若隆景の優勝決定戦は、凄まじい一番だった。技能賞にふさわしい、曲芸のような闘いだった。勝った若隆景に拍手をして喜んでいると、妻が「あら、応援してたの」という。ははあ~ん。イケメンじゃないもんな。興味ないか。
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妻が興味を持ったのは遠藤以外は翔猿だ。あれはマゲが似合うし、浮世絵に登場してもおかしくない。いやいや、そういうことじゃないんだよ。
翌朝の新聞には、130kgの体で良くやったぐらいの事しか書いてない。そうじゃないだろう。小柄なのに大きい相手と互角に渡り合った事が凄いだろ。新聞には「小柄」或いは「小兵」と書けない理由がある。何しろ身長が相撲協会発表で181.0cmとなっている。どうやって、計測してるんだ。ゲタ履いた上に、マゲ直立させて測ってるんじゃないか。
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若隆景の相撲は、オレをしてワクワクさせる。それは千代の富士以来のことだからだ。そしたら大御所、北の富士も引き合いに出していた。そうなんだよ。あの感動なんだよ。力が強いほかに足腰がブレない。反応速度も速い。
北の富士がいうには、千代の富士もあの路線になってから化けたという。つまり投げ一辺倒から、前みつを取って前進する型のことだ。
ところで北の富士は、80歳になるという。時々アナの問いかけを聞いていない時があるが、それ以外はボケてない。あと10年で、あのくらい的確な判断が出来る自信がない。的確なほかに怖いものなし。うらやましい。
このまま二桁勝利を重ねていけば・・。という期待もあるが、不安が無いわけでもない。負けた相手が馬力で勝負するタイプだからだ。霧馬山でしょ。御嶽海でしょ。それに正代。正代は身体をぶつけて、にじり寄っていったら、あっさり若隆景が土俵を割った。意外だった。あんな時に実力発揮しなくても、と思った。
重量化、大型化の時代に、小さくても、真っ向勝負できる相撲取りが現れた。
若隆景は、言いにくいのもさることながら、一時代を画す力士となるに違いない。
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