徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「女の一生」―ある女のささやかな人生の四季をときに残酷に描いて―

2018-03-10 04:16:25 | 映画



 フ ランスの文豪自然主義文学モーパッサンの名作に、気鋭ステファヌ・ブリゼ監督が新たな息を吹き込んだ。
 若い娘が、妻になり、母になり、そして・・・。
 19世紀のフランスを舞台にした、女の転変の物語である。

 ステファヌ・ブリゼ監督は、綾なす光と影を背景に、過去と現実の人生を鮮烈に描きながら、リアリズムに徹した詩情を交えて、逆境におかれた女性の苦悶の人生を描いている。

 

 

1819年、フランス・ノルマンディー地方・・・。
十代のうら若き女性ジャンヌ(ジュディット・シュムラは、修道院の寄宿学校から5年ぶりに屋敷に戻ってきた。
ジャンヌは野菜の苗に水をかけながら、両親や乳姉妹として育ったロザリ(ニナ・ムーリス)をはじめ、懐かしい人々と再び美しい農園で暮らせることに胸を膨らませていた。

近くに越してきた子爵ジュリアン・ド・ラマール(スワン・アルロー)が、男爵の父(ジャン=ピエール・ダルッサン)を訪ねてくる。
麗しい風貌のジュリアンとジャンヌはすぐに打ち解け、急速に惹かれあう。
ジュリアンは資産を失っていたが、裕福な男爵夫妻はジャンヌの気持ちが大事だと考えていた。
ほどなく二人は結婚し、ジャンヌも幸せの絶頂にいたのだったが・・・。

世間知らずの男爵令嬢ジャンヌは、このドラマの中で人間関係の残酷さに様々な傷を負いながらも、自らの人生に理想を抱いていた。
夫となったジュリアンは、現代でも通じるキャラクターだが、彼は夫として2度に渡る不倫をし、その代償も大きい。
物語は全編を通して、ジャンヌの視点で展開していく。

余計なセリフはすべからく削ぎ落とされ、セリフの途中で場面が転換し、決定的な瞬間や結末を画面に投影させずに次の場面に進んだりするから、少しわかりずらいところもある。
ドラマが時系列で進んでも、過去は現在と交錯し、とくに幸せに過ごした過去の回想シーンは幾度も登場する。
恋愛、結婚、出産、子育て、親の死・・・。

夫の不貞に苦しみ、息子を溺愛するが、ジャンヌは財産も失っていく。
女の人生の転落が描かれる。
人間の生きる意味、個の尊厳が問われる。
失意の中に、ふと去来する幸福な記憶が喚起されて・・・。

裏切られても、蔑まれても一生懸命に生きる主人公を描いて、そこに重なるノルマンディーの四季の風景が映像としても美しい。
ヒロインのジュディット・シュムラは初々しい17歳から年老いた40代後半まで演じていて、なかなか絶妙な演技を見せる。
信じがたい夫の不貞の陰で、ジャンヌの人生に対する夢は、結局次々と打ち砕かれていく。
やや古風でスタンダードなスクリーンが、ジャンヌの生きる狭い世界を象徴しているかのようだ。
ステファヌ、ブリゼ監督フランス映画「女の一生」は、人生の四季を描いて繊細だ。
フランス古典文学の格調を感じさせる一作である。
この作品はこれまでも、世界中で幾度も映画化されており特別な新味には乏しい。
世間知らずのお嬢さまが、様々な経験をして大人になっていくプロセスを描いており、結構この映画は文学的な香気の濃厚なドラマではある。
       [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点
次回はイタリア映画「ロング,ロングバケーション」を取り上げます。


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2 コメント

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人の (茶柱)
2018-03-10 23:12:56
一生には色々ありますね。
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歌の文句・・・ (Julien)
2018-03-11 04:03:45
じゃないですが、男もいろいろ、女もいろいろですねえ。
文学ももちろんですが、歌や映画、演劇の格好のテーマになりますから・・・。
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