カクレマショウ

やっぴBLOG

「外来語言い換え」と一つの矛盾

2007-06-15 | ■社会/政治
私もどっちかというと、ついカタカナの「外来語」を使ってしまう方で、いつも反省しているのですが、実は自分自身意味がよくわかっていないのに使っていることもあって、ますます反省です。

「分かりにくい外来語を分かりやすくするため」に、国立国語研究所が数年かけて「外来語言い換え提案」をまとめたことは、しばらく前にマスコミ等でもさかんに取り上げられて話題になりました。「イノベーション」は「技術革新」に、「インフラ」は「社会基盤」に、「インフォームド・コンセント」は「納得診療」とか「説明と同意」に、「プレゼンテーション」は「発表」に。きちんと日本語に言い換えましょう。「ワークショップ」は「研究集会」ですよ~。(!)

「言い換え提案」は、そもそも、それぞれの外来語がどのくらいの「認知度」と「理解度」があるのかという調査に始まっています。「公共性の高い媒体でよく用いられている外来語」400語近くを「取り出し」(「ピックアップし」と言いたくなる!)、その言葉をどのくらい「見聞きしたことがあるか」(認知率)、「意味が分かるか」(理解率)という世論調査をしたのです。

それによれば、最も認知率の低かったのは「トリアージ」という言葉。認知率4%。なんのこっちゃ?と言い換え語を探して見るも、言い換え語が提示されている176語には「トリアージ」は含まれていないのです。ネットで検索してみたら、神奈川県のホームページに、「トリアージ(triage)とは、医療機能が制約される中で、一人でも多くの傷病者に対して最善の治療を行うため、傷病者の緊急度や重症度によって治療や後方搬送の優先順位を決めることをいいます」とありました。うーむ、確かにこんなフクザツなことを「言い換え」するのは難しそうです。逆に、もっとも認知率が高かったのは「リストラ」で、97.8%の人が見聞きしたことがあるのだそうです。こちらも「言い換え語」は載っていません。

たまたま見た同研究所のサイトに、これまでの「外来語」言い換え提案を支えてきた外来語研究の成果に関する報告書が掲載されていました。なかなか面白い内容(たとえば、国会会議録における「イノベーション」という外来語の使われ方についての研究など)なのですが、それはさておき、目次を見て、おや?と思う。「第3部 コーパスを活用した外来語の研究」。

「コーパス」? それこそ「一般の人々にとってわかりにくい外来語」じゃないのでしょうか。これは言い換えなくていいのか? 冒頭の「本報告書の目的」を読むと、「電子化資料をコンピューターを介して扱う、コーパス言語学の領域の論文9編を掲載した」とあります。…よくわかりませんね。

確か、言い換えの提案は、外来語をカタカナ表記のまま使うのではなく、わかりやすい言葉で言い換えることによって、それぞれの持つ意味を広く普及させること、が目的だったはずです。その趣旨には大賛成です。ところが、その趣旨で書かれているはずの「報告書」で、「コーパス」ということばを平気で使っていることに、なんだか矛盾を感じざるを得ません。


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