OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スティーヴン・スティルスの美食主義

2010-06-15 16:50:39 | Singer Song Writer

Stephen Stills (Atlantic)

1970年代初頭、最も勢いのあったロックスタアのひとりとして、スティーヴン・スティルスの名前を挙げることに吝かではありません。

ご存じクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング=CSN&Yの大ブレイクはもちろん、それによって我国では幻とされてたバッファロー・スプリングフィールドの再評価にまで遡る人気は、今もってスティーヴン・スティルス最高の時期だったと思います。

そして本日ご紹介は、その真っ只中の1970年に出された、スティーヴン・スティルスにとっては最初のソロアルバム♪♪~♪

 A-1 Love The One You're With / 愛への讃歌
 A-2 Do For The Others
 A-3 Church
 A-4 Old Times Good Times / 追憶
 A-5 Go Gack Home
 B-1 Sit Your Self Down
 B-2 To A Flame
 B-3 Black Queen
 B-4 Cherokee
 B-5 We Are Not Helpless

まず我国では欧米から少し遅れた昭和46(1971)年に発売されたのですが、既にプロモーションンの段階から、参加した豪華なゲストの顔ぶれ話題になっていました。

そして実際、裏ジャケットには盟友のデイヴィッド・クロスビー(vo) とグラハム・ナッシュ(vo)、さらにジミ・ヘンドリックス(g)、エリック・クラプトン(g)、リッチー名義のリンゴ・スター(ds)、ジョン・セバスチャン(vo)、ママ・キャス・エリオット(vo)、リタ・クーリッジ(vo)、ブッカー・T・ジョーンズ(vo,per) 等々の有名スタアに加え、カルヴィン・サムュエルズ(b) やダラス・テイラー(ds) という気心の知れた仲間達も交え、スティーヴン・スティルス(vo,g,key,per,b) が大ハッスル!

中でも今では定番ロックヒットになっている「愛への讃歌」は、歯切れの良いカッティングのアコースティックギターと調子最高のパーカッションをベースに、如何にもという豪華ゲスト陣のコーラスワーク、そして幾分力んだスティーヴン・スティルスのボーカルがジャストミートの名曲名演♪♪~♪ 間奏のオルガンにもウキウキさせられますねぇ~♪

ちなみに「愛への讃歌」は1971年に発売されたCSN&Yの2枚組ライプアルバム「4ウェイ・ストリート」でも演じられていますが、その録音時期は1970年6~7月とされており、一方、こちらのスタジオバージョンは1970年3月にロンドンでベーシックなレコーディングが行なわれていたという記録があります。さらに言えばCSN&Yの大傑作アルバム「デジャ・ヴ」の発売が1970年6月であったことからして、本来はCSN&Y名義で出しても良かったと思われるほど、そのイメージが強い名曲でありながら、現実的には人気絶頂のスーパーグループは既に自然崩壊していたわけで……。

そんなこんなの当時の事情を後追いで知るほどに、このアルバムの味わい深さも強くなります。

なんとスティーヴン・スティルスはそんな状況に逸早く見切りをつけたのでしょうか、前述のアルバム「デシャ・ヴ」が完成直後の1970年初頭からイギリスを単身訪れ、自分名義のセッションを重ねていたようです。

そうした成果はジミ・ヘンドリックスのギターとスティーヴン・スティルスのオルガンが熱く対峙するファンキーロックの決定版「追憶」、エリック・クラプトンのギターも眩しいブルースロックの「Go Gack Home」、またリンゴ・スターが直ぐにそれとわかるドラミングを披露する「To A Flame」等々、まさにサイケおやじの好みにびったりなんですが、特にエリック・クラプトン参加のセッションが上手くいった余勢でテキーラを痛飲したスティーヴン・スティルスがギターの弾き語りで独自のソウル&ブルースを唸った「Black Queen」は、まさに生涯の名唱じゃないでしょうか。

それはある意味、当時の流行だったゴスペル&スワンプロックでもあり、他にも「Church」での荘厳にして大袈裟な表現が、如何にも時代を感じさせます。

そしてオーラスの「We Are Not Helpless」こそ、リアルタイムから永遠のライバルとして愛憎半ばするニール・ヤングへの対抗意識が剥き出し云々と喧伝された歌でした。まあ、それは曲タイトルが例の「Helpless」への回答っぽいところにもミエミエなんでしょうが、この頃から急激に支持を伸ばし始めたニール・ヤングとは対照的に落ち込んでいくスティーヴン・スティルスの存在感を思えば、複雑な心境は拭いきれません。

今日の歴史では、生涯現役ロッカーの如きニール・ヤングが孤独の旅路を貫きとおし、スティーヴン・スティルスは既に過去の人かもしれません。CSN&Yという、各実に時代を作ったグループの中では、常にマイペースでも忘れられていないクロスビー&ナッシュという名コンビの愛され方からしても、それはあまりにも哀しいものがあります。

ご存じのとおり、スティーヴン・スティルスは、もうひとつのソロアルバムを作った後の1973年、マナサスという自分のバンドを結成! 起死回生の2枚組アルバムを出すのですが、以降はまたしても尻つぼみ……。

しかしスティーヴン・スティルスこそ、バッファロー・スプリングフィールドであり、CSN&Yであった、その音楽性の芯の強さは忘れてはならないでしょう。

フォークもラテンもソウルもロックもゴッタ煮の美食主義♪♪~♪

変則チューニングのアコースティックギターと灼熱のエレキギターという使い分けも、本当に上手くて憎たらしい!

ですから、この最初のソロアルバムが何時までも聴き継がれているのだと思いますし、その期待を裏切らない密度の濃さと全てが自作の楽曲の充実は、これぞっ、1970年代ロック!

リアルタイムから洋楽マスコミも大絶賛でしたが、私も本日は断言させていただきます。

コメント
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