カクレマショウ

やっぴBLOG

「神」の領域

2007-09-23 | ■環境/科学
2005年8月、米国東南部に甚大な被害をもたらしたハリケーン「カトリーナ」に象徴されるように、近年、ハリケーンの巨大化が顕著になっています。一方で、ハリケーンによる被害を最小限に食い止めるため、その進路を変えたり勢力を弱めるための研究が進んでいるようです。

日本(NHK)、英国(BBS)、ドイツ、米国の共同制作によるドラマ「スーパーストーム」(全3回、NHK総合テレビ)は、そんなハリケーン対策に取り組む科学者たちを描いたドラマです。また、こうした「気象操作」研究の背後には、政治的な背景が潜んでいることも次第に明らかにされていくことになります。

 第1回 ストームシールド計画
 第2回 隠された“誤算”
 第3回 ニューヨーク直撃を回避せよ

米国政府は、気象学者を招集してハリケーン対策チームを結成します。その担当が「商務省」であるというところが何とも言えないですね。セリフにもありましたが、政府はハリケーンによる「人的被害」よりも「経済的損失」の大きさを恐れていることが露骨に現れています。

ハリケーンの勢力を弱める方法として、まずは気象学者のサラ・ヒューズの唱える、凝結核の散布方法が試みられる。つまり、飛行機でハリケーンの中に入り、凝結核となるヨウ化銀を散布して(“クラウドシーディング=雲の種まき”)、台風の目の周りに新しい「壁」を作る方法です。ところが、思いもかけない現象が起こり、犠牲者を出してしまう。実験は失敗し、実験台となったハリケーンは勢力を拡大していく。

第2回では、次の手段として、西海岸で人工的に低気圧を作り、その勢力でハリケーンを大西洋側に押しやる形で進路を変えようという方法が試みられる。コンピュータ上で何度もシミュレーションされるが、進路の変更先がなかなか定まらない。キューバやハイチといったカリブ海の国々に上陸してしまっては意味がない。大西洋上で勢力を弱めさせなければ…。

第1回で、ある上院議員が何気なく言います。「たとえばキューバに向かわせることも?」。ハリケーンの進路を人工的に変えられるということは、ある地域の被害を防ぐというだけでなく、逆に、被害を別の地域にもたらすこともできるということなのです! 気象操作が軍事的にも非常に大きな意味を持つわけです。何もハリケーンだけでなく、既にベトナム戦争で人工的に雨を降らせるといった作戦があったようですし、中国やロシアでもそうした研究が進んでいるようです。

軍事的ではないのですが、中国では、北京五輪の開会式の日(2008年8月8日)に「晴れさせる」ための準備を進めているという話も聞きます。…なんか変ですよね。

「晴れさせる」という言い回しがおかしいように、そもそも天気を人間が操作しようなんてこと自体がおかしい。奇しくもドラマの第2回で原子爆弾の開発者の一人、オッペンハイマーの言葉が出てきましたが、「気象操作」って、核兵器と同じくらいタチの悪い「神」への冒涜行為だと思います。人間が決して手を出してはいけない領域って、確かにあると思うのですが。

地球温暖化がハリケーン巨大化の要因とも言われていますが、人間がもたらした地球温暖化が気象の変化をもたらし、それをまた人間が人工的に変えようとしている。宇宙人が見たらなんと滑稽なことよと笑っているかもしれませんね。

来週、第3回は、進路を変えられたハリケーンがなんとニューヨークに上陸するという、いかにもドラマらしい設定のようです。それはそれで、どんな結末を迎えるのか楽しみです…。

 

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2 コメント

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はじめまして。 (nuuc)
2007-09-23 20:35:18
はじめまして、九州国際大学山岳部のHPを管理しているnuucといいます。
突然なのですが、映画の解説等がすごくわかりやすかったので、やっぴさんのページにリンクを貼らせて頂きました。
映画の後に読んで、もう一度映画を見たくなりました(笑)
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はじめまして (やっぴ)
2007-09-24 01:43:48
nuncさん
やっぴらんどに訪問いただき、またリンクを張っていただき、ありがとうございました。

歴史や背景を知ってから見た方が楽しめる映画ってたくさんあると思います。これからもできるだけ紹介していきたいと思っていますので、よろしくお願いしま~す。
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