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カクレマショウ

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青空と桜と花馬と。─十和田市現代美術館オープン。

2008-04-27 | ■美術/博物
昨日、午後から十和田市で用事があったので、その前に、ちょうど昨日オープンした「十和田市現代美術館」に寄ってみました。

美術館の立つ官庁街通りは桜並木で有名。今まさに満開の桜と、青い空と、真っ白な美術館の建物と、そして庭にそびえるあでやかな「フラワーホース」、すべてが見事に溶け合っていました。さすがにオープン直後だけに行列ができていました。それでも20分ほどで入場できるあたりが東京の美術館とは違うところ。それに満開の桜の下で並ぶのも悪くはない。



まず常設展。作品自体は22作品と決して多くはありませんが、けっこう「大物」を取りそろえています。最初の部屋には、赤、オレンジ、透明の樹脂からなる巨大なシャンデリアのようなオブジェ。よく見ると、人間が肩車をして連なっている。どこまでも高く、天井までつながっている。その数は数万体もあるでしょうか。人間の小さな営みと、その永遠の移り変わりを思わせます。

「ザンプランド」(栗林隆)と名付けられた作品もおもしろい。小部屋に入ると、天井から真っ白いアザラシの体が、首からの下の部分だけ突き出している。天井裏をのぞいているような格好。部屋の真ん中には机があって、その上に椅子が乗せられている。私たちは、その椅子に上って、天井に空けられた穴から首を入れて天井裏をのぞくことができるという仕組みです。少しわくわくしながらのぞいてみたら、そこには、「天井裏」には似つかわしくないような光景が広がっていました。天井板1枚隔てた異空間。

しかし、この部屋、椅子を押さえてくれるスタッフが二人もいる。常にこの部屋にいて椅子を押さえてあげないといけないとしたら、こりゃ大変だ。

「メモリー・イン・ザ・ミラー」(キム・チャンギョム)。一方の壁に1枚の大きな鏡。それも昔よく銭湯なんかにあったような額付き、文字付きの鏡。そこにアパートの玄関やら寝室やらを背景にいろんな人が登場してくる。出かける前の身だしなみを整えたり、自分の顔をチェックしたり、あるいは記念撮影のようにすましてみたり。そして、みんな影のように消え去って行く。というより、「影になって」すぅーっと鏡から姿を消し、左右に歩き去っていく。鏡の傍らには金魚の泳ぐ水槽。それもまた消えたり現れたり。いったいどこまでが映像でそこまでが実像なのか。不思議な空間です。

「ハンス・オプ・デ・ビーク」(ロケーション(5))。ほぼ真っ暗の部屋。目が慣れてくると、レストランのテーブルが並んでいるのがぼんやりと見えてきます。手探りで腰掛け、横を見ると、窓ガラスの向こうにオレンジ色の街頭に照らされたハイウェイが見えます。しかし、車は1台も走っていない。道路はどこまでもどこまでも続き、向こう側にある闇に溶け込んでいきます。

「スタンディング・ウーマン」(ロン・ミシェク)。部屋に入ったとたん、思わず「うぉっ」と声が漏れる。身長4メートルの巨大なおばさんが立っている! 肌も髪の毛も服も靴も、リアル過ぎる。今にも瞬きしそうな目。一歩踏み出しそうな足。悲しげな目でこちらを見下ろす視線にも、なぜか「パワー」を感じてしまうのは、その巨大さのせいばかりではないでしょう。これはいったい「彫刻」なのか? よくわからないけれど、この作品には確かに圧倒されるしかない。

さて、オープン記念展は「オノ・ヨーコ 入口」。アーティスト、オノ・ヨーコの作品は、常設展の方にも、「ウィッシュ・ツリー」が展示されています。彼女が1996年から各地で行ってきたプロジェクトの一環で、来館者が短冊に願いを書いて吊していくことで、「平和」を願う作品が完成するというもの。今回の企画展は、タイトルどおり、「入口」にまず凝っていて、展示室への入り口が3種類ある。ふつうの通路、それからまるでビルとビルの間にある隙間のような細い路地、そしてもう一つは小さなすべり台。子どもたちなら喜んですべり台で入場することでしょう。

いろんな種類の地球儀にメッセージや絵を書き込めるとか、壁に貼られた世界地図に「IMAGINE PEACE」などといったスタンプを押せるとか、あるいは「スカイ・ウォッチ・ラダーズ」と称して、木製の脚立に自由に登れたりと、子どもたちが参加できる仕掛けがたくさん準備されていました。それは面白いのですが、ただ、企画展としては、展示作品が9点しかないというのは、あまりにも物足りない。

考えてみれば、この美術館には、ふつうの「絵」や「彫刻」みたいな作品は、常設展にも企画展にも1点もない。「現代美術」っていったい何なのでしょう? 私たちの感性に何らかの形で訴えてくるものがアートだとすれば、「現代」という言葉の意味は、「現代」に造られた作品というだけでなく、「現代」に起こっている様々な社会現象をモチーフにしていることが条件なのかもしれません。あるいは、社会的なムーブメントを喚起するような。

小さな町の小さな「現代」美術館から、これからどんな発信があるのか、楽しみにしたいと思います。

 

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