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カクレマショウ

やっぴBLOG

『聖(セイント)☆おにいさん』っていったい…。

2009-11-18 | ■本
中村光の『聖☆おにいさん』、ずっと前から気になっていたのですが、たまたまある人から面白いと勧められたこともあって、これまで出たコミック4巻を一気に読んでみました。

知っている人も多いとは思いますが、この漫画の主人公は、「イエス・キリスト」と「ブッダ」なんです…。しかも、「世紀末を無事乗り越えた」二人は「天界」から降りてきて、東京・立川のアパートで共同生活をしている…。

しかもしかも、二人(「二人」でいいんだよね?)の生活は、とんでもなく俗っぽい。Tシャツにジーンズ(Tシャツには「大工の子」とか「善いサマリア人」とか「アーメン」とか(以上イエスのTシャツ)、「ニルヴァーナ」とか「シャカ族」、「シッダールタ」(以上ブッダの場合))という格好で、およそイマドキの若者っぽい。イエスはノートパソコン持っててブログやってるし、ブッダはおばちゃんのように倹約家だし。DOCOMOの携帯電話も当然保有(しかも「天界」とメールのやりとりもできるんだ)。ちまたで話題の商品にも目がない(特にイエスは)。お笑いコンビ「ロンゲとパンチ」として、ひそかにM1グランプリを狙ってたりもする。

人間界にすんなり溶け込んでいるような二人ですが、しかーし、なにぶん「神様」なので、時折、その「パワー」があらわになってしまい、周囲の人間たちを驚かすこともあるのです。ブッダが慈愛に満ちた言葉を発すると、知らぬ間に目もくらむような後光が輝き始めるし、イエスもついつい人々の病気を治したり、水をワインに変えてしまったりと「奇跡」を起こしてしまう。

商店街の福引きで当てた「伊豆・修善寺の旅」の時なんか、駅の「伊豆の踊子」の顔出し記念写真を撮ったら、うれしさのあまり、裏側にイエスとブッダの顔出しパターンがしっかり念写される始末。「偉大な人物の旅路には/くっきりと痕跡が残る/それは土地の人々が/大好きなその人が訪れたことを/決して忘れたくないという思いゆえか…」だってさ。

しかし、そんなことにはお構いなく、二人の下界バカンスはますますヒートアップしていきます。

爆笑しながら読んでいるうち、いったいこの二人、何で生計を立てているのか?という素朴なギモンがわき上がってきますが、その答えも2巻の後半で明らかにされます。二人は、天界から毎月給料を振り込んでもらっていたのでした!(その額、26万円!=二人分合わせて) つまり、彼らは有給休暇で日本に来ていたのです。それにしても、二人で26万円というのはビミョーな金額です。家計を管理するブッダが出費にうるさくなるのもわかる。遊びもごくごく庶民的だし。

日本の年中行事や習俗がさりげなく二人の生活にも溶け込んでいます。クリスマスには、ブッダがイエスにばれないように「誕生日」のお祝いをしようと必死になる。ブッダの誕生日(花祭り)には、イエスがひそかにアルバイトをして、ブッダがほしがっていた「石窯スチームオーブン」をプレゼントする。二人で浅草寺に出かけたり、大晦日に除夜の鐘を打ちに行くという話も出てきます。お寺って、ブッダをまつってあるわけで、その本人?がそこにお参りに行くって、なんだかとってもシュールです。

シュールと言えば、ブッダが、漫画喫茶で手塚治虫の「ブッダ」を読んで涙が出るほど感激し、その日のうちに全巻まとめ買いしたというエピソードもなかなかですなあ。そういえば、この漫画では、二人が「神様」に戻ってしまう時、「火の鳥」っぽいコマが出てきたりします。宇宙の神秘…天の定め…永遠なる魂…。なんか、よくできてるなあと変なところで感心しています。

作者の中村光さん(読み始めた時はてっきり作者は男だと思っていましたが、女性だったのですね~)は、「キャラのたったメンズ二人の友情ギャグ」を描こうと思って、試しにイエスを描いてみたのだそうです。それがジョニー・デップばりのいい男に描けた。イエスときたら、相棒はブッダしかないだろう、となったようです。

男性キャラ丸出しのイエスに対して、ブッダのほうは、なんとなく女性キャラっぽくもある。男同士の友情というより、なんか若い男女の楽しい同棲生活を描いているような感じもしますね。イエスは時々女子高生にキャーキャー言われたりもするし、ブッダも決しておばちゃんだけにもててるふうでもないのですが、二人の周囲には、不思議と「女性」が登場してこないのは、作者の意図が込められているのでしょうね。

この漫画、「聖」と「俗」が入り乱れた時空間が、私にはとても心地いい感じがしました。「聖☆おにいさん(中村光)元ネタ集」というウェブサイトでは、漫画に出てくる「聖」に関する言葉を詳細に説明してくれています。こっちもなかなかすごい。ま、私のようなおじさんには、「俗」のほうの用語解説も欲しいところですけど。

なんだか不思議な「二人だけの世界」。余計なことは考えずに、ただただ楽しく読んで、笑うのが一番ですね。

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