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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

イイ雰囲気の1枚

2007-10-21 16:28:45 | Weblog

午前中は忙しく、午後は嬉しくも暇が出来たという、本当の休日でした。それにしても、なんだか寒くなりましたね。この間までの蝉の声が虫の声に変わったことに気がつきました。

ということで、本日は心温まるアルバムを――

■Cliff Jordan (Blue Note)

これはジャズに限りませんが、雰囲気が好き! というアルバムは確かにあると思います。

で、私にとっては、これがそうした1枚♪

リーダーはクリフ・ジョーダンという黒人テナーサックス奏者とされていますが、ジャケットには参加したメンバーの名前を列記され、アルバムタイトルが特に付けられていないあたりも、意味深!

録音は1957年6月2日、メンバーはリー・モーガン(tp)、ジョン・ジェンキンス(as)、クリフ・ジョーダン(ts)、カーティス・フラー(tb)、レイ・ブライアント(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という味わい深い面々です。そして演奏はジャムセッション色が濃く、しかし一種独特の雰囲気があって、そこに私は惹かれるのですが、それはホノボノとしてブルーなムード♪ 決してゴリゴリでもギンギンでもないハードバップが楽しめます――

A-1 Not Guilty
 クリフ・ジョーダンのオリジナルで、このホノボノとした雰囲気のテーマメロディと合奏が、たまらなく良い感じ♪ ミディアムテンポで、ちょっとユルいノリがクセになります。
 クリフ・ジョーダンのテナーサックスは、決して超一流ではありませんが、捨てがたい味わいがあって、この曲のアドリブにはリラックスした魅力がいっぱいです。グレーな音色と滑らかなフレーズに和みます。
 そして続くカーティス・フラーが、そよ風のような、これもリラックスムード♪ 持ち味のハスキーな音色がほど良く馴染んでいます。強力なリズム隊との相性も絶妙でしょうか。
 さらにジャッキー・マクリーンにクリソツなジョン・ジェンキンスのアルトサックスも憎めません。チャーリー・パーカー直系というよりも、モロにコピーしたフレーズの連発が、逆に潔いところです。
 それとレイ・ブライアントが、やっぱり魅力的♪ 力強いピアノタッチと小粋なスイング感にグッときます。背後で淡々と4ビートをウォーキングするポール・チェンバースも流石の存在感で、もちろんアドリブも抜かりありません。

A-2 St. John
 ジョン・ジェンキスが書いた幾何学的なハードバップ曲ながら、このメンツならではの迫力と和み感の両立が素晴らしい演奏です。
 アドリブの先発はジョン・ジェンキンスが立派にパーカーフレーズを蘇えらせれば、カーティス・フラーはハスキー節に加えて、烈しいツッコミを聞かせてくれますが、やや燻り気味……。
 しかし次に登場するリー・モーガンが若さ溢れるブリリアントなアドリブで場を圧倒します! あぁ、この時、モーガン若干18歳! まさに天才と言う他ありません。
 ですから、続くクリフ・ジョーダンが、またまた燻り感覚を増幅させてしまいますが、この人にそれが似合っているというか、独特のグレーなトーンで吹かれるアドリブには、妙に気持ちが揺れ動いてしまうのでした。

B-1 Blue Shoes
 カーティス・フラーが書いたファンキーな隠れ名曲! 全体に横溢するブルーな雰囲気はタイトルに偽りなしで、もちろんアドリブ先発のカーティス・フラーは大名演を聞かせてくれます。ガッチリ録音されたアート・ティラーのシンバルとスネアのコンビネーションも、グルーヴィなグイノリが最高です。
 そしてクリフ・ジョーダンが絶妙な「泣き」を入れた、これまた絶好調のアドリブを聞かせてくれるんですねぇ~♪ すると続け泣き出すのが、ジョン・ジェンキンスというわけです。
 あぁ、これぞジャズの醍醐味! 決して歴史的に云々される演奏ではありませんが、こういう味わいは、一度虜になると抜け出すのに苦労します。
 まあ、なにもワザワザ苦労することもないわけですが、ポール・チェンバースのベースソロからレイ・ブライアントのピアノに入っていくアドリブの受渡しにしても、モダンジャズ全盛期の自然体が最高という仕上がりだと思います。

B-2 Beyond The Blue Horizon
 些か迷い道のイントロはレイ・ブライアントの悪いクセかもしれませんが、軽快なテンポでテーマを吹奏し、そのままアドリブに傾れ込んでいくクリフ・ジョーダンの快調さが全てという演奏です。
 安定したアップテンポの4ビートを提供するリズム隊には、当たり前の凄さがあり、続けて登場するリー・モーガンには呆れるほどの輝きがありますから、これが当時の勢いなのでしょう。逆にリズム隊が引っ張られてしまうところも、笑えません。
 そしてカーティス・フラーが必死の熱演! かなり速いフレーズを連発しているあたりも珍しく、しかし悠々自適なノリを忘れられていません。
 そして、さらに熱いのがジョン・ジェンキンス! ジャッキー・マクリーンよりも、もっとチャーリー・パーカーに傾いた演奏は素直で好感が持てます。
 終盤でのアート・テイラーはブチキレ寸前♪

B-3 Ju-Bu
 オーラスはリー・モーガンが書いたファンキーな名曲・名演です。ミュートでテーマからアドリブに入っていくトランペットの輝きには、本当にグッときます。ミディアムテンポのグルーヴィな雰囲気を作り出すリズム隊も素晴らしいですねぇ~♪
 するとクリフ・ジョーダンが気合の入ったテナーサックスで、異様とも思える低音域のサブトーンを披露してくれます。もう音が歪んでいるほどなんですが、それゆえに私は大好き♪ これが聴きたくて、この盤を取り出すのが私の真相です。

ということで、特にB面を愛聴しています。

ちなみにオリジナルのカタログ番号は「1565」ですが、誰も同じ様な立場のハンク・モブレー盤「1568」ほどにチヤホヤしていませんね。まあ、それもムベなるかな……。

しかし雰囲気の良さは捨てがたいです。ジャズ喫茶でリクエストするならB面をオススメ致します。

コメント (4)
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名盤聴いて、すっきりしたい

2007-10-20 16:09:42 | Weblog

わからん事を言う奴が、この世には確かにいるんですが、相手にしないのが一番とは思いつつ、どうしても気になってしまうのが、私のイケナイところです。

そんな奴を凹ましても、どうにもならないんですけどねぇ。

ということで、本日は名盤です――

Eclypso / Tommy Flanagan (enja)

1970年代ジャズの主流はフュージョンでした。これは否定出来ないところだと思います。

しかし、だからこそ、その中で輝いてしまった正統派4ビート盤もありました。例えばこのアルバムあたりは、その代表じゃないでしょうか。

録音は1977年2月4日という説が有力ですが、これはちょっとあやふやとされていて、我国に入荷したのは同年末頃だったと思います。メンバーはトミー・フラナガン(p)、ジョージ・ムラーツ(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という、もしかして!? というトリオです。

もちろんここで「もしかして!?」と書いたのは、トミフラ&エルビンと言えば、言わずもがなの「オーバーシーズ」という名盤連想があるからです。

そして実際、このアルバムでも演目に「それ」が入っているのですから、たまりません♪ しかも真正面からガチンコをやっていたのです――

A-1 Oleo
 ソニー・ロリンズ(ts) が書いたハードバップの代表曲で、それ以前のビバップ色が大切にされた幾何学的なテーマメロディがモダンジャズそのものという定番です。
 ここでの演奏はトミー・フラナガンの歯切れの良いピアノとエルビン・ジョーンズの気持ちの良いブラシ、そして基本に忠実なジョージ・ムラーツのベースが三位一体となった爽快なテーマのアンサンブルが、まず見事です。ビートの芯が実にしっかりと感じられます。
 それはアドリブパートでも変わりなく、否、ますます豪快なアップテンポのハードバップが展開されていくのです。
 リアルタイムでは、あぁ、この1曲で、このアルバムは間違いない! と感動するほどでした。特にエルビン・ジョーンズの凄まドラムソロはブラシとバスドラのコンビネーションが最高です♪

