青森県教育委員会では、高校の教員や教頭を1年間民間企業に派遣して研修させるという取組を実施しています。平成18~19年度は「企業スピリッツ研修事業」としてそれぞれ5人の先生方を県内外の企業に派遣。平成20~21年度は、派遣対象を管理職として「企業エクスプレス研修」と名前を変え、教頭先生各3名ずつを派遣しています。
先日、これまで派遣された16名の先生方が一堂に会し、「座談会」が行われました。
派遣された企業は、新聞社、スーパー、人材派遣会社、電子機器メーカー、ホテル、食品会社など、多岐にわたります。派遣された先生方は、いい年をして(失礼!)大卒や高卒の新入社員と一緒に新人研修を受け、各社の研修体系に則って、1年間にわたって企業活動を体験してきています。
もちろん、研修後は、その成果を広く生かさなければなりません。自分の勤務校だけでなく、県内各地の高校や教員研修の場でそれぞれが感じたこと、学んだことを、講演会やパネルディスカッション、もちろん授業やHRの場でも日常的に伝えるようにしているとのことでした。
多くの先生が、企業の厳しさ、スピード感、「見える化」、コンプライアンスの大切さなど、学校という職場とは異なる尺度に最初は戸惑いながらも、1年間の研修を通して、学校では絶対にできない体験ができたことを財産だと感じているようでした。生徒にしても、そういう体験をしてきた先生の話はすごく現実感があることでしょう。
配布された資料から、いくつか印象に残った部分を拾ってみます。
・変化のスピードの速い社会では、従来のような「待つ」、「やらされる」、「してもらう」という考え方は通用しない。企業が求める働き方は、「自ら考える」、「相談する」、「人の話を聞く」、「まずやってみる」というキーワードにある。
・企業では驚くほど読書(読書感想文)を重視している。「読書」と「書くこと」の習慣づけが社会人になって役立つ。
・組織が目標を達成するためには、リーダーシップは確かに必要だが、リーダーを支える「フォロワー」の力も非常に重要で、フォロワーシップが高い組織は、様々な困難を乗り越え発展することができる。
・「派遣社員なしでは企業活動は成り立たない」現状では、企業が高校生を正社員として採用することには、大きな意味があり、正社員として雇用する高校生に対して期待がある。この点を教員が生徒と共に考えることが、生徒のキャリアプラン(生きる道)へつながり、早期離職防止の手立ての一つになると考えている。
・早期離職者の話に共通するのは「聞いていた話に無い業務があった」、「上司や先輩と合わなかった」の2点です。2点に共通するのは社会のつながりまで考えが至っていなかったことです。何もできない新入社員に給料を支払い、採用するのは会社にとって大きな投資です。投資は回収しなければなりません。1、2年で退職したらその投資は失敗といえるでしょう。
・(戻ってからの学校現場では)大学に入ることができるかどうかの前に、世の中でまっとうに働いていく気概と覚悟があるのかという視点を意識させている。
・昨今の職業・進路指導のキーワード=「自己実現」は、就職したからとてすぐに達成できるものではなく、むしろ職業人の最終目標とでも言うべきものだろう。そこに行き着くためには、対人関係に気を配りながら、基本的な礼節を重んじた、長い「下積み」の期間がやはり必要だ。「自己実現」以前に「他者理解」能力が重要な期間である。「こんな仕事では『自己』が『実現』できない」などと、新卒者たちは勘違いしてはいないか。あるいは、彼らに勘違いさせるような教育をしてはこなかったか。「我慢」を教えず、知らず知らずのうちに「傲慢」を育ててはこなかったか。
最後の感想など、身につまされますね。こういう考えを持つ先生が増えたなら、きっとキャリア教育ももっとうまく進むのでしょう。
子どもたちが「職場や職業を体験する」だけでは解決しないことが多すぎるのです。むしろ、普段の学校生活、家庭や地域でのふるまいに気をつけること、そういう毎日の少しずつの積み重ねが、社会人として職業人としてきちんと仕事ができる人間を育てるのだと、今回の座談会を聞いて改めて思いました。キャリア教育の視点を持つということは、卒業してたとえば10年後の子どもたちの姿にきちんと思いをはせられるかどうかです。長期研修に参加した先生方だけでなく、もっと多くの先生がそんな意識を持ってくれたらと、願わずにはいられません。
先日、これまで派遣された16名の先生方が一堂に会し、「座談会」が行われました。
派遣された企業は、新聞社、スーパー、人材派遣会社、電子機器メーカー、ホテル、食品会社など、多岐にわたります。派遣された先生方は、いい年をして(失礼!)大卒や高卒の新入社員と一緒に新人研修を受け、各社の研修体系に則って、1年間にわたって企業活動を体験してきています。
