台風来てますね。
朝から冷たい雨、そのわりにモヤモヤした空気、こういうアンバランスに気分が晴れません。
そこで――
■Stan Getz At The Shrine (Norgan / Verve)
昨日聴いていたキャノンボール・アダレイの名演「Flamingo」に刺激されて、またまた聴きたくなったのが、スタン・ゲッツの同曲バージョン♪ それが収められたアルバムが、これです。
しかも12吋LPの2枚組アルバムなんですねぇ~。これは当時のポピュラー音楽では珍しかったんじゃないでしょうか?
内容は1954年11月8日のライブ録音がA~C面に、そして翌日のスタジオセッションがD面に収められています。
メンバーはスタン・ゲッツ(ts) 以下、ボブ・ブルックマイヤー(v-tb)、ジョン・ウイリアムス(p)、ビル・アンソニー(b)、アート・マディガン(ds) というクインテットで、スタジオセッションではドラマーがフランク・イソラに交代しています――
A-1 Flamingo (1954年11月8日 / ライブ)
デューク・エリントンだと言われている粋な司会に導かれ、素敵なテーマメロディが軽快なアンサンブルで演奏されただけで、もう完全に満足させられると思います。
スタン・ゲッツのアドリブは美メロ満載ですし、流れるようなノリと絶妙のアクセント、ウネリとタメも嫌味無く、自然と腰が浮きます♪ 途中で絡んでくるボブ・ブルックマイヤーもツボを押えていますし、ジョン・ウイリアムスのピアノにも、グッときます。
ちなみに原盤の解説によれば、当夜はエリントン楽団を筆頭に、ジェリー・マリガンやディブ・ブルーベックのバンドも同じステージに出ていたという豪華コンサートらしく、それゆえにテンションの高さがあったのかもしれませんが、もはや絶対的な自信に満ちたスタン・ゲッツが堪能出来るのでした。
A-2 Lover Man (1954年11月8日 / ライブ)
ここでの曲紹介と挨拶はスタン・ゲッツ本人によるものでしょう、なんとなく憎めないものがあります。
演目はモダンジャズでは避けて通れない歌物で、ここではスローテンポながら、2管の絡みとメリハリの効いたビートを使った粋な展開が素敵です。意外に黒いノリもあるんですねぇ。
もちろんスタン・ゲッツは美しい思わせぶりと歌心♪ ボブ・ブルックマイヤーもキラリと光るフレーズで対抗しています。
A-3 Pernod (1954年11月8日 / ライブ)
ここでは客席とのトボケた会話のやりとりもあったりして、楽しい雰囲気で快適なアップテンポの演奏がスタートしますが、如何にも西海岸派というスマートなノリがたまりません。
流麗なスタン・ゲッツと対峙するリズム隊の意気地も烈しく、ボブ・ブルックマイヤーの対位法的な絡みも、個人的にツボです♪
B-1 Tasty Pudding (1954年11月8日 / ライブ)
バンド全体で、たっぷりとしたグルーヴが楽しめるクールな名曲・名演ですが、中でもスタン・ゲッツの豊かなアドリブ能力には絶句! スカスカの音色にも、あらためて魅力を感じます。
それとジョン・ウイリアムスの明快なピアノタッチによる幻想的なアドリブも、また秀逸だと思います。
B-2 I'll Remember April (1954年11月8日 / ライブ)
スタン・ゲッツが十八番にしているスタンダード曲ですから、ここでの快演は間違いないのですが、始る前のドタバタした雰囲気はテープ編集によるものでしょうか?
まあ、それはそれとして、些かモゴモゴとしたボブ・ブルックマイヤーに比べて颯爽と駆け抜けていくスタン・ゲッツの素晴らしさ♪ ただし、ちょいとマンネリも感じられるのですが……。
ジョン・ウイリアムスの必死のアドリブには好感が持てます。
C-1 Polka Dots And Moonbeams (1954年11月8日 / ライブ)
曲が始る前にスタン・ゲッツによるメンバー紹介が、実に良い雰囲気です。
そして始まるのが、決定的なスローバラードなんですが、ボブ・ブルックマイヤーの絡みやリズムアレンジによって、ちょいとオトボケ調になっているのが、妙な感じです。
う~ん、スタン・ゲッツのワンホーンで聴きたかったですよ……。しかしラストのアンサンブルは素晴らしい♪
C-2 Open Country (1954年11月8日 / ライブ)
そのボブ・ブルックマイヤーが書いた楽しいオリジナルで、私は好きでたまらない曲のひとつです。
もちろんここでの演奏も素晴らしく、アドリブ先発のボブ・ブルックマイヤーが歌心いっぱいにスイングすれば、スタン・ゲッツはクールで流麗なフレーズに加えて、ちょっと黒っぽい、グルーヴィなノリも聞かせてくれます。
またリズム隊もシャープな好演、見事な煽りです。
C-3 It Don't Mean a Thing / スイングしなけりゃ意味がない (1954年11月8日 / ライブ)
オーラスはイントロの司会を務めてくれたデューク・エリントンに敬意を表したような同楽団のヒット曲♪ タイトルどおり、猛烈にスイングしまくった快演です。
特にテーマからアドリブに突入していくスタン・ゲッツの鮮やかさと荒っぽさのバランスが秀逸! 執拗に絡んでくるボブ・ブルックマイヤーも熱っぽいですし、リズム隊も大ハッスルしています。
D-1 We'll Be Together Again (1954年11月9日 / スタジオ)
ここからが11月9日に行われたスタジオセッションで、音もグッと良くなっていますし、前日のライブからテンションも落ちていません。
この有名スタンダード曲もスタン・ゲッツとボブ・ブルックマイヤーの対位法的アプローチでテーマが演奏され、両者ともに哀愁モードの好演です。ジョン・ウイリアムスの伴奏も素敵ですねぇ♪
う~ん、スタン・ゲッツのテナーサックスが生々しい音色で録音されているのが嬉しい!
D-2 Feather Merchant (1954年11月9日 / スタジオ)
ジョン・ウイリアムスがリードする擬似ハードバップ調イントロでは、リズム隊が本領発揮というか、ちょっと馴染めない雰囲気なんですが、中間派っぽいテーマメロディが出てくれば、後はもう安心印の快演となります。
そして、こういう演奏が十八番のボブ・ブルックマイヤーが大熱演です。グルーヴィでオトボケが入ったアドリブの妙は最高♪ リズム隊も調子が出てきたようで、アタックが強くて粘っこいノリが、たまりません。
するとスタン・ゲッツが、これまた独特のノリとメロディセンスで、演奏はますますハードバップ化するのですが、やはり時代はウエストコーストだったというか、心底、黒くなれないバンドのノリが、今となっては貴重なムードだと思います。
ということで、ライブ音源の方は音質がイマイチなんですが、演奏そのものは極上♪ 特に「Flamingo」と「Open Country」は最高ですねぇ~~♪
ちなみにアナログ盤は2枚組でしたが、CDでは1枚に収められ、編集によって会話や演奏が継足されているらしいのですが、持っていないので、そのあたりはご容赦願います。