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世界最古の靴!

2010-06-16 | ■世界史
ネアンデルタール人に続き、古い話で恐縮ですが、「世界最古の靴」が発見されたのだそうです(2010年6月10日付け各紙)。トルコ、イランの北、グルジアの南、カスピ海と黒海の間にあるアルメニアという国の洞窟から2年前に発見された革靴が、放射性炭素年代測定法による分析の結果、紀元前3,500年前のものと分かり、現在のところ、「世界最古」なのだとか。

片方しか見つかっていないそうですが、牛革製で24.5cm、なんと靴ひもまで残っていたというから驚きですね。いったいどんな人が履いていたのか。

靴は、衣服と同じく、元々は、身を守るために生まれたものだと考えられます。岩や灼熱の砂から足を守るために、古代の人々は足を靴で覆うようになった。靴は全体重を支えるわけですから、丈夫で柔軟でなきゃいけない。とすれば、今回発見されたような動物の皮を加工して作られた革靴が一般的だったのではないかと思われます。紀元前3,000年ほど前にメソポタミアに栄えたシュメール人の神殿からは、陶器製の靴が発見されていますが、もちろん実用ではなく、ふだん履いていた革靴を陶器でかたどった神事用でしょうね。

実は、靴より古い歴史を持つのがサンダルです。古代エジプト人はサンダルを履いて、砂漠の熱さから足を守っていましたし、現在確認されている最古のサンダルというのは、米国・ミズーリ州の洞窟で見つかったものだそうです。それは、約8,000年前のものだそうです。

中国や日本の弥生時代の遺跡からは、下駄の原型とも言われる「田下駄」が発見されています。水田の泥に足が埋もれてしまわないようにと、こちらの履き物は極めて実用的。

ヨーロッパでは、中世から近代にかけて、靴は、実用よりデザイン性や装飾が重んじられるようになっていきます。その象徴的な靴が「パンプス」です。パンプスといえば、今では女性用の靴ですが、元々は女性用ではなく、馬車の御者用の靴でした。「Pumps」という名前は、御者が馬車のブレーキをかける時、ペダルを数回踏み込む動作が手押しポンプの動きに似ていた(車の教習所で習うポンピング・ブレーキですね)ことに由来しています。馬車を御しやすいようにと、元々足の甲に当たる部分が大きくえぐられていたのですが、甲を見せることによってより脚が長く見えることから、パンプスは、パーティ用の靴として女性の間で流行するようになりました。その後、さらに脚を長く見せるために「ハイ・ヒール」が生まれたのは言うまでもありません。いずれにしても、歩くのにはあまり適した履き物とは言えませんね(履いたことはないけど)。

一方、男性用の靴として「ローファー」(Loafer)がありますが、こちらは元々、貴族の伝統的な室内履きとして使われていた靴です。やはりポイントは足の甲部分にあります。室内履きですから、やはり「くつろげる」ことが大事で、そのため、甲(インステップ)が緩めにできています。ローファーはシンプルなものを基本としながらも、インステップ部分に様々な装飾が施されるようになっていきました。

ちなみに、Loaferの由来は、「ゴロゴロして仕事をしない怠け者=Lorfer」。要するに、室内の書斎やクラブで履くための靴であり、本来、外を歩き回るための靴ではなかったのですね。これもまた不思議な話です。なぜ私たちは今、そんな本来の用途ではなかった靴を履いて平気で外を歩いているのか?

パンプスやローファーに限らず、今、私たちは用途に応じて様々な靴を持っています。靴を作る技術も格段に進歩しています。スポーツ・シューズというのも、現代が生み出した技術の粋ですね。野球にしてもサッカーにしても、ユニフォームは同じでも、靴は選手それぞれで選ぶことができます。ワールドカップのサッカー選手たちも、それぞれに一番合ったメーカーのシューズを各自で選んでいるそうですね。シューズはプレーにも大きな影響を与える。

でも、何千年も前に生きていた人々は、そんなことは知らなかった。靴の目的はただ1つ、足を守ること。だから靴の種類なんてない。そんな「靴の原点」に戻ってみると、余計なものをどんどんそぎ落として「シンプル」なのがやっぱり一番人間に合っているのではないかと改めて思います。そういう靴が一番履き心地が良かったりしてね。


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