もちろん、研修後は、その成果を広く生かさなければなりません。自分の勤務校だけでなく、県内各地の高校や教員研修の場でそれぞれが感じたこと、学んだことを、講演会やパネルディスカッション、もちろん授業やHRの場でも日常的に伝えるようにしているとのことでした。
多くの先生が、企業の厳しさ、スピード感、「見える化」、コンプライアンスの大切さなど、学校という職場とは異なる尺度に最初は戸惑いながらも、1年間の研修を通して、学校では絶対にできない体験ができたことを財産だと感じているようでした。生徒にしても、そういう体験をしてきた先生の話はすごく現実感があることでしょう。
配布された資料から、いくつか印象に残った部分を拾ってみます。
・変化のスピードの速い社会では、従来のような「待つ」、「やらされる」、「してもらう」という考え方は通用しない。企業が求める働き方は、「自ら考える」、「相談する」、「人の話を聞く」、「まずやってみる」というキーワードにある。
・企業では驚くほど読書(読書感想文)を重視している。「読書」と「書くこと」の習慣づけが社会人になって役立つ。
・組織が目標を達成するためには、リーダーシップは確かに必要だが、リーダーを支える「フォロワー」の力も非常に重要で、フォロワーシップが高い組織は、様々な困難を乗り越え発展することができる。
・「派遣社員なしでは企業活動は成り立たない」現状では、企業が高校生を正社員として採用することには、大きな意味があり、正社員として雇用する高校生に対して期待がある。この点を教員が生徒と共に考えることが、生徒のキャリアプラン(生きる道)へつながり、早期離職防止の手立ての一つになると考えている。
・早期離職者の話に共通するのは「聞いていた話に無い業務があった」、「上司や先輩と合わなかった」の2点です。2点に共通するのは社会のつながりまで考えが至っていなかったことです。何もできない新入社員に給料を支払い、採用するのは会社にとって大きな投資です。投資は回収しなければなりません。1、2年で退職したらその投資は失敗といえるでしょう。
・(戻ってからの学校現場では)大学に入ることができるかどうかの前に、世の中でまっとうに働いていく気概と覚悟があるのかという視点を意識させている。
・昨今の職業・進路指導のキーワード=「自己実現」は、就職したからとてすぐに達成できるものではなく、むしろ職業人の最終目標とでも言うべきものだろう。そこに行き着くためには、対人関係に気を配りながら、基本的な礼節を重んじた、長い「下積み」の期間がやはり必要だ。「自己実現」以前に「他者理解」能力が重要な期間である。「こんな仕事では『自己』が『実現』できない」などと、新卒者たちは勘違いしてはいないか。あるいは、彼らに勘違いさせるような教育をしてはこなかったか。「我慢」を教えず、知らず知らずのうちに「傲慢」を育ててはこなかったか。
最後の感想など、身につまされますね。こういう考えを持つ先生が増えたなら、きっとキャリア教育ももっとうまく進むのでしょう。
子どもたちが「職場や職業を体験する」だけでは解決しないことが多すぎるのです。むしろ、普段の学校生活、家庭や地域でのふるまいに気をつけること、そういう毎日の少しずつの積み重ねが、社会人として職業人としてきちんと仕事ができる人間を育てるのだと、今回の座談会を聞いて改めて思いました。キャリア教育の視点を持つということは、卒業してたとえば10年後の子どもたちの姿にきちんと思いをはせられるかどうかです。長期研修に参加した先生方だけでなく、もっと多くの先生がそんな意識を持ってくれたらと、願わずにはいられません。
②「自己実現」と頭で考えるより、まず「体」で体感して失敗して仕事を一つ一つこなして行くことが大切です。新分野に挑むときは、その世界で一番できる人物の薫陶を受けることが重要です。また、失敗例がすごく参考になります。
③民間人校長とも仕事したことありますが、海外経験があっても大企業でしか仕事をしてないキャリアでは学校経営は難しいと感じました。学校には訓練された部下はいないのですから(組織が分かっていない。)、中小企業のオヤジと同じで自分が率先垂範、自分自身が風を起こさないと経営できない。
④民間経験されるなら、銀行ではなく信用金庫で歩いてお金を集める、町役場なら滞納税徴収係を勧めます。お金が天から慈雨のように降ってくると教職員は思っています。ここを変えないと教育は失業対策的公共事業から進化できない。少子化のトレンドに流され、韓国や中国の高い意欲と訓練された若者に敗退必死です。
で、私は幸いながら、素敵で尊敬できる先生方に恵まれていたので、将来の夢は小中と『学校の先生』でした。
なぜならばソコしか世界を知らなかったから。
学校の先生も同じなのではないのでしょうか?
