徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」―人生の岐路に立つ夫婦の機微―

2011-12-12 16:00:00 | 映画


     雄大なアルプスを背景に、どこまでも田園風景が広がる。
     その麓を走る、富山地方鉄道(地鉄)が主役のような映画だ。
     鉄道好きには、こうした電車の進行方向を眺めているだけで飽きない。
     この電車、立山や宇奈月温泉への旅に欠かせない、人気の鉄道だ。

     人生とは、鉄道に乗った長い旅みたいなものである。
     本作で、満を持しての監督デビューとなる蔵方政俊が、この大自然の中を走る鉄道と一組の熟年夫婦の人生を描い
     た、ヒューマンドラマだ。
     この電車には、以前3度ほど乗ったこともあって、妙に懐かしい感じがする。
     





   
仕事一筋に生きてきた、鉄道運転士の滝島徹(三浦友和)は59歳、1か月後には定年が待っている。
ずっと専業主婦として、彼を支えてきた妻の佐和子(余貴美子)は55歳、夫婦は第二の人生を迎えようとしている。
そんなある日、佐和子は出産を機に辞めた、看護師の仕事を再開すると言い出した。
徹は、妻の突然の申し出が、すぐには理解できない。
二人は口論となり、佐和子は家を出てしまった。

第二の人生を目前に、夫の徹は、これからは妻と一緒に過ごしたい思っていた。
これからは、自分の人生を生きたいように生きたいと願った妻・佐和子と、そばにいるのが当たり前すぎて、言葉にできなかった夫・徹の気持ちがすれ違い、一度できた二人の溝は深まるばかりだった。
ついに、佐和子は、徹に離婚届を手渡すのだったが・・・。

富山の美しい田園風景を舞台に、年を重ねてきて感じる迷いや焦り、歓びと幸せ、かけがえのない絆を描こうとした狙いは十分わかる。
でも、ちょっとした意見の食い違いだけで、ほとんど話し合いもないままに、妻がいきなり家を出るというのはどうか。
夫の徹は仕事一筋できて、妻に申し訳ないという気持ちを持っており、定年になったら、佐和子を連れてどこか旅に出ようかと言おうとしていた矢先に、突然、看護師の仕事を再開すると言い出したから口論になった。
よくある話である。

徹だって、妻や子供、家庭を守るために、どんなに辛いことがあってもそれに耐えて、長い会社員生活を続けて来たのだった。
本当なら、「あなた、ほんとうにご苦労様でした」と言ってもらいたかったかも知れないのだ。
このドラマでは、夫婦の会話もさっぱりで、家を出た妻の真意もよくわからない。
だからだろうか、こんな夫婦の心理描写ばかりを綴っても、重い印象だけが残る
この程度のことで、家を飛び出すとか、離婚届だのと、慌てふためくものではない。
何か、そういう設定に持っていきたかった、蔵方監督の意図はわからなくはないが、そこから、とびきりの人間讃歌が生まれてくるものだろうか。
いいキャストに恵まれながら、一番大事な部分で演出の未熟さを感じてしまって、どうも不完全燃焼でいけない。

いまこんな時代だからこそ、人と人との絆を確かめたいという、そう考えている大人たちを描いて、ほろ苦いドラマだが、大人の愛を綴るにはもっと工夫がほしい。
これが、愛を伝えられない大人たちのドラマなのか?
結末も、しいかにも安直な展開だが、ドラマの核がしっかりと描かれていないのは、この作品の致命傷だ。
この映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」の長編作品デビューで、熟年夫婦の機微を描き切るには、蔵方監督には荷が重すぎたのではないか。

富山の美しい自然の中を、二両編成の電車がトコトコと走っている。
その向こうには白い雪を頂いた日本アルプス・・・。
この風景だけはよかった。
人生を鉄道になぞらえて描く、「RAILWAYS」シリーズの第2弾だ。
結末は、まあ、可もなく不可もなく、無難なしかし不器用な愛の展開だが、どうも安直で幼なさが気になる。
心温まる物語になるはずが、その印象は、平凡でまことに頼りない。
  [JULIENの評価・・・・★★☆☆☆](★五つが最高点)  


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2 コメント

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色々と (茶柱)
2011-12-12 23:16:20
私には判りませんが,あるんでしょうね・・・。
ちまたではでも,そう言う熟年離婚も多いのだと聞き及んでおります。

なんでしょうね・・・。
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この映画の中では・・・ (Julien)
2011-12-15 21:57:25
そうした話を安易に取り上げていて、突込みが足りないし、上滑りな気がします。
いまの世によくある下世話な話だけに・・・ですね。
熟年世代だけに、何で、どうしてそうなるのかといった問題を掘り下げないことには、ただの小さな話題でしかないわけで、ドラマのテーマとしては、あまりに弱すぎるのではないでしょうか。
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