棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

つれづれくさ-8-すぎたるは

2009-03-07 08:48:02 | 大人の童話
8
あるとき小路を歩いていたかの男。破れ築地にあばら家と化した屋敷から、じーと自分を見つめる目に気がついた。
いつもだったらあわてて目を伏せてしまうのだが、体中に電撃が走り動けなくなってしまった。そのうえ、それまでに感じたことがない熱いものがこみあげ、呆然としてしまった。
男はそれが何であるのかわからなかった。ただ、破れた築地塀(ついじべい)越に観た女を、もう一度観たいとおもうようになった。
気の弱い男にしたら、用もないのにあの小路をいくことは必死な思いだった。
土塀のおくに優しい女の目があった。かいがいしく働く姿があった。声こそ聞こえなかったが、語り合った気がした。
なかむつましくなるのに、さほどの時はかからなかった。
男は心から安らぎをおぼえ、「オレはこの女のためならば、なんとでもする」と思ったが・・

つれづれくさ-6・7すぎたるは

2009-03-06 08:10:03 | 大人の童話
6
衆人はあきやすい。
女の痴話喧嘩も以前のような関心をしめさなくなったてしまった。
気の弱い夫は、決して自分から望んで他の女を求めようなどと思いもしなかった。
そればかりか、妻の浮気癖は自分が至らないのだと思っていた。
いつものように、下を向いたまま大道をまるで影のように歩む男に、密かに思いをよせている美しい女がいた。
7
没落貴族として生まれた女は、幼い頃から働き者で、器量もよく賢かった。
妻にほしいという話は多くあったが、家柄を狙ってのものであった。両親の説得にも頸を縦にせず、黙してしまうのであった。
妻として理想的な女子が、男におもいをよせているなどと誰が思いつこうか。

つれづれくさ―5―すぎたるは

2009-03-05 08:12:13 | 大人の童話
5
この女は強かった。相手が自分より大おんなであっても、喧嘩なれというか連戦連勝。痴話喧嘩(とはいいきれないが)のベテランである。
気の毒なのは夫で、身に覚えのないことで、妻が衆集での大立ち回りだが、幸いなことに人々は恐妻を持つ男に同情をすればこそ、卑下することはなかった。

今ひとつ不思議と言えば不思議なことだが、喧嘩慣れした格闘ウーマンだが、吹けば飛ぶような優男の夫には、罵詈雑言を浴びせたが手を上げることはなかった。
世間では、あの女は浮気性だが、夫にはべたぼれでなにもしないんだ。と、多少はひいきをしていた。

つれづれくさ-4-過ぎたるは

2009-03-04 08:47:03 | 大人の童話
4
美しい女だけに、大狂乱するうわさはたちまち都中にひろがり、見物したいものだなどと、期待して待っている始末であった。
「おい、あの女に勝てるような女子をめあわせてみよう。そうすればお楽しみテーもんだ」
と、とんでもないことを言いだすやからが出て、実行されてしまった。

まるで祭り芝居をまっているごとく、人々は「どちらが勝つか」などと賭け事にするしまつ。

つれづれくさ-

2009-03-03 08:08:36 | 大人の童話
3
女の嫉妬は夫を愛していたというより、夫を寝取られたと勝手に思い込んでいることがほとんどだった。自尊心が傷つき激情のおもむくまま、衆人環視のなかで喚き、叫び、突き、泣き、衣類の乱れなど気にしなかった。

人々は、女の浮気と嫉妬激昂する様を面白おかしくはやしたてていた。
興奮すればこそ誰も仲裁する者もいなかった。
女は、衆人から面白おかしくうわさをされることをはじとも思わなかった。むしろ、躍起となって騒ぎ立てることにより、他人から、己の存在を認識させるものとなり、愉悦すら感じていたのであった。

つれづれくさ・・・すぎたるは--嫉妬

2009-03-02 08:40:24 | 大人の童話
2
大道りを夫が右側に歩めば、その右側の女子たちに色目を使ったと文句をいい、左側を歩めば同じこと。理不尽な物言いに相手の女も怒ると、女房はさまは鬼夜叉のごとく怒り狂った。
己の身分、立ち振る舞いなど全く気にしなくなってしまうのだった。
口喧嘩などというしろものでなく、髪とりみだし挑みかかる。事の詮索よりも、相手の女が詫びれば気がすむのであった。
気の弱い男は、大道路の真ん中を下だけを見つめつつ、歩まなければならなかった。