A-2 Denzil's Best
 これが必ずやジャズ者の琴線に触れてしまう、「泣き」が入った名曲です。まずトミー・フラナガンが絶妙のイントロ♪ 続くテーマメロディはジョージ・ムラーツがリードしますが、このちょっと音程がアヤシイとろが、逆にグッとくる魔法になっています。
 そして流れるようにアドリブに入ってくトミー・フラナガンの背後では、エルビン・ジョーンズが恐いドラミング! その隙間を埋めていくジョージ・ムラーツのベースワークも良い感じです。
 う~ん、それにしてもトミー・フラナガンは良いアドリブメロディしか弾きませんねぇ、このセッションでは! 特にこの曲なんか、とても即興とは思えない美メロが出まくっています。
 その流れを断ち切らないジョージ・ムラーツのベースソロも楽しく、快適なグルーヴをポリリズムで敲き出すエルビン・ジョーズは、もはや自分で楽しんでいる境地なんでしょうか♪
 ジャズが好きで良かった♪ と心底、思えてくるのでした。

A-3 A Blue Time
 ゆったりしたテンポの演奏なんですが、これまた実に良い雰囲気が存分に味わえる名曲・名演になっています。作曲はタッド・ダメロン♪
 ですからその繊細な曲調を表現していくトミー・フラナガンの妙技が冴えまくり♪ もう、なんでこんなに良いメロディが! という瞬間ばっかりです。
 そして見事に絡んで隙間を埋めるジョージ・ムラーツの感性も素晴らしいと思いますねぇ~。ほとんどベース中心に聴いても楽しめる演奏で、そうなるとエルビン・ジョーンズのシブイ部分にも感じ入ってしまうのです。
 冒頭からここまでの3連発で、私は完全降伏♪

A-4 Relaxin' At Camarillo
 と至福の一時に浸っていれば、A面の〆が例の「オーバーシーズ」からの再演ですから、ニクイ構成です。
 もちろんここでも凄い快演で、初っ端からテンションの高いトリオ全体のノリが強烈です。特にトミー・フラナガンの力感溢れるピアノスタイルは、老いて益々盛ん! 無闇に激してはいないものの、グッと意気地を見せた任侠の世界だと思います。
 しかしジョージ・ムラーツのベースソロが烈しく燃え、エルビン・ジョーンズは唸りも芸の内という、白熱のブラシを炸裂させます。バスドラとのコンビネーションも烈しいですねぇ~~~! 最高です♪

B-1 Cup Bearers
 モダンジャズの隠れ名曲をいろいろと書いているトム・マッキントッシュの、これもそのひとつです。なんとも優雅な雰囲気なテーマメロディが、この強力トリオによって痛快なハードバップになっているあたりが、最高ですねぇ~~♪
 トミー・フラナガンのアドリブからは、ジョン・コルトレーンと共演した、あの「ジャイアント・ステップス(Atrantic)」と同じ覇気が感じられますし、コルトレーンと言えばエルビン・ジョーンズの爆発的なドラミングが、ここでも豪放に暴れています。

B-2 Eclypso
 これまた「オーバーシーズ」からの再演ながら、トミー・フラナガンの気合は些かも劣っていません。それどころかジョージ・ムラーツの参加が1970年代型のグルーヴに繋がったようで、エルビン・ジョーンズも大ハッスル! かなりヘヴィなラテンビートを叩いています。
 もちろんアドリブパートではトリオ全員がグルーヴィな4ビートに意思統一! トミー・フラナガンの歌心も全開ならば、ジョージ・ムラーツのウォーキングベースも痛快です。そしてエルビン・ジョーンズ! あんたは何時だって、凄いぜっ!

B-3 Confiramtion
 オーラスは正統派ビバップに敢然と挑戦! これは当時全盛だったフュージョンへ対抗意識がミエミエという、当にこのアルバムの締め括りには相応しい演目でしょう。
 そして演奏は全くの正統派4ビートで、奇を衒ったようなところは微塵もありません。

ということで、これはその頃、ジャズ喫茶で大きな顔をしていたチック・コリアやハービー・ハンコックあたりの電気系キーボート奏者を真っ青にさせるほど、連日連夜の鳴りまくりでした♪

正直に言えば、トミー・フラナガンの当時のイメージは「歌伴の人」とか、「昔の名前で出ています」でした。それがこのアルバムによって完全復活どころか、前にも増して人気ピアニストになったようです。

やや荒っぽい部分がある演奏が、それまでの繊細なイメージを覆したのかもしれませんし、なによりも16ビートが当たり前の世界に4ビートの良さを復権させた功績は流石だと思います。

何時聴いても、惹きつけられる名盤だと思います。

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熱くて黒いライブ盤

2007-10-19 16:23:33 | Weblog

我国の政治やスポーツの混乱、祝勝、子供が犠牲になる陰惨な事件、食品安全のデタラメさ……。さらに某国でのテロ事件とか、世の中は落ち着きませんが、私的には平和な1日でした。

この豚汁は甘いなぁ、なんて言っていられる自分は、あぁ、この幸せを大切にしなければ!

と決意表明して、本日は――

Up At Minton's Vol.1 / Satnley Turrentine (Blue Note)

1960年代ブルーノートのイチオシだったのが、スタンリー・タレンタインだと思います。

もちろん同レーベルにはルー・ドナルドソン(as) やジミー・スミス(org) といった大衆路線のスタアも居ましたし、正統派としてはアート・ブレイキーのジャズメッセンジャーズやホレス・シルバー、ドナルド・バード(tp) やハンク・モブレー(ts) 、さらにはリー・モーガン(tp) というガチンコにも強い猛者を揃えていました。

しかし時代の流れは大衆路線に傾いていましたし、それはモードやフリーが主流となっていた自己満足的本格派モダンジャズへの反撥だったと……。

ですからビジネス面での成功は、よりソウルフルで大衆受けする演奏が求められていたようです。実際、ジョン・コルトレーンのレコード売上げは、リアルタイムで悲惨なものだったと言われています。

で、そこに登場したのが、スタンリー・タレンタインという実力派のテナーサックス奏者でしたから、この逸材を各レコード会社が逃すはずはありません。最初はマックス・ローチ(ds) のバンドで注目され、1950年代末から他社でレコーディングも行っていますが、それをガッチリ囲い込んで契約してしまったブルーノートすれば、思わずニンマリだったでしょう。

そして直後から幾多の録音セッションを行い、ついに初期の代表作と言われるアルバムとなったのが、本日の1枚です。

録音は1961年2月23日、メンバーはスタンリー・タレンタイン(ts)、グラント・グリーン(g)、ホレス・パーラン(p)、ジョージ・タッカー(b)、アル・ヘアウッド(ds) という濃~い面々! しかも小さなジャズスポットでのライブ盤ですから、熱さと黒さは保証付きです。

ちなみにホレス・パーラン以下のピアノトリオは、当時、実際のレギュラーユニットとして活動しており、このセッションの直前にも、例えばブッカー・アーヴィン(ts) の決定的名盤「ザッツ・イット!(Candid)」で豪快なサポートを繰り広げておりました。また必殺の名盤「アス・スリー(Blue Note)」も忘れられませんね♪

そしてご存知、グラント・グリーンもブルーノートが同時期に売り出しを図っていた新進スタアですから、ある種の意志の統一がなされていたというか、平たく言えば、纏まりは最高です――

