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カクレマショウ

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「ブラッド・ダイヤモンド」その2─これもアフリカの現実

2007-04-15 | └歴史映画
映画の舞台は西アフリカのシエラレオネ。15世紀にポルトガル人が来航し、ポルトガル語で「ライオンの山」を意味するシエラレオネと呼ばれるようになります。その後、英国人が植民地化し、解放奴隷の移住による国家建設が進みました。1961年の独立後も、クリオと呼ばれる彼らの子孫がこの国のエリート層を形成しています。数度のクーデタを経て確立された一党独裁体制に対して、1990年代からRUF(革命統一戦線)が抵抗、内戦が拡大していきました。

RUFは少年兵を養成し、ゲリラ的に村々を襲って支配地域を広げていきました。その活動の資金源となったのが、ダイヤモンドだったのです。誘拐した男たちを彼らは採掘場で強制労働させ、採掘したダイヤモンドは密輸業者に売り払われます。そうして世界に流れるダイヤモンドは、まさに"Blood"(血まみれの)なダイヤモンドというわけです。

冒頭、ジャイモン・ハンスウ(「アミスタッド」のシンケ役でしたね)演じるソロモン・バンディの住む村がRUFに襲われるシーンが衝撃的です。無差別に銃を乱射し、家々に火を放ち、政府に投票できないようにという理由で次々と手首を切り落としていく。狂っているとしか思えない暴虐の限りを尽くした後には、平和だった村は跡形もない。ソロモンは家族と引き離され、ダイヤモンド採掘場に送られます。

同じ頃、ダニーは飛行機でシエラレオネに飛んでくる。RUFが必要な武器とダイヤモンドを交換するために。言い値の分のダイヤモンドを寄越さなければ武器は政府軍に渡す、という殺し文句でまんまと取引は成功したものの、国境越えに失敗し、逮捕されてしまう。

一方、採掘場のソロモンは、ある日、巨大なピンクダイヤモンドを見つける。監視の目をごまかして土の中に埋めようとしますが、ばれてしまう。偶然にもそこへ政府軍の攻撃があり、彼は捕らえられて首都フリータウンの牢獄へ送られます。そこにはダニーの姿もありました。ソロモンがピンクダイヤモンドを隠したという話を聞いたダニーは、ソロモンに接近して何とかそれを手に入れようとします。ダニーにとって、ピンクダイヤモンドこそ、自分をアフリカの呪縛から解き放してくれる救世主だったのです。ソロモンは、家族を探し出すことを条件に、ダニーと行動を共にすることを承諾する。

こうして、ダニーにとっては「アフリカからの自由」、ソロモンにとっては何よりも大切な「家族との平和な生活」、そして、ダニーが知り合うことになる米国人ジャーナリストのマディ(ジェニファー・コネリー)にとっては「アフリカの真実を伝えるための証拠」として、3人の「ピンクダイヤモンドへの道」が始まる…。

ソロモンの息子ディアは、RUFに誘拐されて、少年兵としての洗脳と軍事訓練を受けていました。このあたりの描写もとてもリアルでした。「キリング・フィールド」でクメール・ルージュがやはり子どもたちを洗脳していくシーンがありましたが、それとずいぶん重なりました。子どもたちを戦争に駆り出すというのは、最も卑劣な方法。戦争は大人の勝手な都合で起こすものです。何の責任もない子どもたちを利用するというのはどうにも許せない。怒りで胸が締めつけられる思いがしました。現実に、シエラレオネ内戦だけでなく、アフリカ各地の内戦において多くの少年たちが武器を持って戦い、そして死んでいます。

映画でも紹介されていますが、「紛争ダイヤモンド」については、2000年(科博の「ダイヤモンド展」が開催された同じ年)に国際的な「キンバリープロセス」が設置され、紛争に関わるダイヤモンドを市場から排除する試みがスタートしています。ただ、実際には、紛争ダイヤモンドかそうでないかの見分けは大変難しく、「紛れ込んで」しまえばあとはわからなくなってしまうというのが現実らしい。

装飾品としてのダイヤモンドを欲しがったり、工業用品としての必要としたりするのは、圧倒的に欧米や日本といった「アフリカ以外」に住む人々。そうした欲望がアフリカに新たな紛争のタネをまき、不要な問題を引き起こしているという事実。構図としては「ダーウィンの悪夢」のナイルパーチと全く同じです。自分たちの食べている物と同様に、装飾品や嗜好品といったいわば「贅沢品」についてもそのルーツに思いを馳せることも、時には必要かもしれません。「アフリカの現実」を切り取って見せてくれたこの2作品を比べてみると、純粋に「映画」として楽しめたのは言うまでもなくこちらの方ですが。

アフリカの大地や空がこのうえなく美しい。その空の下に「狂気」が存在することが恨めしくなるほど美しい。

 

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