つれづれくさ・・・すぎたるは--嫉妬

2009-03-01 08:54:25 | 大人の童話
1
今は昔、都の司にに雛人形を観るごとく艶やかで雅な夫婦がおった。
しかし、見た目と本音はこれほど違うものかと、都雀のうわさになった。
女は申し分のない家柄であったが、もって生まれたのか身持ちが悪く、さらに、大のやきもち焼きであった。
となると、何もいいところがない、わがまま女ということになってしまうが、平素は貴族的な美しさを漂わせていた。
その夫は更に貴族的なたおやかさがあり、観た目の通り優しく気の弱い男であった。夫が地方に出向いた日は、女は日夜、一人身の青年たちをはびらかせ、饗宴にふけっていたが、こと夫のこととなると尋常ではなかった。

7-浮気者の失敗

2009-02-27 09:40:27 | 大人の童話
満座で大はじをかいた好衛門、しばらくのあいだ、からかいのネタにされっぱなしで、女たちも相手にしなくなってしまった。
もはや色事師といわれた面目を失ってしまい、この男から艶話も絶えてしまったが・・・。しかし、三つ子の魂百までも とも申しますので・・・。
作者の言葉 
狂言「因幡堂」の元ネタではなかったかと言われている、徒然草の浮気者物語の一つ。舞台は京都伏見稲荷の午の日の参詣のひとごみでした
口説き落とすには、ひたすら根気 が絶対条件だと申しますが、もてる野郎ってやつはどこか女性にだらしなく、男からすると弱弱しいところがある。こんなところが、女殺し、なんですね。もてない、作者の嫉妬でゴンス。
今日、いい男いい女、そして若き者への情欲も、お金しだい と思いたくはないがそおなのです。お次をお楽しみに
浮気を肯定するわけではありませんが、男の浮気の結末はどこかこっけいさがあり、女の浮気には修羅場が・・・。いやーーどちらともいえませんか。

5-6-浮気者の失敗

2009-02-26 08:30:56 | 大人の童話
5
地にうつぶせんばかりの女に、男は、ますますもってしおらしく美しく思え、10中八九我が手に落ちたものとおもった其のとき、女は男にか被衣をパッとかけ
「ナサケナヤ!!自分の女房の声がわからぬとは」
ポカリポカリ
「この恥知らずの女たらし。オマエ様のことをお連れから聴いたときは、まさかとおもったが!! にくらしや!!」
ポカリポカリ
6
花見客は面白がっり、やんややんやと大騒ぎ。
駆けつけた男の仲間が、ようやく収拾をつけたありさま

3-4-浮気者の失敗

2009-02-25 09:02:59 | 大人の童話
3
多少手を焼いてしまった面々は
「まだまだおごこ娘。われら大人がいいよるほどでもあるまいテ」
「そおとも、ほれ、アソコにいる妖艶な女子のほうが、張り合いがおます。わいはあっちにしますわ」と仲間はよその女にいいよっていく。
「フン!己の未熟さを棚に上げ、どないにもなりまへん。本領はこれからでおます」と、好衛門は女の背中をそれとなくなぜたり、口説きたてる。
4
「この人ごみにつれの者とはぐれ、こころぼそいところに、そのようなご無体なことを・・・」
「それはそれはおこまりのこと。それならなおさらこの万田好衛門におまかせあれ」
「万田好衛門様と申せば、奥方様がおありと・・・」
「おお!拙モンをご存知だとは好都合。なんの、あへんなヒヒ婆やらなんやら、あんたはんにくらべようがございまへん。なにかと嫉妬深く、このわいを信じてくれやへん。ちかじか離縁しょうかとおもーてます。」
「まーーそのようなことをなすっては」
「貴方様がお一人であれば、この稲荷様のおひきあわせ。神仏のご加護でございましょう」
「はい・・私はまだ一人身・・・。こないな満座でなんともお恥ずかしい・・・」

ryusun

つぶやき

絵本と無縁になった大人に

子供たちに向けたというより、内なるものを呼び覚ます大人への絵本