かを叫びながら追いかけて来て、姿が小さく見えなくなるまで手を振り続けたヨー君達の事。小川で魚獲りをして遊んでいたらガラスの破片で足を怪我したタッちゃんの事。遊びのルールを変えたと泣いて抗議したミヨちゃんが、いつまでも寄りかかって動こうとしなかった校庭の隅の大きな銀杏の木。

思わず銀木犀の花言葉を探してみた。
「初恋」、「気を引く」とある。素直に納得した。

気のせいか鼻先がいつまでもチクチクと痛いような気がした。