A-1 But Not For Me
 まずは有名歌物スタンダードが軽快に演奏されますが、それはテーマ部分だけのことで、アドリブに入るとグイグイ盛り上がるバンドの勢いが強烈です。
 始る前にワイワイガヤガヤと入っている店のざわめきも抜群のスパイスですねぇ。
 そこでスタンリー・タレンタインはアップテンポで飛ばしますが、基本のスタイルはあくまでも正統派! ヒステリックな叫びやスケール練習のようなフレーズは出さず、自信満々の歌心で直球勝負の潔さです。このあたりはデクスター・ゴードンとハンク・モブレーの折衷というところから、より黒い表現を主体にしているところが、実に魅力的♪ もはや「タレンタイン節」と呼んで差し支えない素晴らしさだと思います。
 またグラント・グリーンが強烈です。控えめなバッキングから待ってましたのアドリブパートでは、十八番の単音弾きでシャープなフレーズを連発してくれます。時折入れるチョーキングも嫌味になっていませんねっ♪
 それと重量感に満ちたリズム隊の素晴らしさ! 安定感とグイノリが良い塩梅の伴奏に加えて、ホレス・パーランの執拗なフレーズが冴えるアドリブが、全く熱いです。
 正直言えば、音がイマイチ悪く、ステレオバージョンでも音が団子状態のところもあるんですが、それがこのリズム隊には相性バッチリ! 時として歪む音の壁がハードバップの醍醐味に繋がっているのでした。

A-2 Satnley's Time
 タイトルどおり、スタンリー・タレンタインが書いたマイナー調のブルース♪ とくれば、もう快演はお約束です。たっぷりしたグルーヴが発散されるテーマメロディの演奏から、流れるようにアドリブに入るグラント・グリーンの雰囲気の良さは、ハードバップ最良の瞬間でしょう♪ 合の手気味の伴奏が心地良いホレス・パーランも流石の存在感です。
 ところが惜しいとこに、スタンリー・タレンタインへのアドリブの受渡しで、若干のミスがあったような……。否、これはテープ編集か?
 まあ、それはそれとして、スタンリー・タレンタインは躊躇しない大好演ですからねぇ~♪ タメが効いた黒いノリと激したフレーズの組み合わせという妙技が存分に楽しめます。テナーサックスそのものの音色も魅力的ですねぇ~~~♪
 そして野太いベースソロを聞かせるのがジョージ・タッカーです。単純に聞けばチャールズ・ミンガスのようでもあり、しかし微妙に屈折した感覚は独特の味わいがあって、私は大好きです。
 またホレス・パーランも手に障害があることを逆手に取った個性派で、ここでの混濁したゴスペル感覚は中毒になりそう!

B-1 Broadway
 これも有名スタンダード曲ながら、ジャズの世界では景気良くアップテンポで演奏されるのが「お約束」ということで、このバージョンも黒い熱演になっています。
 まずテナーサックスとギターのユニゾンで奏でられるテーマメロディの楽しさ♪ 続けてハキハキとしたアドリブを聞かせてくれるグラント・グリーンの素晴らしさ! 中盤では十八番の針飛びフレーズが出ますから、もう辛抱たまらん状態です。
 そして我慢出来ずに乱入してくるスタンリー・タレンタインには、恐いもの知らずの勢いがあって、思わず「イェ~!」の世界です。
 テンションの高いリズム隊からも熱気がムンムンしてきますから、これぞ名演♪ 特にホレス・パーランのピアノには歪んだ音が混じり、しかも中盤からは執拗に同じフレーズを積み重ねるという、あの「Us Three」と同じノリが出ますから、ここで悶絶するのがジャズ者の正しい姿勢じゃないでしょうか!? 心底、凄いです!

B-2 Yesterdays
 アルバムの締めは、しっとり系のスタンダード曲なんですが、このメンツですからタダでは済みません。ミディアムテンポのグルーヴィなノリは黒っぽさが満点です。
 悠々自適にテーマメロディを吹奏し、グッと情感を込めたアドリブを披露するスタンリー・タレンタインは圧倒的! 逆に小粋な雰囲気を漂わせるグラント・グリーンは、正統派ジャズギタリストの片鱗というか、これが本性と思いたい名演を聞かせてくれます。
 それと背後で暴れるホレス・パーランのゴスペルっぽい伴奏も秀逸ですし、アドリブパートでは意外にも新主流派のような展開もあったりして、油断なりませんねっ♪

ということで、ハードバップの醍醐味に満ちた名盤だと思います。今日の印象では、コテコテのライブ盤と期待されがちですが、中身は正統派4ビート! それゆえに片すかしを感じるファンも……。

ちなみにテナーサックスのワンホーンカルテットにギターを加えたセッションとしては、同じくグラント・グリーンが入ったハンク・モブレーの「ワークアウト(Blue Note)」が歴史的な裏名盤となっていますが、それはこの録音から1ヵ月後の事! 恐らくここでの成功から柳の下を狙ったというのは、穿ち過ぎでしょうか……?

それほどに、このライブは素晴らしいと思います。そして続篇の「Vol.2」には、しっとり系の演奏が収められていますので、合わせて聴くと完全に虜になりますよ♪

実際、私は中毒で、う~ん、ガンガン・ドロドロに迫ってくるリズム隊が恐いです。

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一番カッコ良かったヒノテル

2007-10-18 17:12:48 | Weblog

あまり言いたくないけど、亀田親子の潔くない態度は美しくないです。ああいうのを見せられると不愉快だし、もう謝罪はないのかと思いきや、突然、相手方に謝りにいってみたり……。

ということで、本日は潔いこれを――

Hi-Nology / 日野晧正 (Takt / 日本コロムビア)

日野晧正が一番カッコ良かった時代のアルバムですが、それにしても「日野学説」とは大きく出た作品タイトルですねぇ。

しかしこれが発売された当時、つまり昭和44(1969)年頃の日野晧正は、若者向けの雑誌とか放送メディアでは絶大な存在感でした。それは音楽面だけでなくファッションとかライフスタイルにまで影響を及ぼしていたのです。当に人気絶頂!

そして肝心の音楽性は、その頃の新しい流れであったジャズロックやエレクトリックサイケを躊躇する事無く取り込んだ斬新なモダンジャズ!

まあ、正直に言えば、当時のマイルス・デイビスを後追いしたものですが、それを自ら率いた新編成のクインテットで追及したところに潔さが感じられます。なにしろアルバム初っ端の曲タイトルが「Like Miles」ですからねぇ~♪

録音は1969年7月31日、メンバーは日野晧正(tp)、村岡建(ts)、鈴木宏昌(key)、稲葉国光(el-b)、日野元彦(ds) という伝説的な5人組! 演目も全てオリジナルで固めています。

A-1 Like Miles
 いきなりタイトルどおり、マイルス・デイビスの問題作「マイルス・イン・ザ・スカイ(Columbia)」のド頭に入っていた「Stuff」をパクッたような演奏ですが、曲タイトル故に憎めません。
 ここでも淡々とした8ビートとエレピの響きが心地良く、もちろんテーマメロディはモロにマイルスしています。
 ところが日野元彦のドラムスが我慢出来ない雰囲気で激していくんですねぇ~。若さ溢れるというか、ちょっと録音の按配で音が軽い感じなんですが、黙々とリフ中心にグルーヴを作りだす稲葉国光のエレキベースや鈴木宏昌の味なエレピとは、相性がバッチリです。
 そして日野晧正のトランペットが、どーしてもマイルス・デイビスしてしまいますが、続く村岡建のテナーサックスが電気的なエコーも感じられる好演です。もちろんそこにはウェイン・ショーターやジョー・ヘンダーソンの影響が大きいわけですが、それでも充分に個性的で熱くさせられるのでした。
 それと実は主役という鈴木宏昌のエレピが、本当に最高です♪
 
A-2 Electric Zoo
 いきなり日野元彦のドカドカ煩いドラミング! そして痛快なテーマが出てくるところで、参っちゃいますねっ、私は!
 一応、擬似4ビートのロック的な展開もあって、アドリブパート先発は村岡建の熱いテナーサックスです。さり気なくフリーな部分も聞かせていくあたりもニクイです。
 そして日野晧正は、そのフリーなところから絡んできて、これまた熱いバンド間のインタープレイ! 渾身の吹きまくりは、真似っこだなんて言えないところが、確かにあります。
 また鈴木宏昌以下のリズム隊が真摯な演奏です。フリー主体とはいえ、けっこう幻想的で分かり易いところは好感が持てますし、自然体で4ビートに持っていくあたりのイナタイ良さには、シビレます。
 クライマックスで炸裂する日野元彦のドラムソロもシャープ!

