あ~ぁ、これからくだらない宴会に出なきゃならんのかと思うと、気が滅入ってきます。また適当に場を繕って作り笑いか……。本音を言えたら、どんなに気分が晴れるだろう……。なんて我侭モードに入っています。
まあ、実際には出来ないんですけどね。
ということで、本日は――
■Jazz At Hotchkiss / George Wallington (Savoy)
ジョージ・ウォーリントンは白人ながら、黒人のアングラ音楽だったモダンジャズ創成に初期の頃から関わっていたピアニストです。
そのスタイルはバド・パウエルと共通する部分はもちろんあるのですが、強烈なスイング感よりは、ちょいと気弱なフィーリングでしょうか……。個人的にはそれほど魅力的なフレーズやグルーヴがあるとは思いません。
ところがそれでも、なにかしらジャズ者を惹きつけるところが、ジョージ・ウォーリントンには確かにあります。そういう私でさえ、実はジョージ・ウォーリントンのアルバムは、ほとんど全部、揃えているほどです。
さて、このアルバムはジョージ・ウォーリントンが全盛期のキャリア末期に吹き込んだセッションを収めています。録音は1957年11月14日、メンバーはドナルド・バード(tp)、フィル・ウッズ(as)、ジョージ・ウォーリントン(p)、ノビー・トータ(b)、ニック・スタビュラス(ds) という、恐らく当時のレギュラーバンドかと思われます――
A-1 Dance Of The Infidels / 異教徒の踊り
バド・パウエルとファッツ・ナバロが共作したビバップの聖典ともいうべき名曲・名演に敢然と挑戦したところに、まずは拍手喝采です。しかし結果は……。
というあたりが、如何にもジョージ・ウォーリントンらしい演奏になっているんですねぇ。
もちろんイントロからテーマの合奏はオリジナルどおりに景気良く、フィル・ウッズの燃えるアルトサックスや烈しく突っこむドナルド・バードの溌剌としたトランペットは大いに魅力です。
しかしリズム隊が要所で妙なストップタイムや煮え切らないアクセントを入れてくるのが??? せっかくの強烈なスイング感に水が差されるような雰囲気です……。
ところがジョージ・ウォーリントンのアドリブパートになると、それがあっても尚、ストレートな4ビートになりますから、爽快です。もちろんジョード・ウォーリントンのビアノにはバド・パウエルや他の黒人ピアニストのようなアクの強いグルーヴがありませんから、こうした仕掛けがなければ輝きが無かったという、意地悪な解釈も出来るのですが……。
本音はビンビンにストレート勝負して欲しかったです。
A-2 Strange Music
リズム隊だけの、つまりビアノトリオの演奏で、これが不思議な名演になっています。テーマメロディにも、どこかで聞いたような懐かしさがあって和みますね。
ジョージ・ウォーリントンのピアノはスイング感がブツ切れ状態というか、自然体のグルーヴが続かない怨みがあって、しかしニック・スタビュラスのキツイお仕置きのようなドラミングが効いていますから、妙に惹きつけられます。
ズバリ、所々にキラリと輝くフレーズとノリがあるんですねぇ~♪ 私はそこにジョージ・ウォーリントンの魅力を感じます。
つまり些かトホホのアドリブが、いったいこの先……、と思わせてパッと輝く部分が飛び出し、またまた萎んでいくという繰り返しが、判官贔屓の楽しみになっているのでした。
いや、屁理屈じゃなくて! けっこう強いビートの変態名演じゃないでしょうか?
A-3 Before Down
ジョージ・ウォーリントンが書いた哀愁の名曲! スローな展開からじっくりとテーマメロディを歌いあげていくドナルド・バードが、実に良い感じですし、途中のサビからアドリブに入っていくフィル・ウッズの泣き濡れた表現も素敵です。
またジョージ・ウォーリントンの、ちょっと情けないようなアドリブも非常に魅力的で、ホーン陣のラストテーマ吹奏に上手く繋がっているのでした。名演だと思います。
B-1 OW
ノビー・トータのベースを中心に展開されるハードバップで、作曲はディジー・ガレスピーとなっていますが、如何にもの名演です。
ジョージ・ウォーリントンのアドリブは落ち着き優先モードながら、やはり随所にキラリと光る部分を聞き分ける労力がリスナーの楽しみになっています。
しかしドナルド・バードとフィル・ウッズは直球勝負の大ハッスル! 荒っぽいほどにツッコミを入れるドナルド・バードに対し、決してボケないフィル・ウッズは強烈な存在感を示します。もちろん両者ともに歌心は最高♪
ただし、ちょいと遠慮気味のニック・スタビュラスが……。
B-2 `S Make`T
オーラスはドナルド・バードのオリジナルというハードバップ大会! いきなり烈しいニック・スタビュラスのドラムスに煽られて合奏されるテーマからフィル・ウッズが抜け出していくところは、何度聞いてもゾクゾクしてきます。
もちろんアドリブパートではドナルド・バードが薬籠中の名演ですし、お約束のキメを入れながら迷い道のリズム隊を引っ張るあたりは素晴らしいですねぇ~♪
またジョージ・ウォーリントンが相変わらずの煮え切らなさですが、ドラムスとベースの大技・小技に助けられ、独自のグルーヴを作っていくあたりは、ハードバップ全盛期だけに許される我侭かと思います。
ということで、例によって決して名盤ではありません。むしろこれだけのメンバーが集っていながら、些か肩すかしのような部分も目立ちます。
しかしそれでもこれが私にとって魅力盤なのは、ジョージ・ウォーリントンの不思議な存在感です。失礼ながら他のピアニストが、こんな気抜けのビールみたいな演奏をしたら、完全にイモ扱いでしょう。ウイントン・ケリーやレッド・ガーランドあたりが好きな人からは、呆れられるに違いないほどのトホホ感があるのです。
それでもこういうセッションが商業的に発売されたところに、ジャズの魔力があるんじゃなかろうか? 実際私は虜になっているのですし、ジョージ・ウォーリントン万歳です。