外から見て学校は、なんて狭い世界なんだろうと思います。
悪いとは言わないけれど…。
将来どこの大学に行くかよりも、どんな社会人になるか、
どんな職業があるか、それを教えてもらえる進路指導ができる先生がいたら
その学校って素敵だろうなと思います。
閉鎖的過ぎる学校と言う場に民間人が溶け込むのは、相当難しいように感じます。
もし、学校の先生に、ある程度社会人経験をつんだ人が就任したら、
学校教育はもっと面白くて違ったものになるのではないでしょうか?
教育委員会の取り組みを否定するつもりはありませんが、
企業で1年仕事をさせてもらった、としても、
そんな重要な仕事はさせてもらえないのではないかと推測します。
(仕事に重要じゃない仕事はないかも知れないけれど)
それで民間企業のスピリッツが身に付いたと言えるのでしょうか?
企業として、その看板を背負わなければいけない対顧客とやり取り、
折衝などする場面に派遣で来た先生を使いませんよね。
せっかく企業で研修するなら、せめてそういう場に同席くらいさせてほしいと思います。
学校の先生にも出来ることってあると思います。
私、学校の先生ってプレゼンとか上手そうな気がします。
時間内に相手に要点を伝える技術。瞬時に相手の問いに答える技術。
専門だから出来ることかもしれませんが、そういう「カワシ」的なものは
ベテランの先生ってとっても上手いと思います。
交換留学的な感じで、その人の同士のポスト、その人の仕事を丸々交換できる制度があったら
楽しいかもしれませんよね。お互いに自信になると思うし。
SFちっくで非現実的かもしれませんが、入れ替わり。
私一度学校の先生してみたいな☆
教えられるとしたら、生物とコミュニケーション学(自己流)くらいですが(笑)
先生も生徒もやらされてる感を無くさない限り未来は無いのではないでしょうか。
企業も一緒ですが。
何事もスポンティニアスでなければ義務やお勉強で終わってしまうのだと私は思います。
貴重なご意見ありがとうございます。
鈴木さんのおっしゃるとおり、「学校には訓練された部下はいない」んですね。そのあたりが学校という職場の特殊なところです。だからこそ、リーダーシップが問われるわけで。
Cさんの言うように、私も教員は社会人経験者をもっともっと増やすべきだと思います。人生の最終目標が先生で、そのために学校以外の場所で働いて、なんてちょっといいですよね。
この取り組みは、他県でも同じようなのがいろいろあって、やっぱり学校も変わらなきゃ(今更ですが)ということの証なんだろうなと思います。ま、受け入れる企業もいろいろみたいだし、まだまだ教員を受け入れてくれるだけでありがたいというところでしょうか。これまでは、そんな機会さえほとんどなかったのですから。もちろん、民間との人的交流もどんどん進めるべきですね。実際経験してみることが、何よりの連携の糸口です。
それにしてもあなたが学校の先生を目指していたとは知りませんでした(^_^;)
②民間経験のある中途採用組の教職員を5例見たことあり。商社マンや新聞記者を辞めて高校・英語の先生をやっている例では、優秀2名、普通1名。国鉄から行政マンになった1名は最優秀。英語専門学校の先生を辞めて中学高校の英語の先生をやっている例は普通1名です。
③量的には民間経験者の教職員は少ない。キャリアも民間3年程度で仕事の技術が未熟です。だた、意欲が高い方が多いのが救いです。能力的には帰国子女ではなくてもTOEIC915点もいます。ドイツで商売していた英語力は本物です。もちろん民間のノルマ至上主義に破れて、のんびりした公立学校にまぎれこんできた者もいますが。
④民間数年経験して教員になり教頭に昇格昇任するとき1年間民間会社で研修を命じられた気の毒な方もいました。Cさんの言うとおり有名商社に研修にいっても「お客様扱い」のため、ホント気の毒。
⑤アメリカのように回転ドア1枚とおると民間人が公務員に、公務員が民間人になれる実力主義社会になれればよいと総論ではおもいます。が、毎日テストのような社会では闇もまた深刻です。夏休みがあるので民間から公立学校に来たような先生では本人にとっても生徒さんにとっても不幸な結果を招くはず。男子なら1分間時間をいただければ能力を見抜く自信があります。が、「くのいち」は上手に化けているので自信ない。仕事を離れては、男子の能力鑑定には必ず夫婦同伴。苦手な奥さんを集中的に観察しています。