OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ジワッとくるソニー・クリス

2007-10-01 16:55:29 | Weblog

いよいよ10月、今年もあと、カレンダー3枚で終りという早さでした。いよいよ人生を大切にしなければなぁ……、なんて神妙に考えてしまう自分はなんでしょう。

ということで、本日は――

Jazz-U.S.A. / Sonny Criss (Imperial)

ソニー・クリスはチャーリー・パーカー派の黒人アルトサックス奏者で、その脂っこいスタイルは大いに魅力的なんですが、同時に強烈なクセがあるので、私のような者が自発的に聴くには、かなりの覚悟がいります。

それは必要以上と思えるほど音を長く伸ばしたり、エキセントリックに速いフレーズの連発が特徴的で、まるっきり投げっ放しのバックドロップのような強烈にド派手なインパクトがありますから、聴いていて疲れることが否定できません。

しかしこのアルバムは、そういう野放図なところが上手く抑制された演奏集だと思います。

録音は1956年1~3月、メンバーはソニー・クリス(as)、ケニー・ドリュー(p)、バーニー・ケッセル(g)、ビル・ウッドソン(b)、チャック・トンプソン(ds) という、凄腕5人組――

A-1 Willow Weep For Me (1956年1月26日録音)
A-2 These Foolish Things (1956年2月24日録音)
A-3 Blue Friday (1956年2月24日録音)
A-4 Sundy (1956年3月23日録音)
A-5 More Than You Know (1956年3月23日録音)
A-6 Easy Living (1956年1月26日録音)
B-1 Alabamy Bound (1956年1月26日録音)
B-2 Something's Gotta Give (1956年2月24日録音)
B-3 West Coast Blues (1956年2月24日録音)
B-4 Criss Cross (1956年1月26日録音)
B-5 Ham's Blues (1956年3月23日録音)
B-6 Sweet Georgie Brown (1956年3月23日録音)

――いずれも3~5分程度のコンパクトな演奏ながら、密度は濃いです。

まずA面ド頭の「Willow Weep For Me」のしっとり感! そして真っ黒なフィーリングが、たまらなく心地良いんですねぇ~♪ じっくりと構えたリズム隊が生み出す絶妙のグルーヴの上を、ソニー・クラークが猫歩きしながら泣いていきます。あぁ、この繊細なブルース感覚が少しずつ野放図なブローに変わっていく瞬間こそ、ソニー・クリスの真骨頂だと思います。

そして続く「These Foolish Things」の暖かい歌心に酔わされ、さらに「Blue Friday」では速いテンポで迸るブルース&ジャズ魂が痛快至極! もうこの3連発で完全にKOされます。

もちろんリズム隊も冴えきった助演が見事で、特に「Blue Friday」ではケニー・ドリューのファンキーなノリが素晴らしいです!

そしてもう、これから先は一気呵成にソニー・クリスのド派手な世界が繰り広げられます。猛烈に吹きまくる「Sundy」や「Something's Gotta Give」ではチャーリー・パーカー直伝のエキセントリックなフレーズや泣きじゃくる音色が、やりすぎ寸前の醍醐味でしょう。

また「More Than You Know」や「Easy Living」といった有名スタンダード曲の解釈では、正統派スインガーとしての実力を遺憾なく発揮していますが、所々で必要以上に音を伸ばしたりする嫌らしさが……。

しかしスローブルースの「West Coast Blues」とか、グルーヴィな「Ham's Blues」では、そのあたりを長所として存分に活かした、本当にカッコイイ演奏を聞かせてくれますし、ケニー・ドリューも良い感じ♪

そしてオーラスの「Sweet Georgie Brown」は、強烈なアップテンポの演奏になっていて、溌剌としたリズム隊と丁々発止の遣り取りが素晴らしく、ソニー・クリスも自信に満ちた吹奏ですから、たまらない爽快感に感激します。

ということで、アルバム全体としても、ジンワリと始って、痛快に幕を下ろすという構成が見事! これこそソニー・クリスがいつもやりすぎて嫌味になってしまう持ち味を緩和したプロデュースの妙のでしょう。

短めの演奏ばかりなので、曲単位で楽しむのが王道かもしれませんが、とにかくA面初っ端の3連発は最高の流れ♪ ここで虜になる気分の良さが、このアルバムの魅力かもしれません。

コメント
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