最近、自分でも愕くほどにモロジャズばっかり聴いています。これは、いったいどうしたことだ!?
ということで、本日も名門「ブルーノート」から、これを――
■Goin' West / Grant Green (Blue Note)
グラント・グリーンはブルースとR&Bをベースにした、如何にも黒人らしい感覚がウリのギタリストですから、モダンジャズの大衆路線には待ってましたの人気者!
しかも、それゆえのアルバム製作はテーマがしっかりとしていますから、分かり易くて得した気分になりますね。
さて、この作品はグラント・グリーンがカントリー&ウェスタンに挑戦した趣向で、1962年に録音されたセッションが収められていると言えば、あぁ、やっぱり当時、レイ・チャールズが出した名作アルバム「モダンサウンズ・イン・カントリー&ウェスタン(ABC)」をパクッたのか! と合点がいくはずです。しかも演目が一部、重なっているんですねぇ~♪
ただし発売されたのは、1970年頃だと思われますから、罪深い話です。
メンバーはグラント・グリーン(g)、ハービー・ハンコック(p)、レジー・ワークマン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という、当時のブルーノート・オールスタアズです――
A-1 On Top Of Old Smoky
初っ端からゴキゲンなジャズロックです♪
原曲は知らないのですが、演じられているのはニューオリンズ系R&Bの某曲と同じでしょうか? まあ、聴いていて気持ち良ければ全然、OKですね。
グラント・グリーンは何時もと同じくシャープで骨太のピッキングで迫っていますが、ここではハービー・ハンコックが最高です。弾む伴奏にファンキーなアドリブは、あの名曲・名演「Watermelon Man」と同質のグルーヴがありますから、たまりません♪ ラテン&ロックビートを叩くビリー・ヒギンズのダサダサのカッコ良さも、感度良好です。
終盤では同じフレーズを執拗に繰り返す、所謂「針飛びフレーズ」を披露するグラント・グリーン! やはりこれが出てこそナンボ! でしょう♪ 全く、たまらんですねっ♪
A-2 I Can't Stop Loving You
レイ・チャールズが前述のアルバムで取上げ、シングル盤としても大ヒットさせた名曲のジャズバージョン! ここでは、より一層、ゴスペル色が強いスローグルーヴが満喫出来ます。
まずハービー・ハンコックのイントロと伴奏が素晴らしすぎます♪ グラント・グリーンのテーマメロディの歌わせ方も、辛抱たらまん状態なんですねぇ~♪ まさにブルース&ソウルの味付けが存分に楽しめます。
地味ながらグサッとくるレジー・ワークマンのベースも印象的です。
A-3 Wagon Wheels
モダンジャズでは既にソニー・ロリンズ(ts) の名演が残されていますから、グラント・グリーン以下、バンドの面々も大ハッスル! アタックの強いリズム隊の中でも、ビリー・ヒギンズが大技・小技で奮闘しています。
う~ん、この粘っこい重量級のビートは、ジャズロックとゴスペルロックがゴッタ煮になったような強烈さ! ですからグラント・グリーンも好演ですが、ハービー・ハンコックが、また凄いです。この粘り、このファンキーな醍醐味は、ヤミツキになりますねっ♪
B-1 Red River Valley
これまた有名曲で、既にジョニー&ハリケーンズによってロックインストの名演が残されていますから、ここでのメンツなら! と大いに期待したのですが……。
結論から言うと、軽快なノリが楽しい仕上がりで、ちょっと肩すかしでした。
しかしビリー・ヒギンズのリムショットの楽しさとか、ボサロック調のアレンジには捨てがたい魅力があって、グラント・グリーンのスピード感溢れるフレーズ展開も流石だと思います。
するとハービー・ハンコックは若干モード風の展開に持っていくんですねぇ~♪ レジー・ワークマンも烈しくツッコミを入れますから、全くニクイです。あぁ、これでソニー・ロリンズが出てきたら! なんて、ありえない妄想にとらわれてしまうのでした。
B-2 Tumbling Tumbleweeds
オーラスはちょっと知らない曲ですが、演奏の出来はアルバム中で最高だと思います。ダークでファンキーで新主流派! 変則三連ビートとヘヴィな4ビートの交錯がディープな雰囲気を煽ります。
そしてグラント・グリーンは十八番のフレーズを粘っこく展開させ、針飛びフレーズに加えて、珍しいコード弾きや擬似オクターブ奏法まで駆使しながら、じっくりと山場を作ります。あぁ、これぞ畢生の名アドリブじゃないでしょうか!?
またハービー・ハンコックが素晴らしいアドリブを演じているバックでは、実に味のある伴奏のギタープレイが楽しめますので、要注意です。
あぁ、何度聴いても凄いです!
ということで、実は最後の「Tumbling Tumbleweeds」だけでも満足するわけですが、これが一般的な人気盤になっていないのも、ジャズ喫茶の七不思議かもしれません。
まあ、リアルタイムじゃなくて、一種のオクラ入り盤だった所為なんでしょうか……。
ちなみにグラント・グリーンの諸作品中、私が一番最初に買ったアルバムがこれでした。それゆえに、一層の愛着があるんですが、実はハービー・ハンコック目当てだったことを告白しておきます。