カクレマショウ

やっぴBLOG

地に墜ちた"日本的CSR"

2007-11-06 | ■社会/政治
「事業を営むのはそれを通じて我々の身の回りや社会に何かプラスの変化を呼び込むため。事業で利益を出すのはそれを使って何か社会に貢献するため。利益を増やすのはその何かを広く深くするためです」

今日の日経新聞のコラム「核心」で紹介されていた米国のコーヒー会社、グリーン・マウンテン・コーヒーロースターズ(GMCR)のCSR担当副社長の言葉です。ビジネスはCSR(企業の社会的責任)のためと、ここまで割り切っている企業はそう多くはないでしょう。なんと、この会社では、税引き前利益の7%を地域振興などの寄付に拠出しているという。これは、「トヨタ自動車」で換算すると約1,700億円になるのだそうで。こうなると小さな自治体並みです。

また、コーヒー焙煎会社という性格上、フェアトレード(Fairtrade:公正取引、発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動=ウィキペディアより)は、支援にも熱心で、仕入れるコーヒー豆の30%はフェアトレード品だとか。もちろん、この会社では、そういう意識を高めるための社員教育にも余念がない。

コラムでは、もう1社紹介されていて、やはり米国のアイスクリーム・メーカー、「ベン&ジェリーズ・ホームメード」。この会社も「7.5%の寄付」を社是としています。寄付だけでなく、環境保全や社会貢献のNPOに対しては無償でアイスクリーム販売店のフランチャイズ権を与え支援する、といった社会貢献も行っています。その部長が言うには、「ウチと他社のうまさ、価格が同程度なら、ベン&ジェリーズは社会貢献に熱心だからと買ってくれる。ブランドにCSRが溶け込んでいると思っています」。

米国のこうした企業の考え方は、やはり社会風土から来ているとしか言いようがない。米国という国がもともと市民が手作りで作った国であり、いわばNPOによって社会が形成されてきたという歴史と無縁ではないでしょう。利益至上のはずの民間企業にも、NPO的な価値観がしっかり根付いているのです。

もちろん、CSRの考え方は欧米的なものですから、日本の企業風土にはそぐわないととらえる向きもあるでしょう。しかし、CSRは何も寄付とか地域貢献に限りません。最も初歩的な「企業の社会的責任」は「法令遵守」なのです。そう考えれば、CSRは日本に根付かないという主張は、何だか「抜け道」ふうにも思えてきます。

コラムでは、米国のこうした企業を紹介しあとで、予想通り、日本の企業倫理の崩壊ぶりと比較する方向へと収束させます。まったく、「赤福」の賞味期限偽造は、社会的責任どころか、社会を裏切る行為にほかならない。「お客様」を欺いてまで儲けたいというその根性にはほとほと愛想がつきますね。思い返せば、今はなき雪印乳業、不二家、ミートホープ、そして今回またぞろ雨後のタケノコのように次々と出てくる企業による「犯罪」に接するたびに、もしかしたら本当に、日本でCSRが根付くのは無理なのではないかという絶望感にもとらわれます。食品メーカーとして持つべき最低限の企業倫理さえないがしろにする企業が多すぎます。

時代劇に出てくるような、権力と結託した「悪徳商人」は、実際、江戸時代に存在したと思いますが、一方で、日本の「商売人」の特徴である「お客様は神様」とか「義理堅い商い」とかいう理念は、江戸時代に培われたものでしょう。そして、そうした商人倫理は、近代に入っても大切に守られてきたはずです。日本的なCSRを、商売人はちゃんとわきまえていたのです。

ところが、このたびは、その江戸時代創業の「赤福」でさえ、この始末です。どこかで何かが狂ってしまったとしか言いようがありませんね。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