OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

憎いあなたと危険な関係

2010-08-28 16:15:01 | 歌謡曲

憎いあなた c/w 危険な関係 / 小山ルミ (ユニオン)

昭和47(1972)年秋に発売された小山ルミの裏人気シングルが、これだと思います。

当時の彼女は前年夏にベンチャーズ歌謡の決定版「さすらいのギター」を大ヒットさせて以降、そのキュートな存在感は、キワドイ衣装でのセクシーアクションとエレガントなムードを両立させることが出来た、まさに全盛期だったのです。

ところがちょうど同じ頃、やはりハーフのアイドル歌手としては先にブレイクしていた山本リンダが、デビュー当時の可愛さ優先から見事にイメージチェンジを果たしたセクシー路線で再ブレイク! それが同年初夏に発売され、社会現象にもなった傑作大ヒット「どうにもとまらない(キャニオン)」だったことは、言うまでもないでしょう。

とにかくその勢いは圧倒的で、忽ち業界では後追いの同系歌手や楽曲が頻発するほどだったわけですから、ひと足早くセクシーアクション歌謡を演じていた小山ルミと彼女のスタッフにしてみれば、心中穏やかではなかったでしょう。

そこで敢然と発表されたのが、このシングル盤!

という経緯は完全にサイケおやじの妄想的推察に過ぎませんが、しかし実際に聴いてみれば、それを否定することが難しいほどの素晴らしい出来なんですよねぇ~♪

実は先にネタをばらしてしまえば、前述の「どうにもとまらない」を書いた都倉俊一に楽曲を依頼して作られたのが、このシングル両面というわけなのです。

まずA面「憎いあなた」は、千家和也の作詞に作編曲が都倉俊一というコンビによる、実に山本リンダ調がモロの名曲! その情熱の歌詞とメロディ展開を幾分ネチッこく歌う小山ルミの存在感は言わずもがな、ストリングスの暑苦しいまでの流麗さ、さらに疑似スパニッシュなアコースティックのリズムギターが抜群の彩りになっています。

いゃ~、正直な本音では、エレキギターによるイントロのフレーズとリズムパターンを聴いただけで、これは山本リンダ!? と確信して後、アッと呆けるのが快感というところでしょうか。

さらに言えば、これは山本リンダが翌年春に大ヒットさせる「狙いうち(キャニオン)」の予行演習みたいな感じさえ、強いんですよねぇ~♪

そしてB面の「危険な関係」が、これまた強烈なブラスロック歌謡の決定版!

作詞作曲はA面同様に千家和也と都倉俊一のゴールデンコンビなんですが、アレンジが宮川泰ですから、その洋楽流行性感度は抜群♪♪~♪

イントロから叩きつけるようなテンションの高さでブッ飛ばしていく展開は、エレキギターやエレキベースの唸り、炸裂するパーカッションにドカドカ煩いハードなドラムス、さらにオルガンのファンキーな彩りや強烈なブラスの咆哮が、明らかに当時人気絶頂だったブラスロックグループのチェイスを意識しまくっています。

そうです、あの「黒い炎」を意識過剰に翻案し、歌謡曲と見事に融合させているんですねぇ~♪

もちろん小山ルミの歌いっぷりは、ブレイクを多用した曲展開と痛烈なアレンジの中にあっての大奮闘! 失礼ながら、決して凄い歌唱力のあった人ではないのですが、そのリズム感の良さとビートに対するノリは、この頃の歌謡ポップスを愛する皆様には、ノー文句の仕上がりじゃないでしょうか。

サイケおやじにしても、このB面の方を愛でる気持が今も強いです。

また、このカラオケは永久保存でしょうねぇ~♪ とにかく分厚いサウンド作りと混濁してファンキーな味わいまでも滲む演奏が、尋常ではありません。

ということで、結果的なヒット状況では山本リンダの後塵を拝してしまったのですが、リアルタイムのテレビ歌番組では、小山ルミも負けじとセクシーな衣装でアクション全開の大ハッスル♪♪~♪ 個人的にはホットパンツ姿で、このシングル盤両面を歌っていたお姿が、今でも目に焼き付いていますから、そのあたりの映像復刻も待たれますねぇ~♪

ということで、やっぱり昭和のセクシー歌謡路線は忘れ難い魅力に満ちています。

ちなみに作編曲家の都倉俊一については説明不要と思いますが、やはり注目を集めたのは、セクシー路線転向の山本リンダに提供した楽曲のヒット以降でしょう。そして同時期からはフィンガーファイブ、ピンクレディ、山口百恵等々が放ったヒット曲の華やかな部分は、かなり担当していたのですが、それとは別次元の所謂しっとり系の曲も、様々な歌手やグループによって夥しくヒットしたのはご存じのとおりです。

そして一時は結婚生活があった大信田礼子の「同棲時代」も、都倉俊一の代表曲なんですが、実はサイケおやじの大好きだった彼女が、この天才作曲家と結婚する事を知った時の苦しい気分は、今もって何んとも言えません……。なにしろ都倉俊一は家柄も良く、ルックスも抜群で高身長&高収入でしたからねぇ。これほど恵まれた男がこの世の中にいるという現実には、不条理さえ感じたほどです。

しかし、そういう嫉妬心なんて、サイケおやじが自らを客観的に見つめるほど、滑稽になるのは当然です。

その作曲家としての天才性は洋楽をルーツにしていることが明白ながら、決して難しいことをやらずに大衆性を強調するセンスは、パクリ云々という非難以前に本人が持っている素養じゃないでしょうか。

このあたりは元ネタよりも素晴らしい曲を作ってしまう筒美京平と双璧の凄さなんですが、都倉俊一はその偉大な先人よりも後の世代ということで、尚更にニューロック&ニューソウルの感覚が自然体に発揮されていたように思います。

最後になりましたが、後付けのネタばらしというか、実は小山ルミが前述の山本リンダが大ヒットさせた「どうにもとまらない」と同時期に発売していたシングル盤「孤独の街角」のB面に収録していた「裁かれる女」が、実は都倉俊一の作編曲によるもので、そのスパニッシュロック調のメロディ展開と熱っぽいアレンジは、如何にも山本リンダが歌うことを想定したかのような雰囲気なんですよねぇ……。

ただしロック的なビートとフィーリングは、「どうにもとまらない」が完全に勝っています。

う~ん、このあたりの楽曲発注や管理システムは知る由もありませんが、結果的に山本リンダの「どうにもとまらない」が大ヒットした中でのひっそりとした扱いには、大袈裟に言えば運命のいたずらを感じるほどですし、既に述べたように、小山ルミ側の胸中は如何ばかりか……、と部外者は無責任に思ったりするのでした。

コメント (7)
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