カクレマショウ

やっぴBLOG

本来の「川」を取り戻す試み

2006-12-28 | ■環境/科学
地元紙の記事。コンクリート護岸の施された今別川に巨石を投入し、魚を呼び戻そうという試みが紹介されていました(2006年12月27日付け東奥日報)。

2年前から行っているのだそうで、今回は25トンもの巨石が投入されたとか。ショベルカーを使って、岸辺近くに巨石を積み上げて魚礁を作ったり、川の真ん中に放り込んで水流に変化を与えるんだそうです。

今別川に限ったことではなく、コンクリートの衣をまとった無粋で無惨な川の姿は全国各地で見ることができますね。そんな人工的な川は、確かに流れは一定で規則的かもしれませんが、「瀬」とか「せせらぎ」とか、川が本来持っている「おもしろみ」には欠ける嫌いがあります。「おもしろみ」というのもあくまでも人間からの見方でしかありませんが、コンクリートは、川に対する親水性をも阻むものとなっています。

コンクリートで川岸を固めてしまうのは、「治水」のためです。大雨による洪水の被害を食い止めるためです。それはもちろん必要なことですが、一方で、人間の手が加えられることによって、魚の生態系を破壊していることもまだ事実。今別川も、コンクリート護岸のために魚の数は「めっきり減った」のだとか。川ならまだしも、これが海ともなると、コンクリート化は、めぐりめぐって結局は漁業を脅かす事態も引き起こしているようです。漁港には防波堤や人工護岸が当たり前のように存在しますが、魚にとってはちっとも当たり前のことではないのです。

イカの水揚げで知られるむつ市大畑地区(旧大畑町)では、あえて漁港の護岸を破壊して、自然の磯を再生する試みが行われ、磯を中心とした近海漁業が復活しつつあると言います。こうした人間と生き物の共生を目指す「近自然工法」が、あちこちで見られるようになってきています。たとえば、コンクリートではなく自然石や緑化ブロックを護岸に用いたり、洪水の際の水流を弱める水制工を施したりといった、「川にやさしい」工法が増えています。今別川の試みもそんな流れをくむものだと思います。

コンクリートで「自然」を封じ込めてしまったのも人間、その同じ川にわざわざ巨石を放り込んで「自然」を人工的に作り出そうとするのも人間。なんだか妙な話だとは思いますが、手をこまねいて川が壊れていくのを見ているのに比べたら、よっぽど素敵な取組です。「やり直し」ができるのも人間ならでは。

こういう試みが地道に続けられる限り、今別川が本来の川の姿を取り戻す日もそう遠いことではないでしょう。


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