OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

幻のエル・ソタノ

2010-08-15 16:38:58 | 歌謡曲

忘れるさ忘れるさ c/w 北国のアカシア / エル・ソタノ (ビクター)

長年欲しかったブツが入手出来た時の喜びは、あらゆる蒐集家に共通するものでしょうが、反面、もしかしたら非情な理由でコレクションを手放したのかもしれない前の持ち主の心情を勘案すれば、なかなかハードボイルドな世界でもあります。

実は昨日、手元に届いた本日ご紹介のシングル盤も、そうした中のひとつだと思わざるをえない事情が、前の持ち主の素性や生き様を知っているだけに痛感されるのです。

もちろん、それを詮索したり、書くことが出来ないのは当然なんですが、それにしても……、という思いを打ち消せないのがサイケおやじの本音と予めお断りして、ご紹介を続けたいと思います。

さて、エル・ソタノはジャケ写からも一目瞭然、男女混成の6人組で、松本京子(vo)、司三千緒(vo)、竜崎孝路(vo,p)、渡辺賢介(b)、松浦義男(ds)、ベビー藤田(per) という顔ぶれで赤坂のクラブ「エル・ソタノ」に出演中のところをビクターのデレクターに発見され、このデビューシングル盤を出したという経歴になっています。

それは昭和44(1969)年10月の事でしたが、結果的には全くヒットしていません。

ところが楽曲の仕上がりレベルは両面ともに素晴らしく、歌謡曲愛好者の間では何時しか幻の名盤のひとつになっていました。

しかもメンバーだった竜崎孝路が後に作編曲家として大活躍したこともあり、また楽曲を書いたのが水木順子の変名を用いていた荒木一郎という真相が明らかになったのですから、さもありなん!

まずA面の「忘れるさ忘れるさ」は、ニール・セダカの「悲しき慕情」を歌謡フォークに焼き直したような趣が潔い編曲で演じられ、爽やかな女性ボーカルと微細な演歌フィーリングが隠しようもない男性ボーカルのコラポレーションが、そのコーラス&ハーモニーワーク共々、なかなかお洒落です。

ただし昭和44(1969)年の我国大衆音楽界からすれば、それはあまりにもスマート過ぎたでしょう。ストレートにウケなかったのも、納得する他はありません。

しかしB面の「北国のアカシア」は、ムード歌謡路線でありながら、実にイカシたラテンロックの隠し味が冴えまくり♪♪~♪ もちろん曲メロは荒木一郎ならではの洋楽テイストが、なかなか上手い具合に下世話化された傑作ですよ。

また近藤進のアレンジが、これまた秀逸で、特に中間分のバロック風コーラス&スキャットの使い方と昭和歌謡曲がど真ん中のメロディフェイク、さらにオーケストラやパーカッションの存在感がイヤミになっていないあたりも、感服するばかりです。

既に述べましたが、このシングル盤の両面は水木順子名義で荒木一郎の作詞作曲、そしてアレンジが近藤進という制作になっていますが、出来としては圧倒的にB面がサイケおやじの好みです。

また肝心のエル・ソタノは流石、ハコバン出身ということで、なかなか柔軟にしてツボを外さない歌と演奏は相当の実力を持っていたはずで、残念ながら実演ライプやテレビ出演には接したことがありませんが、かなり上手いグループだったと思います。

ちなみにジャケ写が神宮前のビクタースタジオを背景にしているのは、如何にもレコーディングの合間の撮影という事情か、いや、もしかしたら、そのスタジオそのものが当時竣工されたばかりだったという経緯があったのかもしれませんね。

つまり会社側としては、相当に力が入っていたレコードだったのかも……?

今となっては、既に述べたように竜崎孝路と荒木一郎の関連アイテムとしての価値が優先していますが、もしもこれがAB面逆だったら?

と想像を膨らませれば、おそらくヒットしていたんじゃないでしょうか。

ということで、こういう素敵なレコードが、まだまだどっさり存在しているのが、昭和歌謡曲の世界です。特に昭和40年代は何を聴いても最高ですねぇ~♪

結局、サイケおやじは何時までもオールドウェイヴから脱することが出来ないのです。

コメント (5)
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