B-1 Hi-Nology
 アルバムタイトル曲は、新主流派にどっぷりという雰囲気モードです。ミディアムテンポの勿体ぶったところから激烈な8ビートに突っ込んでいくテーマ合奏のカッコ良さ!
 そしてアドリブパートはアフロロックみたいなビートに彩られ、日野晧正が慎重に歩みを進めていきます。あぁ、ここは当に1960年代末の雰囲気が存分に味わえますねぇ。ビリビリと蠢くエレキベースに浮遊感のあるエレピの響き……♪ 日野晧正のアドリブも素晴らしく、とても冷静には聞いていられず、グッと惹き込まれてしまいます。
 さらに村岡建のテナーサックスがズブズブのモード節に加えて、巧みなファンキーフィーリングを入れていますから、たまりません。高音域のヒステリックなフレーズが、猛烈な快感を呼び覚まします。ちなみに背後で叩かれるタンバリン(?)は日野晧正でしょうか? あぁ、熱くなります!
 すると鈴木宏昌のエレピが、スウゥ~とクールダウンさせてくれるんですねぇ~♪ とはいえ、まだまだ熱い日野元彦のドラミングがっ! もう、ど~しようもねぇですだぁ~♪ 熱いっ!
 実際、凄い名演だと思うのは、私だけでしょうか……!?

B-2 Dupe
 オーラスは正調8ビートに被ってエレクリックなキーボードがジワジワと迫り、稲葉国光のエレキベースが地を這い回ります。
 そしてグィッと始る威勢の良いテーマ! 如何にも1969年っぽい演奏になっていますねぇ~~~♪ 本当、カッコイイです!
 もちろんというか、日野晧正はマイルス・デイビスを痛切に意識したアドリブの雰囲気に終始しますが、そのトランペットの響きは明らかに別物で、熱演だと思います。
 そして途中からフリーフォームに絡んでくる村岡建のヤケッパチのテナーサックスが痛快です。当然演奏はフリーロックに発展♪ 日野元彦のドラミングが実に爽快ですし、稲葉国光のベースもエレキを感じさせない響きになっていきます。
 ラストテーマへの疾走感には、もはや悶絶しかありません。

というこのアルバムは、当時のジャズマスコミでも賞を受けたりしたようですが、反面、ジャズ喫茶に集うようなファンからは忌み嫌われたと言われています。

そこにはマスコミに持ち上げられ、普段はジャズを聞かないような女の子のファンも多かった人気スタアに対するヤッカミもあったかもしれません。そして自身のトレードマークだったレイバンのサングラスを上手くデザイン化したレコードジャケットも、カッコ良過ぎましたねぇ。

そんなところもあってか、日野晧正は翌年になるとバンドを解散して海外に行ってしまい、そこからしばらくは、単純にカッコ良いジャズを止めてしまいましたから、このアルバムの輝きが一層、眩しいのです。

ちなみにオリジナル盤は、当時としては音が良いとされていましたが、個人的には??? キーボードが引っ込んで部分的にはエレキベースと渾然一体になったような煮え切らなさを感じていました。

で、今、聴いているのは2年ほど前に出た紙ジャケット仕様の復刻CDで、リマスターが私の好みにジャストミート! 気になっていた楽器の混濁性も改善され、よりダイナミックな演奏が楽しめています。

そして嬉しいボーナストラックとして東宝映画「白昼の襲撃」からのサントラ音源が2曲入っています。

まず「Snake Hip」がストレートな8ビートのジャズロックで、アップテンポで疾走するバンドのノリが最高! 日野元彦のドラムスも弾けまくっていますし、日野晧正&村岡建のアドリブも分かり易い凄さに満ちています。

さらに「白昼の襲撃のテーマ」が、これまたカッコ良いです。衝動的なテーマメロディの素晴らしさ、日野元彦を要にしたリズム隊の躍動感がたまりませんねっ♪ メンバー各々のアドリブパートも凝っているようで実は素直なところがありますから、これも聞き易いです。

告白すれば、私はこの2曲が欲しくて、このCDを買ったのです。リアルタイムでは「ヤング720」とかのテレビ出演も多かったバンドですから、この曲も聞いていましたが、今更ながらにカッコイイ! と思うのでした。

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言い訳的愛聴盤

2007-10-17 16:12:01 | Weblog

あ~ぁ、これからくだらない宴会に出なきゃならんのかと思うと、気が滅入ってきます。また適当に場を繕って作り笑いか……。本音を言えたら、どんなに気分が晴れるだろう……。なんて我侭モードに入っています。

まあ、実際には出来ないんですけどね。

ということで、本日は――

Jazz At Hotchkiss / George Wallington (Savoy)

ジョージ・ウォーリントンは白人ながら、黒人のアングラ音楽だったモダンジャズ創成に初期の頃から関わっていたピアニストです。

そのスタイルはバド・パウエルと共通する部分はもちろんあるのですが、強烈なスイング感よりは、ちょいと気弱なフィーリングでしょうか……。個人的にはそれほど魅力的なフレーズやグルーヴがあるとは思いません。

ところがそれでも、なにかしらジャズ者を惹きつけるところが、ジョージ・ウォーリントンには確かにあります。そういう私でさえ、実はジョージ・ウォーリントンのアルバムは、ほとんど全部、揃えているほどです。

さて、このアルバムはジョージ・ウォーリントンが全盛期のキャリア末期に吹き込んだセッションを収めています。録音は1957年11月14日、メンバーはドナルド・バード(tp)、フィル・ウッズ(as)、ジョージ・ウォーリントン(p)、ノビー・トータ(b)、ニック・スタビュラス(ds) という、恐らく当時のレギュラーバンドかと思われます――

A-1 Dance Of The Infidels / 異教徒の踊り
 バド・パウエルとファッツ・ナバロが共作したビバップの聖典ともいうべき名曲・名演に敢然と挑戦したところに、まずは拍手喝采です。しかし結果は……。
 というあたりが、如何にもジョージ・ウォーリントンらしい演奏になっているんですねぇ。
 もちろんイントロからテーマの合奏はオリジナルどおりに景気良く、フィル・ウッズの燃えるアルトサックスや烈しく突っこむドナルド・バードの溌剌としたトランペットは大いに魅力です。
 しかしリズム隊が要所で妙なストップタイムや煮え切らないアクセントを入れてくるのが??? せっかくの強烈なスイング感に水が差されるような雰囲気です……。
 ところがジョージ・ウォーリントンのアドリブパートになると、それがあっても尚、ストレートな4ビートになりますから、爽快です。もちろんジョード・ウォーリントンのビアノにはバド・パウエルや他の黒人ピアニストのようなアクの強いグルーヴがありませんから、こうした仕掛けがなければ輝きが無かったという、意地悪な解釈も出来るのですが……。
 本音はビンビンにストレート勝負して欲しかったです。

A-2 Strange Music
 リズム隊だけの、つまりビアノトリオの演奏で、これが不思議な名演になっています。テーマメロディにも、どこかで聞いたような懐かしさがあって和みますね。
 ジョージ・ウォーリントンのピアノはスイング感がブツ切れ状態というか、自然体のグルーヴが続かない怨みがあって、しかしニック・スタビュラスのキツイお仕置きのようなドラミングが効いていますから、妙に惹きつけられます。
 ズバリ、所々にキラリと輝くフレーズとノリがあるんですねぇ~♪ 私はそこにジョージ・ウォーリントンの魅力を感じます。
 つまり些かトホホのアドリブが、いったいこの先……、と思わせてパッと輝く部分が飛び出し、またまた萎んでいくという繰り返しが、判官贔屓の楽しみになっているのでした。
 いや、屁理屈じゃなくて! けっこう強いビートの変態名演じゃないでしょうか?

