ハリウッドを代表する俳優ブラッド・ピットと、世界的な実力派女優マリオン・コティヤールの競演による、ラブストーリーだ。
名匠ロバート・ゼメキス監督は、時代に翻弄されながらも、愛する人を信じて運命に立ち向かう主人公たちが繰り広げる大人のドラマを誕生させた。
スティーヴン・ナイトのオリジナル脚本も、冒頭から観客をひきつけ、情熱的なラブストーリーはドラマティックな見どころ十分で、全編を彩るスパイ・サスペンスに心を掴まれる。
主演二人の心に秘めた熱い想いと、大切なものをすべて失いかねない極秘ミッションの間で揺れ動く感情の機微を、繊細な表現で巧みに演じ分けているところなど、ストーリーにも説得力を与えている。
第二次世界大戦下の1942年・・・。
イギリスの諜報員マックス(ブラッド・ピット)と、フランス軍レジスタンスのマリアンヌ(マリオン・コティヤール)は、あるミッションの遂行を通して、カサブランカで出会った。
二人は見事に夫婦を演じ、ナチス要人の暗殺という計画は見事に成功し、このことがきっかけで、マックスにマリアンヌへの抑えきれない感情が芽生え、やがて二人はロンドンで正式に結婚する。
最愛の娘にも恵まれ、幸せな生活を送る二人だった。
だがマックスは、マリアンヌの信じられない秘密を上司から伝えられる。
それは、マリアンヌに二重スパイの疑いがあるというのだった。
そして、72時間以内に無実を証明できなければ、妻の命をマックス自身の手で奪うか、マックス自身が処刑されるという指令が下されるのだった。
マックスは、疑惑が偽りであることを証明しようと奔走するのだったが・・・。
マックスの目に映る日常は一変し、マリアンヌの些細な行動すべてが疑わしく見えてくる。
唯一変わらないものは、マリアンヌへの愛しさだった。
不器用なマックスが、逆境の中で妻を愛し、信じきることができるか。
アメリカ映画「マリアンヌ」では、ヒロインの正体がわかった時、二人が涙で導き出した運命は、予想もつかない結末へとなだれこんでいく・・・。
幸せから一転、苦悩する夫へ、夫の変化に気づく妻・・・。
さすが名優だ。
ブラッド・ピットとマリオン・コティヤール、二人の演技派が難しい心の機微を演じ分ける。
最初は、二人は初対面にもかかわらず仮の夫婦を装って危険な任務に就き、マリアンヌの巧妙なリードがあって、ナチス側の人々も無事彼ら夫婦を信じたようだ。
マックスは、女スパイと恋に落ちるなど危険だと考えてきたが、命がけの仕事を共にする大胆で美貌のマリアンヌと、結局激しい恋に落ちてしまうのだ。
カサブランカでの危険な任務の最中で愛し合った二人の運命は、ロンドンに移ってからもサスペンス色を強め、ブラッド・ピットの抑え気味の演技と、コティヤールの奔放な存在感が、ドラマを終盤までぐいぐいと引っ張っていく。
この作品を鑑賞したある若い女性は、結末を見て、切なくて胸が張り裂けそうだと語っていましたけど・・・。
戦争という価値観が混乱する時代の中で、極秘任務を背負って結ばれた男女は、愛に安らぎを見出せるものか。
あまりにも強く激しい愛の形が、このドラマの最後に待ち受けている。
よく出来た、楽しめる映画だ。
[JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)
次回は日本映画「ホワイトリリー」を取り上げます。
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先頃もご近所の独裁国家で・・・。
この作品では、何といっても、贅沢な二人の俳優でしょうか。