カクレマショウ

やっぴBLOG

宮大工の“ミライ”

2007-06-14 | └キャリア教育
今週のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、岩手県の宮大工・菊池恭二さん。

私は、建築に関わる仕事にはもともと強い憧れがあるのですが、日本伝統の建築様式を伝える宮大工の仕事をじっくりと見たのは今回が初めてでした。ふだん何気なく見ている寺院の屋根の曲線が、経験とカンに培われた深い「読み」で作られていることに、新鮮な驚きを覚えました。「茅負」(かやおい)と呼ばれる、屋根の反りを決める部材をどう取り付けるか。ミリ単位の「読み」はほとんど神業です。

菊池さんは、若い頃に出会った棟梁に大きな影響を受けています。あんな棟梁になりたい、という思いが、菊池さんの仕事に対する原動力でした。この前見た映画「しゃべれども しゃべれども」では、師匠は三つ葉の究極の憧れです。身近にそのような仕事の手本、生き方の手本となる人がいるのは、なんと幸せなことでしょう。でもそれは、決して「ラッキー」だからということではなく、そういう人とめぐり会うだけの「力」が本人にもあるのだろう、と思います。

いい仕事をすれば世間に認められ、認められればさらにいい仕事も入ってくる。たとえ「奈落の底」に突き落とされてもはい上がることができる。どんな職業であれ、「人生経験の深さ」こそが、いい仕事を生み、挫折にも耐えられる強さになっていくんだなということを改めて感じました。

ところで、宮大工が作る建物は、寺院、神社、山門など。いずれも数百年はもつという建築物です。そんなに頻繁に新築工事はないよなあ~と思いますが、それこそ数百年前に作られた建築物、今では国宝や重要文化財となっている建築物の修復や改築の仕事もあるのですね。推測ですが、いにしえの宮大工が心を込めて作った建物に手を入れること自体が、宮大工にとってはとてもいい勉強の機会になっているのではないかと思います。

かつては数百人以上いた宮大工も、現在は50人程度だそうです。今回、菊池さんが、あるお寺の建築にあたり、棟梁に指名したのが25歳の若者。もちろん初めての経験です。菊池さんが、叱りとばしながらも、とても暖かい目で彼を見守っていたのが印象的でした。彼もすごい若者だと思います。宮大工という、どちらかというとマイナーな世界に足を踏み入れ、菊池さんを師匠と仰いで生きていくことを決意したということが。菊池さんはもちろん「プロ中のプロ」ですが、私には、あの25歳の若者も、仕事の面ではまだまだ修行中なのでしょうが、自分のキャリアアンカーをきっちり定めている時点で、既に立派なプロフェッショナルに思えました。

  ねぇ ぼくらがユメ見たのって
  誰かと同じ色の未来じゃない
  誰も知らない世界へ向かっていく勇気を
  “ミライ”っていうらしい

      ─「Progress」作詞・スガシカオ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