A-3 Before Down
 ジョージ・ウォーリントンが書いた哀愁の名曲! スローな展開からじっくりとテーマメロディを歌いあげていくドナルド・バードが、実に良い感じですし、途中のサビからアドリブに入っていくフィル・ウッズの泣き濡れた表現も素敵です。
 またジョージ・ウォーリントンの、ちょっと情けないようなアドリブも非常に魅力的で、ホーン陣のラストテーマ吹奏に上手く繋がっているのでした。名演だと思います。

B-1 OW
 ノビー・トータのベースを中心に展開されるハードバップで、作曲はディジー・ガレスピーとなっていますが、如何にもの名演です。
 ジョージ・ウォーリントンのアドリブは落ち着き優先モードながら、やはり随所にキラリと光る部分を聞き分ける労力がリスナーの楽しみになっています。
 しかしドナルド・バードとフィル・ウッズは直球勝負の大ハッスル! 荒っぽいほどにツッコミを入れるドナルド・バードに対し、決してボケないフィル・ウッズは強烈な存在感を示します。もちろん両者ともに歌心は最高♪
 ただし、ちょいと遠慮気味のニック・スタビュラスが……。

B-2 `S Make`T
 オーラスはドナルド・バードのオリジナルというハードバップ大会! いきなり烈しいニック・スタビュラスのドラムスに煽られて合奏されるテーマからフィル・ウッズが抜け出していくところは、何度聞いてもゾクゾクしてきます。
 もちろんアドリブパートではドナルド・バードが薬籠中の名演ですし、お約束のキメを入れながら迷い道のリズム隊を引っ張るあたりは素晴らしいですねぇ~♪
 またジョージ・ウォーリントンが相変わらずの煮え切らなさですが、ドラムスとベースの大技・小技に助けられ、独自のグルーヴを作っていくあたりは、ハードバップ全盛期だけに許される我侭かと思います。

ということで、例によって決して名盤ではありません。むしろこれだけのメンバーが集っていながら、些か肩すかしのような部分も目立ちます。

しかしそれでもこれが私にとって魅力盤なのは、ジョージ・ウォーリントンの不思議な存在感です。失礼ながら他のピアニストが、こんな気抜けのビールみたいな演奏をしたら、完全にイモ扱いでしょう。ウイントン・ケリーやレッド・ガーランドあたりが好きな人からは、呆れられるに違いないほどのトホホ感があるのです。

それでもこういうセッションが商業的に発売されたところに、ジャズの魔力があるんじゃなかろうか? 実際私は虜になっているのですし、ジョージ・ウォーリントン万歳です。

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シカゴ系メロームード

2007-10-16 17:06:45 | Weblog

今日も仕事で腹の探り合いが続き、油断がなりません。

そこで和み系のビアノトリオを聴いてみました――

Dodo's Back ! / Dodo Marmarosa (Argo / Cadet)

今やすっかりジャズピアノトリオの人気定番となったアルバムですが、日本では1970年代にひっそりと発売され、ジワジワと愛聴されていった……、と思います。確か廉価盤だったような……。

とはいえ、その内容は一聴、忽ち虜になる素晴らしさで、特に全篇から滲み出る哀愁というか、泣き濡れた心情吐露と寂寥感にグッと引込まれてしまうのです。

選曲も地味ながら、実に琴線にふれまくりの素晴らしさ♪ 本当にシブイですねぇ~。

録音は1961年5月9~10日のシカゴ、メンバーはドド・マーマローサ(p)、リチャード・エバンス(b)、マーシャル・トンプソン(ds) となっています――

A-1 Mellow Mood
A-2 Cottage For Sale
A-3 April Played The Fiddle
A-4 Everything Happens To Me
A-5 On Green Dolphin Street
B-1 Why Do I Love You ?
B-2 I Thought About You
B-3 Me And My Shadow
B-4 Tracy's Blues
B-5 You Call It Madness

まずA面ド頭の「Mellow Mood」で泣いてしまいます。曲はドド・マーマローサのオリジナルで、ミディアムテンポでマイナー調のメロディが優雅な雰囲気で奏でられいく、その節々に抑えた「泣き」が滲んでいるのですから、心底、シビレます。

また続く「Cottage For Sale」も、ちょいと地味なスタンダード曲なんですが、スローテンポでじっくりと変奏されていくオリジナルメロディの妙♪ これも忍び泣きの名演だと思います。

そして3曲目の「April Played The Fiddle」こそ、ジャズの魔力が秘められた演奏で、割と速いテンポながら、ジンワリと効いてくる「泣き」のフレーズが、本当にたまらない名演♪

もう、この三連発で虜になってしまうのに、続けてお馴染みの人気曲「Everything Happens To Me」が演奏されるのですから、完全降伏! やや硬質なドド・マーマローサのピアノタッチが、ここではある種の寂寥感を際立たせているようです。

B面では「I Thought About You」が和みの名演ですが、シンプルなハードバップの「Tracy's Blues」も素晴らしいと思います。

ちなみにドド・マーマローサはビバップ時代に頭角を現し、そのハキハキしたノリと華麗なテクニックに支えられた演奏は、バド・パウエルとアル・ヘイグを繋ぐような立場みたいでしたが、残念ながら1950年代は悪いクスリの所為で第一線から消えています。

で、ようやくカムバックしたのが、タイトルどおりにこのアルバムというわけですが、1940年代とは明らかに違う雰囲気になっているのが味わい深いところです。

実は私は、このアルバムでドド・マーマローサの虜になり、残された演奏をいろいろと聴いてみたのですが、これ以前の録音は純正ビバップというエキセントリックなところが強く出た、ちょっと取っ付きにくいものでした。

しかし、それはそれなりに凄い演奏なんですよっ! むしろドド・マーマローサの真髄は1940年代にあるのかもしれません。

そしてまたまた残念なことに、ドド・マーマローサはこのアルバムを吹き込んで以降、消息が不明になったようです。う~ん、これだけの実力を持ったビアにストが安定して活動出来ないところに、本場の厳しさやジャズの魔力があるんでしょうか……。

また私有盤はレーベルが「Argo」なのにジャケットは「Cadet」という、妙なブツになっています。これは会社そのものが同系列なので、それほど問題にはならないかもしれませんし、中古で買ったので店側の事情があったのかもしれません。

ということで、聴くほどに味わい深い作品です。ドラムスとベースの共演者2人は、モダンジャズばかりではなく、地元シカゴではR&Bから映画音楽まで幅広く活躍していた実力者ですから、ここでのサポートも堅実で、気持ちが良いほどでした。

そういえば全篇に漂う雰囲気はシカゴソウルのような、ある種の都会的な湿りっ気が魅力になっているようです。

う~ん、味わい深いです。

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清々しい重量音

2007-10-15 16:07:10 | Weblog

つい、この前までは相撲協会が悪者扱いでしたが、今や亀田一家がその座を奪っていますね。

確かにあんな悪辣非道なことは、許されるはずもありません。

正直言えば、プロは反則も技の内だと思うのですが、あの堂々としたところは、その意味でプロ失格! 出来もしない「切腹」と言い出したあたりから、妙な勝負になると思っていましたが……。

やはり腰抜けの証明をやってしまった亀田一家には、出直しを期待するのが本当のところなんでしょうか? いや、潔く身を引くべきか?

ということで、本日はモヤモヤをブッ飛ばす、これを――

Heavy Sounds / Elvin Jones & Richard Davis (Impulse!)

