私たち日本人が生み出した独自の文字が「かな」です。もっとも、かな文字は、漢字をもとにしてできた文字ですから、「独自」というのは正確ではないのかもしれませんが。
かなには、「ひらがな」と「カタカナ」の2種類あります。これも考えてみれば不思議なことで、同じ音を表すのに、なぜ日本人はわざわざ2種類もの文字を作らなければならなかったのか? たとえば、"a"という音を表すのに、日本人は、漢字の「安」から「あ」というひらがなを作り、「阿」から「ア」というカタカナを作った。文字を覚え始める子どもたちにとってはいいメイワクですよね。日本の子どもたちが最初に覚える文字はたいてい「ひらがな」からですが、ようやく46文字(濁音、半濁音など入れるとそれ以上)ものひらがなを覚えたと思ったら、今度は同じ数のカタカナまで覚えなくてはならない。もちろんそれだけでは足りない。「かな」の次には、無数の漢字を覚えるという試練が待っているのです…。とどめに、「ローマ字」表記の学習も必修ときては! 自分たちのコトバを書き表す文字を、こんなに時間と労力をかけて教育しなければならない国って、ほかにはたぶんない。
なぜ、「かな」には2種類あるのかという点については、諸説あるようで、いまだに完全には解明されてはいないようです。カタカナがどっちかというと直線的な形をしていることから、岩壁などに記されている、漢字以前に日本人が使っていた固有の文字?とも関係あるのではという説まであるようです。
「かな」は「仮名」と書きます。ひらがなは「平仮名」、カタカナは「片仮名」ですね。ただし、このシリーズ、毎回引用させていただいている『漢字と日本人』(高島俊男著、文春新書)によれば、「仮名」は、本来は「假名」と書くのが本来だと言います。「假」というのは「ほんとうでない、臨時の、まにあわせの」という意味であり、「名」は文字のことですから、もともと漢字で書き表すべきところを、臨時的に漢字を崩した書体で書いたものが「假名」なのです。漢字はこれに対して「真名」とか「真字」と言います。もちろん、今は「臨時的」にかなを用いているわけではないので、もはや「假名」ですらないのですが…。
では、日本人はどのように「臨時的」にかなを使ったのか。まず「カタカナ」ですが、これはもともと漢文を訓読するための補助文字でした。つまり、「本の行間にチョコチョコッと書きこみをするところからうまれた」(『漢字と日本人』)らしい。もちろん、書きこみも漢字を使うわけですが、行間は狭いので、漢字を簡略化するというワザを使った。たとえば、「阿」という漢字は、左側の「阝」だけを書く。さらに形がくずされて「ア」と書くようになる。「伊」は「イ」、「宇」は「宀」…。
こうした簡略文字が、9世紀初め頃に、漢字と並んで公式文字として採用されていったわけです。カタカナの体系は平安時代中期には確立し、現在に至るまでほとんどその字形を変えていません。ちなみに、カタカナと、元になった漢字は以下のとおりですが、ほとんどは、漢字の一部を取り出す方法がとられていることがわかりますね。さて、それぞれ、どの部分を取り出しているでしょうか。書き順の最初の2~3画を抜き出しているのがやはり多いですね。
阿→ア 伊→イ 宇→ウ 江→エ 於→オ
加→カ 機→キ 久→ク 介→ケ 己→コ
散→サ 之→シ 須→ス 世→セ 曽→ソ
多→タ 千→チ 川→ツ 天→テ 止→ト
奈→ナ 仁→ニ 奴→ヌ 祢→ネ 乃→ノ
八→ハ 比→ヒ 不→フ 部→ヘ 保→ホ
末→マ 三→ミ 牟→ム 女→メ 毛→モ
也→ヤ 由(弓)→ユ 譽→ヨ
良→ラ 利→リ 流→ル 礼→レ 呂→ロ
和→ワ 井→ヰ 恵→ヱ 乎→ヲ
无→ン
カタカナは、その成立の経緯から、今でも法律などの文字として漢字とともに使われますが、圧倒的に多いのは、外来語の表記としてでしょう。「カタカナ語」と言えば外来語を指すくらいですから。また、本来漢字やひらがなで書くべきところを、ワザとカタカナ表記にするバアイもありますね。こんなふうに。こう考えると、日本語の表記は、3種類(ローマ字入れると4種類)もの文字を持っていることで、豊かなのかもしれません。最近は「顔文字」までありますし(^_^;)。顔文字は、日本人特有ではないにしても、これほど使われている国はやはりないでしょう。日本生まれの顔文字は最近欧米でも使われているそうですが。
表記を使い分けることによって、言外の気持ちや意味を表すというのは、文字の多様性がなせる技といえるでしょうね。
さて、カタカナにくらべると、その成立の過程がちょっと厄介なのがひらがなです。ひらがなについては次回に…。
