松美の言絵(いえ)

私は誤解されるのが好きだ。言い訳する手間が省けるから。

秋田弁講座第2話「ほじ」

2015-03-18 16:20:06 | 日記・エッセイ・コラム

 たいへん「ぶじゅほう」(不調法)だども、第二話も聞いでくだはれ。(くたばれと違います)
 前回の話に出てきた「しび」これ「秋田のことば」(秋田県教育委員会編¥2,800)で調べたところ、ひび、あかぎれのことと出てました。またの言い方を「ふび」又は「しゅび」だんだんひどくなります。なまりが。仙北あたりのお年寄りからじかにお聞きしたい気分です。つまり載ってなかったんですよ、私の言ってる意味の「しび」が。もしかすると、秋田弁の標準語ではないのかも。                               

 阿部十全という本荘出身のおじさんがいるんですが、今では田んぼでドリンク剤のCMをやってる姿ぐらいしか見ることはありません。元はれっきとした歌手で、田子作音頭で中央進出を果たした二人組です。彼がラジオ番組をやってた頃、「十全のなぜか歌謡日」というのを日曜日の午後2時にやってました。その中のコーナーで秋田なまりの十全風解釈講座みたいなのがあって、私はそのまねをしているだけなんですけどね。


 その中でなぜか頭にこびりついている言葉が「はがいぐ」というヤツ。ちょうど盆の頃やっていたような気がします。一生懸命仕事している人に「はがいぐが」と言っても墓参りには行きません。それは忙しいからではなくて、言ってる意味が違うからですね。「はかどってますか」という意味ですからね。「秋田のことば」によれば、ある定まった仕事量を「ハカ」と言うそうです。だから「あえー、あだ、はがえがねごど」と言えば「Oh!、あなた、まだ今日のノルマ果たしていませんね。」となるのでしょう。これ、何段活用というのか分かりませんが「い」は「え」に変化する事もあります。

 

 さて、今回は「ほじ」。出ました、ついに。秋田弁の大本命みたいなものです。あやまちを犯した時など、この言葉で思いっきりしかられます。「このほじなしっ!」少しまともな事を言うと、「なぼがほじつできたが」(アクセント分かりますか)なんとなく感じとして「ほじ」イコール頭の中身、脳味噌そのものという感じがします。これは冗談抜きで仏教からきてるんです。「ほじ」とは「ほんじ」つまり「本地」。一番目の意味は、仮の姿でこの世に現れる垂迹身(すいじゃくしん)に対してその本源たる仏・菩薩のこと。二番目の意味は、本来の姿、ものの本源。三番目の意味は、本性、正気。だからどれだがと言えばどれなんでしょう。全部含んでいるような、或いは4番目にずばり何かありそうな。情景的には、コロッケが野口五郎のものまねをしている時の一瞬の、小指が鼻穴にスポッと入った時の表情あたりが無言のうちに言い表しているような。気がします。でも「ほじ」だからって鼻くそほじほじのほじを連想したらいけません。
 それにしても、なんでこんなに上品で高潔な言葉を裏日本の片田舎で使っていたのでしょうね。「とぜね」だってそうでしょう。これを説明するったら「徒然草」から始めなければいけません。大げさに言えばね。これだって、どっちが早かったか分かりませんよ。「とぜね」という言葉の方が漢字伝来より早い可能性だってあります。漢字が当て字だってこともありますから。日本て国は意外と広いです。それぞれの土地で使う方言が体系化されていて、言葉の自治権が確立しているってことは何を意味するんでしょう。単に中央から伝わってくるうちに変化したという事と違うように思います。成熟の度合いが半端じゃないように思います。事実、次のように考える学者もおります。原日本語=縄文語は東北地方、関東地方、山陰地方に及ぶ裏日本縄文語、東海地方から山陽地方に及ぶ表日本縄文語、後期九州縄文語、そして琉球縄文語、この四つからなる系統図を想定して現在にいたると考える人もいます。四つに分かれる前が前期九州縄文語でそれが元の原縄文語だという学説です。どっちにしても地球上で最も古い言語に違いないです。他の文明はせいぜい5~6千年前ですから。縄文は1万年あります。途中で漢字が入って来たからって、しゃべり言葉がガラッと変わろうはずもございません。だからボクらの使っている言葉は最低でも縄文前期までは遡れるはずです。タイムマシンができたら縄文人とさして苦労なく話せるとボクは思います。そんなことを考えていくと、どーです。秋田方言にちょっとは自信が持てましたか。

コメント
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