そのものスバリのタイトルが、なんとも凄いです。

もうもうたる紫煙に包まれた2人の黒人というジャケ写も恐いですが、これこそエルビン・ジョーンズとリチャード・デイビスという硬派な猛者の印象でしょう。

このアルバムは1968年に録音されたジャズ喫茶の人気盤で、メンバーはエルビン・ジョーンズ(ds,g)、リチャード・デイビス(b)、フランク・フォスター(ts)、ビリー・グリーン(p) というワンホーンカルテットです。

もちろんこれはエルビン・ジョーンズが以前に大活躍していたジョン・コルトレーン(ts) のバンドと同じ編成ですから、ファンならばどうしても、それ風の演奏を期待してしまうのですが、時代は1968年というのがミソ! 単にモードでバリバリ突っ込むばかりじゃなく、シンプルで黒っぽいグルーヴやグッと心に入り込む安らぎ、さらには恐くて突き放したような自己満足的表現が、徹底されています――

A-1 Ramunchy Riat
 フランク・フォスターが書いた真っ黒なR&Bジャズの傑作曲で、8ビートを粘っこくポリリズムでブッ叩くエルビンジョーンズの恐いドラムス、アクの強いリフを弾きながら異次元にリスナーを引き込むリチャード・デイビスのベースワークが、まず強烈です。
 1970年代のジャズ喫茶では、この、ぶ~んと唸って始る強烈なリフが鳴り響いた瞬間、ある者は飾れたジャケットを眺め、またある者は安らかな眠りから覚めてグルーヴ地獄に落ち、そしてまたある者は心底真っ黒な演奏に酔わされました。
 作者のフランク・フォスターはカウント・ベイシー楽団での大活躍も有名ですから、そのスタイルはビバップ~モダンスイングと思われがちですが、実はジョン・コルトレーン流の音符過多なモード手法、あるいは激烈ファンクなロックノリも得意という実力派! ここでも良い感じの力みが最高です♪
 そして烈しく斬り込んでくるエルビン・ジョーンズのヤケッパチなドラムス! 全く熱いです。もちろんリチャード・デイビスの執拗な絡みとリフのコンビネーションも素晴らしく、ベースソロもアルバムタイトルに恥じないド迫力です。
 またピアニストのビル・グリーンは、あまり知られていませんが、縁の下の力持ちという堅実派で好感が持てます。
 あぁ、何度聴いても熱くさせられる名演ですねぇ~~~♪

A-2 Shiny Stocking
 これもファンク・フォスターのオリジナルで、今やスタンタード化した大名曲♪ ここでの演奏もモダンで洒落たフィーリングが大切にされていますが、リチャード・デイビスのベースが一筋縄ではいきません。
 ストレートにテーマを吹奏するフランク・フォスターをしっかり支えるエルビン・ジョーンズのブラシが粘っこく、唯我独尊に蠢くリチャード・デイビスのベースが渾然一体となっています。
 これも同曲の決定的なバージョンのひとつかもしれません。

A-3 M.E.
 ビル・グリーンが書いた調子良すぎる隠れ名曲♪ タイトルどおりにヘヴィな演奏が続いた後の清涼剤というか、実はこれを聞きたいファンが一番多いのじゃないでしょうか。
 当に楽しいモダンジャズの典型で、アドリブパートはビル・グリーンのハキハキしたピアノだけなんですが、背後で暴れるエルビン・ジョーンズや基本に忠実なリチャード・デイビスが貫禄を示しています。
 あぁ、演奏時間の短さが……、残念!

B-1 Summertime
 あまりにも有名なスタンダード曲が、エルビン・ジョーンズとリチャード・デイビスのデュオで演じられた決定的な名演です。初っ端から不気味さを響かせるエルビン・ジョーンズのドラミングとリチャード・デイビスのアルコ弾きは、心底、恐いです。
 そして演奏は粘っこい雰囲気の中で抽象的に展開されていきますから、聴いていて疲れます……。ヤバイなぁ……。
 しかし我慢して聞いていると、それが心地良い疲労感に変わっていくんですねぇ~♪ はっきり言えば素直じゃないんですが、名演に変わりなし!

B-2 Elvin's Guitar Blues
 前曲で疲れきったところへ鳴り響いてくるアコースティックギターは、あぁ、ぶる~す!
 これはタイトルどおり、エルビン・ジョーンズが自作自演していますが、黒~い雰囲気になったところで登場するのが、クールに熱いフランク・フォスターの骨太テナーサックスですから、たまりません。エルビン・ジョーンズも自然体でドラマーに戻り、ブラシでバンドをグルーヴさせていきます。
 かなり自由度の高いベースワークはりチャード・デイビスの十八番ですし、影のように寄り添うビル・グリーンの控えめな伴奏も素敵だと思います。

B-3 Hear's That Rainy Day
 オーラスは和み系スタンダード曲ながら、いきなりシャープすぎるエルビン・ジョーンズのブラシ! しかしその後は、ゆったりしたテンポでじっくりと演奏が展開されていきます。
 魅惑のテーマメロディを、時には過激に、あるいは優しく変奏していくフランク・フォスターは、流石の実力を存分に発揮しています。ジョン・コルトレーンと似て非なるところが、実に良いですねぇ~♪
 バラバラをやっていながら、バンド全体がひとつのグルーヴに収斂していくあたりも、最高だと思います。

ということで、聴くほどに虜になる名盤だと思います。ジャズ喫茶では、もちろんA面が大定番でした。しかし入手して自宅で聴くと、B面が実に良い雰囲気なんですねぇ~♪

タイトルは重々しいですが、エルビン・ジョーンズは土台が保守派という証明のような仕上がりですから、ちょっと硬派なフィーリングを求めて聴けば、尚更に気分爽快です。

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痛快! フルバン対決

2007-10-14 15:25:19 | Weblog

気持ちの良い秋晴れになりましたが、どこへも出かけずにPCの前でサイトの更新作業に励みました。もちろん買いっぱなしだったCDも、あれこれ聴きましたが、やっばり昔の盤に手が伸びてしまいますね――

First Time ! / Duke Ellington & Count Basie (Columbia)

ジャズの世界の名物企画、バトル物もここまで来たか! というのが、このアルバムです。なにせ、デューク・エリントとカウント・ベイシーの2大人気ビックバンドが、ステレオ仕様で右と左に別れての対決なのですから!

一応、演目は両バンドの十八番と新作を4曲ずつ取上げ、エリントンとベイシーの両リーダーのピアノとフレディ・グリーンのギターは全曲に登場♪ そしてドラムスとベースがそれぞれ在団している持ちネタの曲を担当する配慮がなされています。

しかもセッション当時の両バンドは、まさに全盛期というか、バリバリに第一線で活動中でしたからメンバーも大充実! 例えばエリントン楽団にはキャット・アンダーソン(tp)、レイ・ナンス(tp,vil)、ローレンス・ブラウン(tb)、ジミー・ハミルトン(as,cl)、ジョニー・ホッジス(as)、ポール・ゴンザルベス(ts)、ハリー・カーネィ(bs) といった大御所が在団していました。そして一方のカウント・ベイシー楽団にも、サド・ジョーンズ(tp)、ソニー・コーン(tp)、フランク・ウェス(fl,ts,as)、フランク・フォスター(ts)、バド・ジョンソン(ts) という名手が揃っていたのです。

録音は1961年7月6日、左チャンネルにカウント・ベイシー楽団、右チャンネルにデューク・エリントン楽団が入った、一発セッションです――

A-1 Battle Royal
 豪華共演のド頭を飾るに相応しい景気の良い曲で、これはデューク・エリントンが書いた映画音楽だと言われています。
 リズム隊はエリントン楽団からアーロン・ペルとサム・ウッドヤードが担当していますが、フレディ・グリーンのギターが入っていますから、一味違います♪ いきなり左チャンネルで刻まれる快適なリズムギターは本当にゴキゲンですねぇ~♪
 そこに絡んでいくブラス&リード陣も歯切れ良くてグルーヴィ! フルバンの魅力とジャズの醍醐味が堪能出来ますし、フランク・ウェス、ジョニー・ホッジス、レイ・ナンス、ジミー・ハミルトン、フランク・フォスター、ハリー・カーネィ等々、次々と繰り出されるアドリブの輝きも絶品です。
 そしてデューク・エリントンとカウント・ベイシーが各々のピアノで場を引き締めれば、クライマックスはサム・ウッドヤード対ソニー・ペインのドラム合戦! 当に嵐を呼ぶ男の対決が強烈なホーンの咆哮で燃え上がるのでした。

A-2 To You
 サド・ジョーンズの作編曲によるベイシー楽団の十八番のひとつが、エリントン楽団の参加によって、ますます豊かな響きをなった珠玉の演奏が楽しめます。ゆったりしたテンポをグッとスイングさせるフレディ・グリーンのギターも良いですねぇ♪
 ミュートのトロンボーンはクェンティ・ジャクソンかと思われますが、バンドアンサンブルが全てという名演!