かなには、「ひらがな」と「カタカナ」の2種類あります。これも考えてみれば不思議なことで、同じ音を表すのに、なぜ日本人はわざわざ2種類もの文字を作らなければならなかったのか? たとえば、"a"という音を表すのに、日本人は、漢字の「安」から「あ」というひらがなを作り、「阿」から「ア」というカタカナを作った。文字を覚え始める子どもたちにとってはいいメイワクですよね。日本の子どもたちが最初に覚える文字はたいてい「ひらがな」からですが、ようやく46文字(濁音、半濁音など入れるとそれ以上)ものひらがなを覚えたと思ったら、今度は同じ数のカタカナまで覚えなくてはならない。もちろんそれだけでは足りない。「かな」の次には、無数の漢字を覚えるという試練が待っているのです…。とどめに、「ローマ字」表記の学習も必修ときては! 自分たちのコトバを書き表す文字を、こんなに時間と労力をかけて教育しなければならない国って、ほかにはたぶんない。
なぜ、「かな」には2種類あるのかという点については、諸説あるようで、いまだに完全には解明されてはいないようです。カタカナがどっちかというと直線的な形をしていることから、岩壁などに記されている、漢字以前に日本人が使っていた固有の文字?とも関係あるのではという説まであるようです。
「かな」は「仮名」と書きます。ひらがなは「平仮名」、カタカナは「片仮名」ですね。ただし、このシリーズ、毎回引用させていただいている『漢字と日本人』(高島俊男著、文春新書)によれば、「仮名」は、本来は「假名」と書くのが本来だと言います。「假」というのは「ほんとうでない、臨時の、まにあわせの」という意味であり、「名」は文字のことですから、もともと漢字で書き表すべきところを、臨時的に漢字を崩した書体で書いたものが「假名」なのです。漢字はこれに対して「真名」とか「真字」と言います。もちろん、今は「臨時的」にかなを用いているわけではないので、もはや「假名」ですらないのですが…。
では、日本人はどのように「臨時的」にかなを使ったのか。まず「カタカナ」ですが、これはもともと漢文を訓読するための補助文字でした。つまり、「本の行間にチョコチョコッと書きこみをするところからうまれた」(『漢字と日本人』)らしい。もちろん、書きこみも漢字を使うわけですが、行間は狭いので、漢字を簡略化するというワザを使った。たとえば、「阿」という漢字は、左側の「阝」だけを書く。さらに形がくずされて「ア」と書くようになる。「伊」は「イ」、「宇」は「宀」…。
こうした簡略文字が、9世紀初め頃に、漢字と並んで公式文字として採用されていったわけです。カタカナの体系は平安時代中期には確立し、現在に至るまでほとんどその字形を変えていません。ちなみに、カタカナと、元になった漢字は以下のとおりですが、ほとんどは、漢字の一部を取り出す方法がとられていることがわかりますね。さて、それぞれ、どの部分を取り出しているでしょうか。書き順の最初の2~3画を抜き出しているのがやはり多いですね。
阿→ア 伊→イ 宇→ウ 江→エ 於→オ
加→カ 機→キ 久→ク 介→ケ 己→コ
散→サ 之→シ 須→ス 世→セ 曽→ソ
多→タ 千→チ 川→ツ 天→テ 止→ト
奈→ナ 仁→ニ 奴→ヌ 祢→ネ 乃→ノ
八→ハ 比→ヒ 不→フ 部→ヘ 保→ホ
末→マ 三→ミ 牟→ム 女→メ 毛→モ
也→ヤ 由(弓)→ユ 譽→ヨ
良→ラ 利→リ 流→ル 礼→レ 呂→ロ
和→ワ 井→ヰ 恵→ヱ 乎→ヲ
无→ン
カタカナは、その成立の経緯から、今でも法律などの文字として漢字とともに使われますが、圧倒的に多いのは、外来語の表記としてでしょう。「カタカナ語」と言えば外来語を指すくらいですから。また、本来漢字やひらがなで書くべきところを、ワザとカタカナ表記にするバアイもありますね。こんなふうに。こう考えると、日本語の表記は、3種類(ローマ字入れると4種類)もの文字を持っていることで、豊かなのかもしれません。最近は「顔文字」までありますし(^_^;)。顔文字は、日本人特有ではないにしても、これほど使われている国はやはりないでしょう。日本生まれの顔文字は最近欧米でも使われているそうですが。
表記を使い分けることによって、言外の気持ちや意味を表すというのは、文字の多様性がなせる技といえるでしょうね。
さて、カタカナにくらべると、その成立の過程がちょっと厄介なのがひらがなです。ひらがなについては次回に…。
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