徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「ミレニアム2 火と戯れる女」―作品のえぐい面白さ―

2010-09-27 10:25:00 | 映画

過去が真実の口を開き、女の存在は脅威となる。
スウェーデンの、ベストセラー小説「ミレニアム」の3部作の第2弾だ。
前作の第1弾は「ドラゴンタトゥーの女」で、40年前の少女失踪事件の解決までだった。
あの天才ハッカー、リスベットが本編にも登場する。
「ミレニアム2」とそれに続く「ミレニアム3」は、その1年後の物語である。
ダニエル・アルフレッドソン監督の、北欧発のスウェーデン映画は極上のミステリーだ。

「ミレニアム」で、少女売春の記事を担当していた記者が殺され、現場からリスベット(ノオミ・ラパス)の指紋が見つかる。
社会派雑誌「ミレニアム」の発行人ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)や、その妹の弁護士、ハッカー仲間の協力で、冤罪を晴らす同時に、前作「ミレニアム1」で謎のように取り残された、リスベットの過去が明かされていく。

ミカエルは、忽然と姿を消したリスベットの身を案じながらも、「ミレニアム」誌の編集に追われていた。
最新号の特集記事は、ある人身売買と少女強制売春の闇であった。
若い記者ダグ(ハンス・クリスティアン・トゥーリン)は、事件の背後で糸を引くザラ(ゲオルギ・スタイコフ)と名乗る人物の存在と、彼が公安警察の一部の人々とつながっていることを突き止めていたのだ。
同じ頃、リスベットの後見人ニルス・ビュルマン(ペーテル・アンデション)のもとを、ザラの代理人ロナルド(ミッケ・スプレイツ)が訪ねていた。
ザラが探している“ある資料”を持つビュルマンは、リスベットが保管しているビデオと交換するならば、それを渡すと告げた。
その“ある資料”とは、リスベットを暴行した時の隠し撮りの映像だったのだ。

一方リスベットは、世界各地を放浪して、ストックホルムに戻った。
ところが、彼女を待っていたのは殺人の嫌疑だった。
記事の完成を目前にしていたダグは、アパートで射殺され、現場に残された銃の持ち主であるビュルマンも、自宅で惨殺死体で発見された。
その銃から、リスベットの指紋が検出されたことから、警察は彼女の指名手配に踏み切ったのだ。
リスベットは、なぜ事件に巻き込まれたのか。

すべての謎を解き明かし、リスベットの無実を証明するため、ミカエルはザラの身元割り出しに全力を傾ける。
巧みな変装で素性を隠したリスベットも、得意のハッキングを駆使して、真相の解明に乗り出していた。

やがてミカエルは、ザラが、スウェーデンに亡命してきた元ソ連のスパイであることを突き止める。
さらに彼は、精神病院に収監されていた、少女時代のリスベットにも深いかかわりのあることがわかる。
その頃、ロナルドの痕跡をたどっていたリスベットは、ザラの隠れ家を突き止め、彼と決着をつけるため、敵地に乗り込んでいた。
だが、リスベットを追ってザラのもとに向かったミカエルは、そこに衝撃の光景を目の当たりにするのだった・・・


この映画には、いくつものミステリーがある。
もうおなじみの厚底靴に革ジャン、少年のようなか細い体に掘ったタトゥーと鼻ピアス・・・、そのリスベットは何故命を狙われるのか。
陰で糸を引く、公安警察の黒幕ザラとは何者か。
そして、少女のころ、何故彼女は精神科病院に収容され、後見人をつけられたのか。
現在の事件は、彼女の暗くおぞましい過去、父なる男へとつながっていく。
そこに浮かび上がってくるものは、女性への蔑視と性的虐待、さらにその背景にある平和国家スウェーデンの暗部(恥部?)だ。

「ミレニアム2」は、ザラ支配下の金髪の大男との死闘が、ドラマの中心に据えられている。
そして、これが「ミレニアム3」になると、リスベットを少女時代に苦しめた、卑しい男たちを断罪する法定編ということになる。
作品は、今回も前作同様に、残虐な場面や露骨な性描写もあるが、リスベットという何とも特異なキャラクターが、そのどぎつさと拮抗し、映画作品全体に怪しげなパワーと緊張感をかもし出している。

悲しみをたたえ、片や怒りをたぎらせ、あくなき暴力や脅迫に屈することなく、自前の正義を貫く。
傷だらけになりながら、復讐の鉄槌を下す女リスベット・・・。
誰にも媚びることはない。
時には、純情なまでにまっすぐな女を演じている。
ドラマは、確かに蘞(えぐ)い。
濃厚な描写とともに、その個性の鮮烈さが、このドラマを観るものを最後まで引っ張っていく。

スウェーデン映画「ミレニアム2は、まことに見ごたえのある面白さだ。
このあとすぐに、最終編「ミレニアム3」が待っている。
いったん見始めると、その展開から結末まで観ずにはいられない。
あまり過去に例を見ないエンターテインメントで、こうした作品が、北欧からやって来たこと自体歓迎ものだ。


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2 コメント

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すごいですね! (茶柱)
2010-09-27 23:59:30
三部作の第二部はたいてい中だるみだったりするのですが、連続公開する事で緊張感を保つのですね。
リスベットのキャラクターが、どことなく「スプロール・シリーズ(ウィリアム・ギブスン)」のモリイを思わせます・・・。
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この映画は・・・ (Julien)
2010-09-29 08:58:47
一部、二部は結構いけたように思うのですが、肝心の三部がどうもちょっとねえ。
作品の「すごさ」(?)というなら、やはり後半よりは前半かとも・・・。
三部(最終編)についても、近々触れたいと思っていますので・・・。はい。
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