A-3 Take The“A”Train
 エリントン楽団のというよりも、説明不要の大スタンダードですから、ここでの楽しい演奏は保証付き♪ まずはベイシーとエリントンによる洒脱なスイング感に溢れたピアノアンサンブルが素晴らしく、続くテーマの合奏は両バンドの特徴が良く出たノリになっています。
 アドリブパートはソニー・コーンとレイ・ナンスのトランペット対決、さらにジミー・ハミルトンのオトボケクラリネットとバド・ジョンソンの豪快なテナーサックスが最高のコントラストをつけて、演奏は大団円を迎えるのでした。

A-4 Until I Met You
 フレディ・グリーンが書いた畢生の大名曲「Corner Pocket」と同じ曲ですから、たまりません♪ 快適なカウント・ベイシーのピアノのイントロに合の手を入れるデューク・エリントンのセンスの良さ♪ それとフレディ・グリーンの天才的なリズムギターの妙! これがジャズだと思います。
 もちろん演奏にはフルバンの魅力がたっぷりで、アドリブソロはデューク・エリントン側のトランペッター、ウィリー・クックが、あの「お約束」のフレーズを演じてくれますから、思わずニンマリです♪ う~ん、何度聴いても気持ち良いバンドアンサンブルは絶品ですねぇ~♪
 終盤のドロ臭いテナーサックスはポール・コンザルペスかと思われますが、これまた魅力たっぷりです。
 
B-1 Wild Man
 これもデューク・エリントンが書いた映画音楽からの新曲で、エリントン楽団が十八番の手法がたっぷりと味わえます。速いテンポのラテンビートで対決するフランク・ウェスのフルートとジミー・ハミルトンのクラリネットが快感ですねぇ♪
 そして4ビートに移ってからはグイノリのド迫力演奏となり、ジョニー・ホッジスの見事なアルトサックス、サド・ジョーンズとキャット・アンダーソンのトランペット対決と、手に汗握る展開が楽しめます。
 またフランク・フォスターとポール・ゴンザルベスの対決も全く熱い!

B-2 Segue In C
 リズム隊だけのイントロから完全なベイシーバンドスタイルが堪能出来る名演で、もちろんフレディ・グリーンのギターが最高! そこへ乱入してくるデューク・エリントンのピアノも流石です。
 そしてフランク・ウェスの一芸主義のフルートが素晴らしく、またバド・ジョンソンの余裕綽々というテナーサックスが、実にグルーヴィ♪ バックのバンドアンサンブルも、本当にたまりません。これは思わず「イェ~~♪」の世界ですねっ!
 しかも後半になるとエリントン楽団がアンサンブルをリードしていくという、これまた素晴らしい展開には、涙ウルウルの世界でしょう。これぞジャズ、全く素晴らしいです。
 
B-3 B.D.B
 デューク・エリントン楽団の代貸し的存在のビリー・ストレイホーン(arr,p) が、このセッションの為に書き下ろした新曲です。
 まずグルーヴィなビートにノッたエリントン&ベイシーのピアノが「間」の芸術品! ふくよかなサックスアンサンブル主体のバンド演奏も素晴らしいです。

B-4 Jumpin' At Woodside
 オーラスはベイシー楽団が十八番の大興奮曲ですから、ここでの対決演奏にはぴったりの演目です。カウント・ベイシーのピアノイントロは何時ものブギウギ調ですし、アドリブ先発は豪快なフランク・フォスターのテナーサックスが務めるあたりは安心感がありますが、デューク・エリントン楽団側の絡みが半端ではありませんから、熱くなります。
 ポール・コンザルペスとのテナーバトルは大団円に相応しい熱気があります。

ということで、これはタイトルどおり、たった一度の逢瀬です。それゆえ貴重でもあり、豪快な楽しさに満ちておりますが、両バンドのコアなファンからは忌み嫌われているというのは、本当でしょうか?

まあ、私のような者にとっては単純に楽しめる名盤になっているのでした。当に大手レコード会社ならではのヒット企画で、CDも出ていますから、車中でも大音量で聴くと、ブッ飛んでしまいます。

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コンガ入りピアノカルテットの魔力

2007-10-13 16:15:57 | Weblog

自分にとってのケイタイ電話とは何か?

そんないろんな情報はいならないから、通話で連絡さえ取れれば、それで良いという結論に達しました。

そこで老人用の機種を物色してみると、これが基本に忠実で好ましいですね。折りたたみとかは出来ないけれど、初期のケイタイなんかトランシーバーよりも大きかったですからねぇ。

ちょっと真剣に考えています。

ということで、本日は楽しい1枚を――

Manteca / Red Garland (Prestige)

レッド・ガーランドは私が大好きなピアニストですが、最初にグッときたのは、マイルス・デイビスの代表作「マイルストーンズ(Columbia)」に入っていたリズム隊だけの演奏「Billy Boy」を聴いてからです。

それは全く躍動的でテンションの高い名演でしたから、忽ちガーランド中毒を患った私の前、敢然と現れたのが、このアルバムです。

と言うのも、レッド・ガーランドは前述した「マイルストーンズ」のセッション直後にマイルス・デイビスのバンドレギュラーを辞したとされ、それが1958年の4月2~3日の出来事でした。

そして約1週間後の4月11日に行われたリーダーセッションで作られたのが、この作品というわけです。

メンバーはレッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) という気心の知れた面々に、レイ・バレット(per) が加わっていますから、ちょっと新鮮なグルーヴが楽しめます――

A-1 Manteca
 ディジー・ガレスピー(tp) が自作した十八番のアフロキューバンジャズですから、レイ・バレットが参加したここでのバージョンのテンションは、ちょっと何時ものレッド・ガーランドらしくないほどに高すぎます!
 まず、いきなりコンガの響きと「マンテェ~~~カッ」という叫び声! 続けてスタートするテーマからしてポール・チェンバースのベースが異常なテンションの高さです。
 もちろん演奏は楽しさ優先の快楽モード♪ チャカポコのコンガが気持ち良い限りですし、アート・テイラーのシンバルワークがラテンの味わいを大切しています。そしてレッド・ガーランドのビアノからもアタックの強さが何時も以上に感じられるんですねぇ~♪
 当然、コロコロと転がるスイング感の妙と歌心の素晴らしさは最高ですし、中盤ではアート・テイラーとレイ・バレットの打楽器対決が興奮を煽ります。アート・ブレイキーほどのアクが無くて、実に良い感じです♪
 さらにラストテーマのアンサンブルも、またまた「マンテェ~カッ」の叫び声があって、痛快です!

A-2 S' Wonderful
 有名スタンダードをスイング感満点に解釈していくトリオを、上手くリードしていくのが、レイ・バレットのコンガです♪ 実にたまらんですねぇ~、このグルーヴがっ!
 もちろんレッド・ガーランドは十八番のフレーズを連発してくれますし、ドラムス&ベースの正調ハードバップという4ビートに完全対応した独特の後ノリは最高♪ その隙間を埋めていくレイ・バレットのコンガも効果的です。
 またポール・チェンバースが悪趣味ギリギリのアルコ弾き! しかし歌心がありますから、強い印象を残しているのでした。

A-3 Lady Be Good
 これまた有名スタンダードを素材にしながら、アップテンポの痛快な演奏を披露してくれます。初っ端からアート・テイラーのブラシがスピード感満点に疾走すれば、レッド・ガーランドも絶好調!
 このあたりは前述した「Billy Boy」と共通の楽しさがありますし、レイ・バレットの参加によって生み出された新たなグルーヴは、痛快至極! ピアノとドラムス、そしてコンガの対決にも熱くさせられます。ついつい音量を上げてしまいますねぇ~♪

B-1 Ecactly Like You
 素晴らしい「ガーランド節」が楽しめる快演で、素材はもちろん歌物スタンダードですから、トリオ+1の真髄が記録されています。
 う~ん、それにしても当時のレッド・ガーランドは絶頂期だったのでしょうねぇ~♪ 歌心あふれるフレーズが止まらないですし、絶妙に粘ったノリと軽いスイング感が完全融合した名演だと思います。もちろん、あのブロックコードにも和みますよ♪
 またポール・チェンバースがギシギシと軋る凄いアドリブを披露すれば、バックではコンガとシンバルの合の手が楽しく、このセッションの成功が証明されているのでした。

