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興味深いソグド人

2006-04-27 | ■世界史
4月26日付の朝日新聞。「見えてきたソグド人」という見出しが目に飛び込んできました。

ソグド人。まるでウルトラセブンに出てくる星人のような名前です。ソグディアナ星からやってきたソグド星人。なんかいそうじゃないですか?

ソグド人は、シルクロードを語るには欠かせない民族です。4~8世紀にかけて、東西世界を結ぶ「オアシスの道」(いわゆる「シルクロード」)のど真ん中で、サマルカンドを拠点として中継貿易により栄えました。当時のオアシス商人たちの売買の記録を見ると、金・銀や絹織物などの売買の担い手はほとんどがソグド人だったことがわかります。

交易路沿いに多くの植民地まで作った彼らですが、なぜかそれらを統一した国を作りませんでした。匈奴(きょうど)、突厥(とっけつ)、ウイグルといったその時代時代の遊牧国家に政治的には従属しながら、経済的、文化的には指導的地位にあったと言われています。また、ソグド文字という立派な文字を持ちながら、自らの歴史を書き記すことがなかったため、その社会の実態は謎とされてきました。

ソグド人は、当然のように中国にも多数住みついていました。唐(618~907年)の時代、首都長安(現西安)には多くのソグド人有力者が住んでいました。唐朝衰退の契機となった安史の乱(756~763年:楊貴妃はこの反乱のさなか、死に追いやられた)を起こした節度使・安禄山もソグド人だったと言われています。

その西安でソグド人の墓が相次いで発見され、出土した墓誌の解読・解析が進んでいるというのが記事の趣旨でした。たとえば、ある墓誌には、漢文とソグド文字が併記され、埋葬されている人の名前と官職が記されている。苗字からソグド人であることがわかり、また「薩保(さっぽう)」という官職名から唐のソグド人社会における地位が判明するというわけです。これまで謎とされてきたソグド人の社会や風俗がしだいに明らかになりつつあるようです。

自分たちの国を持たない代わりに、ソグド人はその経済力を背景に、中国で大きな影響力を持っていたらしい。安史の乱だけでなく、唐朝の成立にも直接関わっていたという見方もあるようです。また、彼らの作った文字は、のちのウイグル文字、モンゴル文字、満州文字などのルーツになっています。

ソグド人が信仰していたのは、善悪二元論からなるゾロアスター教でした。西安で発見された墓誌には、拝火教とも呼ばれるゾロアスター教が崇拝する炎の彫刻が残されています。ゾロアスター教は長安でもそれなりに流行しましたが、中国では仏教が、また故郷の中央アジアではイスラム教が広く信仰されるようになり、現在ではインドに数万人の信者がいるのみになっています。なお、ニーチェの書いた「ツァラトゥストラかく語りき」の「ツァラトゥストラ」とはゾロアスター教の創始者ゾロアスターのことです。また、ゾロアスター教の最高神を「アフラ・マズダAhura Mazda」と言います。自動車メーカーの「マツダ」は、創業者の名前に拠っていると同時に、「MAZDA」というスペルは、「知恵」を意味する"Mazda"に由来するんだそうです。

商売上手、という側面だけでなく、文化的、政治的、軍事的に非常に高い水準にあったと推測される「幻の民」ソグド人。なんだか興味を惹かれてやまない民族です。


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