OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

うわさの男と真夜中のカーボーイ

2010-08-18 16:56:10 | Rock

うわさの男 / ニルソン (RCA)

もはや熱風地獄といって過言ではない連日の猛暑!

特に昨日からは仕事場の冷房が不調で難儀しておりますが、思えば昭和50年代あたりまでの我国では、家庭にクーラーなんて贅沢でしたし、職場にだってロクに空調なんて無かったところが当たり前でしたよねぇ。

本当に今の日本は豊かになったもんだなぁ~、と実感する他はありません。

さて、そんな時代を過ごしたサイケおやじの昭和40年代、夏の避難場所といえばデパートやスーパー、ジャズ喫茶やパチンコ屋と並んで重宝したのが映画館でした。なにしろ前述の場所は人が多くなると、当然ながら冷気が薄くなりますが、映画館は老朽化している所ほど、丸っきり冷凍倉庫のような冷え過ぎクーラーが特徴的でした。

そしてそんな若き日の夏、サイケおやじが名画座で鑑賞した中のひとつに、本日ご紹介の曲が使われていた名作「真夜中のカーボーイ(1969年 / ジョン・ジュレジンジャー監督)」がありましたですね。

ちなみに原題は「Midnight Cowboy」なので、「カーボーイ」じゃなくて本当は「カウボーイ」が正当なんでしょうが、何故か邦題は「カーボーイ」というのが、如何にも昭和40年代でしょう。

まあ、それはそれとして、このニルソンが歌う「うわさの男 / Everybody's Talkin'」は本人のオリジナル曲ではなく、フォーク歌手としては些かアングラだったフレッド・ニールが書いたものですが、ニルソンはそれをなかなかポップで親しみ易く、しかもアコースティックギターをメインに使うアレンジも含めて、絶妙な哀愁バージョンに仕立てています。流麗にして浮遊感さえ滲むストリングも良い感じ♪♪~♪

ちなみにニルソンは最初、ソングライターとして業界に入り、その後に並行して歌手活動もスタートさせたのですが、そこに付随するライプ巡業はいっさいやらない主義でしたから、スタジオレコーディングには反動的とも解釈出来る凝り性が散見されます。

しかしこの「噂の男」は、まだ美声だったニルソンの上手いボーカルの使い分けにより、なかなかストレートな良さがあるんですねぇ~♪

もちろん結果的に大ヒットして、ニルソンはグラミー賞の「男性ボーカル最優秀賞」を獲得しています。

肝心の映画はアメリカのニューシネマを確立させた傑作として説明不要かと思いますが、やはり成人映画でありながら、アカデミー賞に輝いたという事実だけでも、当時は凄いことでした。尤も我国では一般作品扱いでしたから、エロスに対する感性は異なるんでしょうが、それにしても、です。

物語はセックスには自信満々の田舎者というジョン・ボイトが、ニューヨークで一旗揚げんとハッスルしつつも、現実は逆にカモられ、ホームレスのダスティ・ホフマンと奇妙な友情で結ばれるという展開でした。

その流れの中にはフェロモン過多のコールガール、嘘つき学生やホモの紳士、シリアスな都会の情景、偏った人間関係等々が鋭く活写され、またジャストミートの音楽の中で特に印象的だったのが、「うわさの男」だったのです。

実はサイケおやじがニルソンを意識したのも、この映画を鑑賞し、「うわさの男」にグッと惹きつけられたのが最初で、それは昭和45(1970)年の夏の終わりでした。そして中古でゲットしたのが、本日ご紹介のシングル盤というわけです。

ということで、ニルソン本人については、いずれたっぷりとご紹介する所存ですが、映画のラスト、病気のダスティ・ホフマンを連れてフロリダにバスでやって来たジョン・ボイトが、結局はダスティ・ホフマンが死んでしまい、ひとりで陽光輝く場所に降り立ちます。

その時、実に眩しそうな表情をする主人公が、せつなくも強い印象を残すんですよねぇ、この作品は!

と同時に、観終わって暗い映画館から熱い日差しの外へ出ていく自分が、そこへ絶妙に重なったりするのです。

あぁ、名画座巡りの夏の思い出も、悪くないですねぇ~♪

コメント
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