B-2 Mort's Report
 オーラスはレッド・ガーランドが得意とするスロ~ミディアムテンポのブルースなんですが、レイ・バレットのコンガが入って妙な雰囲気になっています。
 なんというか、違和感満点なんですねぇ、マヌケたような……。
 しかし聞き続けているうちに不思議な心持となってきます。それは亜空間のブル~スと言えば贔屓の引き倒しになりますが……。
 このあたりは実際に聴いていただくしか無いわけです。おそらくは最初、コンガが邪魔っけに思えるでしょう。それも真実だと思います。最後には土人の呪術みたいに聞こえてきますよ。

ということで、オーラスが若干ミスマッチなんですが、かみあわないプロレスみたいなものかもしれません。それまでのプログラムが素晴らしすぎましたから。

ちなみに、こういうコンガとかパーカッション入りのピアノカルテットは、ツボにはまると快楽地獄がまっています。我国の菅野邦彦も一時は同様のカルテットを率いていましたねぇ~♪

近年のピアノトリオブームは現在も続いているようですが、ここはひとつ、コンガ入りピアノカルテットの復権を願っています。

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ミンガスジャズの醍醐味

2007-10-12 16:03:11 | Weblog

う~ん、今日は仕事の信義を踏みにじられるような出来事がありました。自分の信条に照らし合わせて、これは絶対に許せん事なんですが、ここで怒れないのがビジネスのツライところ……。哀しいものがあります。

ですから、今日は怒りのこれを――

Mingus Ah Um / Charles Mingus (Columbia)

ジャズ界最高の怒れる男はチャールズ・ミンガスでしょうか。とにかく我侭に自分を押し通し、徹底した白人社会嫌いなのに、自分の妻は白人だし、バンドレギュラーにも白人を入れているという自己矛盾した姿に共感を覚えます。

また作り出す音楽は、黒人教会のゴスペルをデューク・エリントン風のサウンドで彩った膨らみが特徴的で、既にハードバップだとかフリーだとかの要素を1950年代から超越していました。

ズバリ、それがミンガスサウンド!

で、このアルバムは全盛期に吹き込まれた濃厚な1枚です。

録音は1959年5月5&12日、メンバーはチャールズ・ミンガス(b) 以下、ジミー・ネッパー(tb)、ウィリー・デニス(tb)、ジョン・ハンディ(as,cl)、シャフィ・ハディ=カーティス・ポーター(as,ts)、ブッカー・アーヴィン(ts)、ホレス・パーラン(p)、ダニー・リッチモンド(ds) というコワモテ揃い! もちろん全曲がミンガス親分の作編曲です――

A-1 Better Git It Your Soul (1959年5月5日録音)
 この時期のチャールズ・ミンガスを代表するゴスペルモダンジャズで、もちろんステージでは定番になっていた傑作曲です。
 不気味なイントロから重厚なホーンアンサンブルで演奏される熱血のテーマメロディには、思わず腰が浮きますねぇ♪
 アドリブパートではジョン・ハンディ、ホレス・パーラン、ブッカー・アーヴィンの活躍もありますが、それよりも情念のホーンアンサンブルや怒りのリズム隊が烈しく対峙しながら盛り上がっていく演奏全体が強烈至極です! ブレイクで飛び出す手拍子や多分ミンガス親父の叫び声も印象的ですし、全篇でテンションの高いビートを敲きまくっているダニー・リッチモンドも凄いと思います。

A-2 Goodbye Pork Pie Hat (1959年5月12日録音)
 これまたあまりにも有名なオリジナル曲で、レスター・ヤングに捧げられた鎮魂歌♪ 緩やかなテーマメロディが膨らみのあるアンサンブルで演奏され、ムード満点のテナーサックスソロはシャフィ・ハディこと、カーティス・ポーターによるものでしょう。
 ちなみにこの人は、ハンク・モブレーの「Blue Note 1568」での快演が有名ながら、極めて録音の少ない隠れ名手で、ここでの見事なアドリブを聞けば、あぁ、勿体無いとしか言えません。私は大好きですし、ジョニ・ミッチェルは歌詞をつけて歌っているほどです。
 ズバリ、畢生の名曲・名演だと思います。

A-3 Boogie Stop Shuffle (1959年5月12日録音)
 またまた激烈なゴスペルハードバップ! しかもデューク・エリントン風味がたっぷりとつけられていますから、たまりません♪
 ド迫力のバンドアンサンブルを縫って繰り広げられるアドリブは、ブッカー・アーヴィンとホレス・パーランがストイックなまでに自己を追いつめた結果として、見事だと思います。
 もちろんダニー・リッチモンドも熱演していますよっ♪

A-4 Self-Portrait In Three Colors (1959年5月12日録音)
 ちょっと感傷的過ぎるテーマメロディがふくよかなバンドアンサンブルで演奏される、それだけで満足してしまいます。あぁ、泣けてきますねぇ……。
 
A-5 Open Letter To Duke (1959年5月12日録音)
 いきなりブッカー・アーヴィンの大ブローが炸裂し、豪快なアップテンポの演奏が始ります。しかも鋭さいっぱいのリズム隊が手加減していませんから、本当に熱くさせられます。
 そして中盤ではテンポを落として、タイトルどおり、デューク・エリントンへ公開質問状を出すのですが……。
 個人的には短い演奏時間内に欲張りすぎた感じが???
 それでもバンドアンサンブルの妙やアドリブの集団的構築が素晴らしいと思うのでした。やっぱり凄いのか???
 最終パートは突如としてカリプソ~アフロキューバンになっていくという稚気も!?
 
B-1 Bird Calls (1959年5月5日録音)
 フリーとハードバップの折衷が楽しい熱演です。
 烈しいドラミングのダニー・リッチモンドが強い印象を残しますが、ブッカー・アーヴィンとホレス・パーランは若干、マンネリ気味でしょうか。中盤のアルトサックスはジョン・ハンディかと思われます。

B-2 Fables Of Faubus (1959年5月5日録音)
 これも邦題「フォーバース知事の寓話」として名高い名曲で、以降、ミンガスバンドのステージでは定番になっていきます。
 曲に関する経緯は、アーカンソー州知事の白人偏重主義を強烈に非難したものという、つまり怒りのミンガスの真骨頂だとか!? ですから毎回の演奏では、各人のアドリブから常に黒い情念が滲み出ると言われています。
 ここでの演奏はミディアム・テンポを基調にしながらも、時折アップテンポに走るテンションの高さがあって、特にホレス・パーランのアドリブからは、こみあげてくるものを感じます。

B-3 Pussy Cat Dues (1959年5月5日録音)
 怠惰な雰囲気が横溢したところは、これぞジャズという感じでしょうか。
 トロンボーンのアドリブソロは、多分、ジミー・ネッパーでしょう。名演だと思います。

B-4 Jelly Roll (1959年5月5日録音)
 オーラスはデューク・エリントン味が強いオトボケ演奏で、タイトルどおりにジェリー・ロール・モートンとニューオリンズに思いをはせた名曲になっています。
 スラッピーベースを聞かせるチャールズ・ミンガス、熱血のジョン・ハンディ、珍しくボケるブッカー・アーヴィンとアドリブも素晴らしいのですが、惜しむらくはテープ編集によって演奏が短縮されたところです。

ということで、チャールズ・ミンガスの入門用にも最適な名演集だと思います。聴き易くて濃厚なんですねぇ~♪ それは大手レコード会社で作られたというところがミソでしょう。

しかし既に述べたように、何箇所かにテープ編集の痕跡がありますので、必ずしも自然体の演奏ばかりではありません。そこが、ちょっとおもしろくない! これは正直な気持ちです。

ただし近年の復刻CDにはノーカット盤もあるらしいですね。こう書いているうちに、それまで聴きたくなっているのでした。

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