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こうやまのりお『ヒット商品研究所へようこそ!』

2011-11-18 | └キャリア教育
キャリア教育で子どもたちに関わった人たちの多くは、自分の仕事に対する思いとか最初の決意とかを振り返るいい機会になったと語っています。子どもたちに仕事や生き方を語ることは、大人にとっても、というか、もしかしたら大人にとってこそ意味のあることなのかもしれません。

ただ、子どもたちに仕事の素晴らしさを教えたいと思っても、さて、自分自身を振り返ってみると、本当に自分の仕事が好きなのか、楽しんで仕事をしているかとなると、ちょっと不安になる大人は多いのではないでしょうか。自分の本当にやりたいことは今の仕事じゃないんだよねーというジレンマで、子どもたちの前で語るのに、腰が引けてしまう大人はけっこう多いかもしれない。

そんな中で、おそらく数少ない、「わくわくドキドキ」しながら仕事をしている大人たちを紹介しているのが『ヒット商品研究所へようこそ!』という本です。しかも、彼らは自ら楽しんで仕事をしているだけでなく、子どもたちの「わくわくドキドキ」を引き出すような商品を生み出している。ま、そういう仕事をしている人って滅多にいないだろうから、ちょっとズルイ気もするのですが、それでも、彼らがなぜ今の仕事に就いたのか、なぜ子どもたち向けの「ヒット商品」を生み出せたのか、そのあたりの秘密を知るだけでも楽しい。

紹介されている「ヒット商品」は、「ガリガリ君」、「瞬足」、「青い鳥文庫」の3つ。



「ガリガリ君」は、赤城乳業という会社が1980年に開発したアイス。子どもたちが遊びながら片手で食べられる、スティックタイプのかき氷アイスとして登場しました。このあたりから既に「遊び心」を感じますが、赤城乳業という会社自体、いろんな意味で「遊び心」にあふれた会社のようです。もちろん、コンビニに目を付けたとか、一つの味で3種類あるパッケージの面白さとか、定期的に時代の潮流とコラボレーションしたガリガリ君を出すとか、販売や宣伝の戦略はあります。でも、これだけ長い間子どもたちの人気商品になっているというのは、会社そのものが「遊び」を忘れない、つまり、子どもたちの立場に立つことを忘れていないということなんだろうと思います。



子どもたちの立場に立つといえば、「瞬足」の誕生もそうです。アキレスという靴メーカーが作りだした「神様のくつ」。「運動会で速く走れるくつ」、「コーナーで転ばないくつ」という、多くの子どもたちが欲しがる運動靴を、大人たちが一生懸命考えて、デザインして、商品にした。子どもたちの夢を叶えられるものづくりって、うらやましい。



子どもたちの夢が本を読むことではぐくまれることも多いでしょう。今の子どもたちに大人気だという「青い鳥文庫」は、作家たちも子どもたちの思いをちゃんととらまえて作品を書き、届けてくれる。共通点は、主人公が等身大の子どもだということ。私たちの世代は、自分たちの世界とは全く別世界の物語にわくわくしたものですが、「青い鳥文庫」のシリーズは、身近でリアルな世界を舞台にしながら、フシギな人物が登場したり、ちょっとミステリアスな物語が展開したりする。あれ? これって「ドラえもん」あたりに通じるのかも。今の子どもたちが「青い鳥文庫」に夢中になるのも、それが藤子不二雄的、だからなのかもしれませんね。

そして、もうひとつ、「青い鳥文庫」の人気の秘密は、子どもたちが読みたいと思うような本づくりをしていることです。誕生から30周年を記念して2010年に開催された文学賞の募集イベント。その名も、「おもしろい本が書きたい!」という文学賞です。その選考会には、「ジュニア審査員」と称して、名うての「青い鳥文庫」愛読者が参加、子どもたちも大人の審査員と一緒に作品を選ぶという方法をとっています。子どもたち自身が読みたい本を選ぶわけですね。その結果、大賞に輝いたのは、14歳の中学生が書いた物語でした。準大賞は11歳。

大人が子どもにおもねるのは嫌いですが、思いを汲み取ってあげることは大切ですね。子ども向けのヒット商品って、どれも、大人が子どもの目線まで降りていて、「わくわくドキドキ」しながら、しかも大人の立場で一生懸命考えてるからウケるんだなあ。

「青い鳥文庫」のエピソードから、もう一個学んだことがあったのですが、それはまた別の機会に紹介します。

『ヒット商品研究所へようこそ!』≫amazon


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