21世紀の現代でも、エクソシストは存在している。
バチカン公認の、正式な職業だ。
2011年11月、ローマにカトリック司教たちが招集された。
その要求は、“悪魔祓い”だったが、その時のニューヨークタイムズが、紙面を飾った。
「悪魔は存在する。戦いに備えよ」というものだった。
悪魔が、実際に存在するとしないとにかかわらず、実際に起きた事象を扱っている。
ミカエル・ハフストーム監督のアメリカ映画だ。
今なお、その『儀式』は実際に行われているとして、世界の人々を驚かせた。
アメリカの神学生マイケル(コリン・オドノヒュー)は、信仰心を見失っていた。
卒業を間近にひかえて、マイケルは司祭になる道を捨てようとしていた。
しかし、恩師に引き止められて、ローマに渡り、カトリック教会の総本山バチカンで行われている、エクソシスト養成講座を受けることになった。
彼はそこで、悪魔祓いの基礎を学ぶが、その非科学的な儀式に疑問を抱いた。
悪魔祓いについて、その信憑性を疑うマイケルに、バチカンのザビエル神父(キアラン・ハインズ)は、異端だが経験豊富なルーカス神父(アンソニー・ホプキンス)を紹介する。
マイケルが彼のもとを訪れると、ちょうど悪魔祓いの儀式が始まるところだった。
悪魔に取り憑かれたという、16歳の少女アンジェリーナ(アリーシー・ブラガ)は妊娠していて、親が誰なのか固く口を閉ざし、神父の祈りがはじまると、別人の声でうめき始め、太い釘を吐き出すなど、想像を超える現象が、マイケルの見ている前で起こる。
マイケルは、身重の体を心配して、精神科医に診せることを主張するのだが、ルーカス神父は頑として受け入れない。
「悪魔の存在を否定しても、自分の身は守れない」と、ルーカス神父はマイケルに警告するのだった。
アンジェリーナは日に日に蝕まれていき、マイケルは、とうとう衝撃的な事実を目撃することになるのだった・・・!
光と闇の両面を露呈するアンソニー・ホプキンス、彼から光を見出そうとする若者コリン・オドノヒューらの存在感といい、悪魔の存在を信じようが信じまいが、傷つけられた人間の心の闇が、いかに深く哀しみに包まれているかを、ミカエル・ハフストーム監督は等身大で体現していく。
この悪魔祓い の儀式について聞いてはいても、その本質に真正面から迫ったのは、このアメリカ映画「ザ・ライト―エクソシストの真実―」がはじめてではないだろうか。
マイケルが、神=悪魔の存在を次第に意識していく、その心情の変化は興味深い。
この映画、観客を脅す手法に、‘音’をやたらに使っているのはあまりいただけない。観ている方はドキッとしてしまうが、わざとらしい。
前半はドキュメンタリータッチで、ドラマの中に現れるカエルや猫は、ルーカスののちの運命でも暗示するものか。
アカデミー賞俳優のホプキンスという役者は、このドラマの難役とも思える神父を演じて、人間の持つ破滅主義的な面をくすぐるようなツボを心得ているようだし、実話がもとになったこの作品にユーモアさえも持ち込んで、物語に深みを与えている。
神父を演じる彼が、闇と直面するシーンもリアリティにあふれていて、怖ろしささえ感じさせる。
彼が演じる悪魔祓いの儀式は、アメリカにおける心理分析のようなものらしく、ちょっぴりコミカルな面もあって、異端扱いされているエクソシストとして注目だ。
日本には、まだエクソシストは一人もいないそうだが、イタリアには約300人のエクソシストがいるといわれる。
彼らは、現代にマッチした精神分析などを学び、各地区の司教に認められて、エクソシストになった司祭もいるそうだ。
エクソシズムを行う彼らは、祈るように十字架をかざし、憑依した者を問いただすくだりが有名だが、それなりの信仰心がなくては、深く理解することはできないのでは・・・?
あくまでも実話にヒントを得て作られた、超自然スリラーだ。
作品の中に、特別残酷な描写があるというわけではなく、心理的な恐怖が迫ってくるあたり、観るものをぐいぐいとひきつけずにはおかない。
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確かに、何かそういう‘事象’が人間には見えるときがありますから、文学や演劇の世界では常套的ですものね。